お問い合わせ電話番号
受付時間:午前10時~午後5時

052-211-3639

電話でのお問い合わせ
メール相談申し込み

交通事故の法律Q&A

交通事故の法律Q&A

Q30逸失利益算定の基礎収入

設問後遺障害による逸失利益を算定する場合、基礎収入をいくらとみるか、という点がしばしば争われると聞きました。基礎収入は、どのように決まるのでしょうか?

Answer

基礎収入は、給与所得者および家事労働者の場合は余り問題となりませんが、事業所得者および若年者では問題となることがよくあります。

解 説

(1) 基礎収入総論 
 逸失利益を算定するには、「基礎年収×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式を用います。したがって、基礎収入(基礎年収)は、逸失利益の算定に当たって重要な問題となります。
 例えば、事故前年の所得が500万円だった人が、交通事故で怪我をして重い後遺障害が残ったとします。この500万円が公的に証明されたものであれば、裁判所がその人の基礎収入を500万円と認める可能性は極めて高い、ということができます。
 一方、事故の前年に現実に500万円の所得があったとしても、それを裏付ける証拠が全くない場合は、裁判所が事実に沿った認定をすることは、一般的にみて容易ではないといえます。
 以下、事故被害者の類型別に、基礎収入の原則的な算定方法について解説します。
(2) 基礎収入各論
 (a) 給与所得者
 給与所得者の場合、原則として、事故当時の実収入額(事故前年の所得)が逸失利益算定の基礎収入となります。実収入額の証明は、被害者が勤務する会社が作成した源泉徴収票または市町村が発行した所得証明書などで行います。 
 しかし、給与所得者であっても、後記するとおり、被害者の年齢が若くいわゆる若年者(ここでいう「若年者」とは、おおむね30歳未満の者を指すものとされています。)に該当する場合は、修正を施す必要が生じます。それは、同じ給与所得者であっても、若年者の場合は、壮年者や定年年齢に近い者と違って、給与額が相当低額に抑えられていることが多いといえるからです。
 逸失利益の問題は、あくまで、被害者が67歳に到達するまでの長期間にわたってどれほど利益を喪失するか、という点に関する問題ですから、若年当時の低く抑えられた給与を基礎として、67歳までの損害を算定することは不合理といえます。
 (b) 事業所得者
 事業所得者の逸失利益の算定に当たっては、休業損害のところで述べたことが、ほぼそのまま当てはまります。
 ただし、逸失利益の場合は、休業損害の場合と異なって、上記のとおり67歳までの長期間にわたって損害を算定する必要があります。そのため、原則論を一律に適用するのではなく、必要かつ合理的な修正を施すべき場合があります。
 例えば、被害者が、自分で個人企業を立ち上げた直後であるため、全く収益が出ていなかった時期に、交通事故に遭って後遺障害が残ったような場合がこれに当たります。この場合、事故時における低い所得を基準に、長期間にわたる逸失利益を算定することは不合理といえます。
 このような場合は、賃金センサスの平均賃金額を参考にして、適切な基礎収入を認定するほかないと考えられます(青い本82頁)。また、過少申告・無申告の場合も、これに準じて考えることができます。
 (c) 家事従事者
 家事従事者とは、男女の区別を問うことなく、現に他人のために家事労働に従事する者をいいます。家事従事者の逸失利益を算定する際、その基礎となる年収は、休業損害の場合と同様です。
 そして、高齢の家事従事者(高齢家事従事者)については、現実の家事労働能力を考慮して、賃金センサスの女子労働者年齢別平均賃金(またはその何割かの金額)を基礎収入とすることが多いといえます。
 なお、一人暮らしの家事従事者について、逸失利益を認めない立場もあるようです。しかし、逸失利益の本質から考えた場合、同人に労働の意欲と能力が認められる限り、原則的にこれを肯定することが可能であると解されます。
 (d) 学生
 学生の場合、原則として、賃金センサスの学齢計・男女別の平均賃金が基礎収入となります。また、大学生(大学進学の蓋然性が高い高校生も含まれます。)については、大卒の男女別平均賃金を用います。
 特に、女子については、その年齢が低い場合(年少女子の場合)は、女子労働者の学歴計・全年齢平均賃金を用いるのではなく、全労働者つまり男女計の学歴計・全年齢平均賃金を用いるのが最近の流れです(青い本84頁)。
 これは、女子労働者の平均賃金が比較的低額であることから、男女間格差を少しでも是正するため、このような考え方がとられているわけです(ここで、「年少女子」としていつの年齢まで認めるのか、という議論があります。義務教育終了時までがこれに含まれることに異論はありません。最近では、高校卒業時までを年少女子に含めてもよい、という立場が有力になりつつあります。)。
 (e) 無職者
 無職者の場合、休業損害算定の場合とは異なって、現に収入がない状態であっても、そのまま無収入の状態が何年間にもわたって継続することは通常考え難いことから、逸失利益を認めることができます。
 基礎収入については、無職者になる前の収入実績を考慮して、賃金センサスの平均賃金を参考にして決めることになります。
(3) 三庁共同提言
 (a) 三庁共同提言とは
 上記のとおり、被害者のうち特定の類型に該当する者については、原則を修正して例外的取扱いを認める必要があります。
そのため、東京地裁、大阪地裁および名古屋地裁は、平成11年11月22日、いわゆる「三庁共同提言」を行いました(判時1692・162)。
 それによりますと、「原則として、幼児、生徒、学生の場合、専業主婦の場合、及び、比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合については、基礎収入を全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金によることとし、それ以外の者の場合については、事故前の実収入額によることとする」という基準が示されました。
(b) 対象者
 以上のことから、三庁共同提言の対象となるのは、次に掲げる者であることが分かります。
① 幼児
② 生徒
③ 学生
④ 専業主婦
⑤ 若年の被害者であって、生涯を通じて平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる者
(c) 効果
 これらの者については、逸失利益算定の基礎収入を、賃金センサスの全年齢平均賃金または学歴別の平均賃金(学歴別・男女別・全年齢平均賃金)とすることができます。

ページの先頭へ

Copyright (c) 宮﨑直己法律事務所.All Rights Reserved.