お問い合わせ電話番号
受付時間:午前10時~午後5時

052-211-3639

電話でのお問い合わせ
メール相談申し込み

交通事故の法律Q&A

交通事故の法律Q&A

Q29逸失利益の意味

設問私は、交通事故が原因で後遺障害が残ってしまいました。その場合、逸失利益の損害を賠償請求できると聞きました。逸失利益の意味がよく分かりませんので教えてください。また、逸失利益を算定するには、中間利息を控除する必要があるとも聞きました。その点についても解説してください。

Answer

事故で後遺障害が残った場合、将来、後遺障害によって収入を得ることができなくなった分の補償を逸失利益といいます。また、中間利息を控除するに当たり、ライプニッツ係数を用います。

解 説

(1) 逸失利益とは
 交通事故によって発生する損害を大きく分けますと、人的損害(人身損害)と物的損害(物損)に区分できます。
 次に、人的損害を区分しますと、財産的損害(経済的損害)と精神的損害(慰謝料)に分かれます。
 さらに、財産的損害は、積極損害と消極損害に分かれます。逸失利益は、消極損害の一つに当たり、仮に事故に遭っていなければ、将来得ることができたであろう利益という意味です(休業損害も消極損害に当たりますが、これは既に発生した損害という性格を帯びます。)。
(2) 逸失利益の算定
 逸失利益を算定するに当たって、問題点が三つあります。
 第1に、被害者の年収(基礎年収)です。
 第2に、被害者の労働能力喪失率です。
 第3に、労働能力の喪失期間です。
 そして、逸失利益の算定は、次の計算式で行います。

 基礎年収×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数=逸失利益

 例えば、基礎年収が500万円、労働能力喪失率が45パーセント、症状固定時の年齢が50歳とした場合、67歳までは17年間ありますから、そのライプニッツ係数は11.274となります(逸失利益は将来発生するものですが、それを現時点で一時金として請求する以上、将来の利息を控除する必要があります。そのため、ライプニッツ係数を用います。)。この場合、逸失利益の計算は、次のようになります。
《計算式》
 500万円×0.45×11.274=2536万6,500円
(3) 後遺障害が残った場合と死亡した場合の異同
 逸失利益は、事故の被害者が死亡しなかったが後遺障害が残った場合と、死亡した場合の、両方の場合に発生します。
 そこで、両者の異同について述べます。
 (a) 異なる点
 第1に、後遺障害の場合は、事案によって労働能力喪失率が異なりますから、この点が最大の問題点となります。他方、死亡事故の場合は、どのような事案であっても、一律100パーセントの労働能力喪失率となります。この点が大きく異なります。
 第2に、後遺障害の場合は、生活費控除の問題を生じません。一方、死亡事故の場合は、生活費控除の問題が生じます。生活費控除とは、死者の逸失利益を算定するに際し、仮に生きていたら支出を免れない生活費を控除する、ということです。
 なお、被害者が植物状態に陥ったとしても、生存している以上、生活費控除の問題は生じないと解されます(名古屋地判平23・12・9交民44・6・1549)。
 (b) 同一点
 基礎年収および労働能力喪失期間の点は、両者で特に異なりません。
(4) 中間利息の控除
 (a) 問題の所在
 後遺障害による逸失利益を算定する際には、上記の三つの問題点があります。そのうち、労働能力喪失期間については、さらにこれに対応するライプニッツ係数をどのように計算して求めるのか、という問題があります(これは、中間利息の控除の問題です。)。
 これには二つの立場があります。
 多数説は、症状固定時説という考え方です。症状固定時説とは、症状固定時を起算点(基準時)として、中間利息を控除して現価計算をするべきである、という考え方です。次に、一例をあげます。
 被害者甲は、37歳の時に交通事故に遭い、3年後の40歳の時に症状が固定したとします。就労可能年齢は67歳までですから、労働能力喪失期間は27年です。症状固定時説の場合、単純に、症状固定時から中間利息を控除しますから、27年のライプニッツ係数は、14.643となります。
 これに対し、少数説として事故時説という考え方があります。事故時説は、事故日を起算点として、中間利息を控除して現価計算すべきであるとします。上記の例では、37歳から67歳までの30年に対応するライプニッツ係数から、37歳から40歳までの3年に対応するライプニッツ係数を引いた値を用います。
 したがって、30年のライプニッツ係数15.372から、3年のライプニッツ係数2.723を差し引いた値12.649を採用するべきであるとします。
 (b) 症状固定時説が正当
 症状固定時説と事故時説は、理論的にはいずれの考え方も成り立ち得ると考えられますから、いずれの考え方を採用するかは、結果の妥当性で決まるといえます。
その観点から、事故時説には次のような難点があります。
 第1に、そもそも逸失利益を算定する際に、年5パーセントもの金利を基礎に中間利息を控除すること自体が不当であるという批判があります。したがって、せめて中間利息控除の起算点については、症状固定時とするのが相当というべきです。
 第2に、事故時説は、不法行為に基づく遅延損害金は不法行為時(事故時)から発生するのであるから、逸失利益についても不法行為時から中間利息を控除しなければならないとしています。しかし、逸失利益の中間利息の計算は複利で行うのに対し、遅延損害金は単利で計算していますから、前者の方が、後者と比較して中間利息を控除しすぎているという批判があります。
 第3に、仮に事故時説をとれば、逸失利益のみならず、将来介護費や将来治療費などについても同様の取扱いをしなければ趣旨が一貫しません。しかし、現実にはそのようにはなっておらず、なぜ逸失利益のみについて事故時説を適用するのか十分な説明がありません。
 事故時説には上記のような難点があって、支持できません。症状固定時説が正当であると解されます。
 (c) 下級審判例の傾向
 近時の下級審判例の傾向をみると、圧倒的に症状固定時説が支持を集めています(神戸地判平18・6・16交民39・3・798、大阪地判平18・6・20交民39・3・823、東京地判平19・9・25交民40・5・1228、大阪地判平19・12・10交民40・6・1589、大阪高判平21・3・26交民42・2・305)。
 一方、事故時説に立つものは、僅かにとどまります(大阪地判平20・3・14交民41・2・327)。

ページの先頭へ

Copyright (c) 宮﨑直己法律事務所.All Rights Reserved.