約1か月前のことであるが、10月30日に滋賀県の米原市まで出かけた。用事は、滋賀県農業会議が主催する農地法研修会において講師を務めるためであった。米原駅は、これまで自分が北陸地方へ旅行する際にJR東海の特急列車が方向転換のため必ず停止する駅であり、馴染みがあった。しかし、ここで下車したことはこれまで一度もなかった。
今回、会場が米原市役所の会議室であった関係上、初めて駅の改札口を出たわけである。会場になっている米原市役所はJR米原駅に隣接しており、交通の便は抜群である。
今回の講演の主題は、違反転用をめぐる諸問題であった。受講者は、市町村農業委員会の農業委員、同事務局の職員および県の農地法担当者であったと聞く。持ち時間は90分であり、最初の約50分は基礎的な知識についてお話をし、後半の40分は、事例問題4問についての解説であった。
一般に、農地の転用が農地法違反に該当すると、いわゆる違反転用となる。違反転用に対する行政の対処方法は、農地法51条に明記されている。その中で一番効果的なものは、原状回復命令である。しかし、発動の要件が厳しいため、実際上はほとんど例がないと聞く。
そうすると、行政処分ではない行政指導という方法が用いられることになる。違反転用者に対し、農業委員会などが行政指導を行って違反転用の解消を目指すのである。しかし、行政指導には強制力はない。そのため、指導を受けた相手方は、その指導に従うか否かは自由である。そのため、なかなか違反転用状態が解消されず、解決に至るまで10年程度かかることも少なくないと聞く。
もちろん、農地法には罰則もある。しかし、行政機関が相手方に対して指導を継続している途中で、刑事訴訟法の定める公訴時効3年の適用を受け、結局、お咎めなしの状態に至ることがほとんどである。また、仮に公訴時効が未経過の事案であっても、違反転用事件について、捜査機関(警察)が大いにやる気を出すとは思えず、うやむやで終わる可能性が高いのではなかろうか。
農地法は、単に農地法だけを熱心に読んでも、正確な理解に到達することはあり得ない。基礎となる民法および行政法の基礎知識が不可欠である。農水省の担当者でもこの点は万全ではない。その意味で、農業委員会としては、積極的に研修会を開催し、最新の知識を習得することが求められる。
なお、今回の研修会の講師料は、交通費および消費税を含めて計6万1720円であった。講師料が、改訂前の安い旧料金であったこと、および会場となった米原市が岐阜市に近い距離にあったことから交通費がほとんどかからず、結果として格安料金となった次第である。
話は変わるが、兵庫県知事の斎藤元彦氏については、今後の動向が注目される。私が見たところ、暗い目をした人物である。斎藤氏については、斎藤知事を批判した職員に対する違法な処分があったのではないかという疑念がある。また、今回の出直し選挙活動に関する公選法違反の疑いもある。率直に言ってグレーな印象を感じざるを得ない。この人物が果たして県知事というポストに相応しいのか?疑問だらけである。
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