弁護士というと、昔から相談者から「専門は何ですか?」と問われることが多かった。これに対し、昔は、「民事事件一般です」とか「民事事件も刑事事件もやります」という大雑把な答えが多かったように記憶する。
しかし、弁護士業全体の雰囲気として、かなり以前から、より専門化が進行し、今では、例えば同じ民事事件であっても、より細かく「建築関係」とか「交通事故」などのように専門化した答が出ることが多いようである。これは、インターネットを利用した法律事務所のホームページなどが当たり前の状況となってきたことと無関係ではない。昔と違って、一般の人々も法律の知識を学ぶ機会が増えてきたということである。一般人の知識が増えれば、当然のことであるが、ありきたりな話では満足できなくなる。より詳しい話を聞きたくなる。
弁護士に依頼するにしても、間違いなく示談交渉とか訴訟をやってくれる専門知識を具えた弁護士に頼みたくなる。これは、例えば医者の世界でも同じであろう。単なる内科医ではなく、例えば、呼吸器内科とか消化器内科などのような、より専門的な分野に精通した経験豊富な医師に診てもらった方が、患者としても安心できる。間違っても、例えば眼科医に対し、大腸の検査を頼むような愚かな患者はいないのである。
今回、私は、新日本法規出版から、「判例からみた 労働能力喪失率の認定」という本を出す。定価は4600円であり、税込み4968円である。一般の人身事故の場合、障害等級が重い怪我であればあるほど、労働喪失率が問題となる。なぜなら、損害賠償金のうち、逸失利益の金額が一番大きなものとなる可能性が高いからである。そして、逸失利益の額を決めるポイントは、「年収」と「労働能力喪失率」である。
したがって、後遺症が問題となる人身事故においては、労働能力の喪失率がどれほど認められるかが大きな争点となるのである。本書は、この点に焦点を絞り、計100判例について、被害者側と加害者側の主張を整理し、かつ、裁判所の判決理由を示すことによって、裁判所はどのような点を考慮して労働能力喪失率を決定したのかという点を解明しようとしたものである。
もちろん、僅か100程度の数の判例では正確な分析はできないかもしれないが、大方の傾向を読み取ることはできるのではないか。本は、本年5月の上旬には一般に向けて発売される。人身事故に遭われた方にはお勧めの本といえよう。
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