私の事務所では農地法の研修会において講師を務める業務も行っている。
私に依頼をして農地法の研修会を開催しようとする主体は、ほとんどが公的機関である。例えば、県庁の農地法担当課、市役所の農業委員会、士業団体、県の農業会議等がこれに当たる。
依頼があることは結構なことであるが、現実の開催に至るまでが容易ではない。その理由は、以下のとおりである。
第1に、主催者において研修会開催のノウハウを有していないことである。研修会を開催するためには、➀日程の調整、➁研修開始・終了時刻の設定、➂研修内容の検討および確定、➃講師料金の算定(この点は、原則として私のホームページに標準料金が掲載されているので、それを参照されたい。低廉な料金体系となっている)および交通費の計算(原則として、特急のグリーン車料金であるが、開催地が近距離の場合は普通電車の運賃だけで済むこともある)等、いろいろと検討することが多い。もちろん、これらの事務的作業のほかに、私にとって一番重要なレジュメの作成という作業が加わる(書面起案作業)。
したがって、研修会の開催を検討している公的機関には、あらかじめ上記のような点を部内で検討していただく必要がある。しかし現実には、毎年定期的に研修会を開催している公的団体を除き、全く準備がされていないことが大半である。結果、私としては研修会開催のための準備(事務的作業)に多くの時間をとられてしまうのが実情である。
第2に、研修会の参加者として誰を予定するかという点は非常に重大である。なぜなら、講師が話す内容(講義)のレベルと、受講者のレベル(知識水準)が一致することが理想だからである。双方に乖離がある場合、聴いている方々は講義の内容をよく理解することが困難となり、研修会は失敗に終わることになる。
例えば、市町村の農業委員会の担当者(公務員)と農業委員とでは、農地法に関する基礎的知識に明らかな格差があると思われる。よって、弁護士である私の講義内容を、農業委員会の担当者であれば、おおむね理解することが可能であっても、農業委員の方々の場合、法的には全くの素人であることが多いので、私の講義を理解することは容易ではないと思われる。
やや失礼な言い方になるかもしれないが、高校の数学の先生が、中学3年生に対し数学の授業をする場合と、小学6年生に対し数学の授業をする場合くらいの違いがあるのではなかろうか。したがって、開催者予定者は受講者のレベルを考慮した上、研修会開催の可否を慎重に検討する必要がある。
なお、参考までに紹介すると、弁護士に対し法的紛争がからむ事件の解決を依頼したが、着手金も成功報酬も決めない方法をとった場合の弁護士料金の算定方法であるが、大方の理解では、依頼された事件を解決するために要した時間に、時間単価2万円(税別)を乗じて計算することが多い。ただし、ここでいう「解決するために要した時間」の中には、例えば、書面起案のための時間、判例調査のための時間、事件の解決方向をめぐる依頼者との電話協議に要した時間、裁判所に出掛けるのに要した時間などが含まれるとされている。
したがって、一例として、法律事務所内における書面の起案に2時間、判例調査に1時間、電話による協議に1時間、裁判所への往復に1時間、裁判所での調停手続に1時間を要した場合の弁護士費用は、計6時間×2万円=12万円(税別)となる。
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