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交通事故の法律Q&A

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Q32逸失利益算定の労働能力喪失率

設問後遺障害による逸失利益を算定するに当たり、労働能力喪失率が決まらないと計算ができないと思いますが、どのように決めるのでし ょうか?

Answer

労働能力喪失率については、原則として、自賠責保険の後遺障害等級認定の手続きによって認定された等級によって判断します。ただし、等級の是非が裁判で争われた場合、裁判所は、自賠責保険で認定された後遺障害等級に拘束されず、最も妥当と思われる等級を決定することができます。

解 説

(1) 労働能力喪失率の認定
 事故被害者に後遺障害が残った場合、労働能力喪失の程度がどれほどのものか、という点が重要な問題となります。労働能力喪失率の認定およびそれに続く紛争の解決は、通常、次のような流れとなります。
 まず、自賠責保険(または任意保険の事前認定)による後遺障害等級認定が行われます。ただし、後遺障害等級の有無および障害が認められる場合の等級認定は、損害保険料率算出機構(以下「損保料率機構」といいます。)が実質的に行うものとされています。
 次に、認定された後遺障害等級に従って、労働能力の喪失率を決定します。この場合、被害者と任意保険が示談交渉を通じて話合いで事件を解決する場合、自賠法16条の3が定める支払基準の示す労働能力喪失率表に従って解決されることが多いといえます。
 しかし、労働能力喪失率をめぐって、事故当事者間の話合いがまとまらないときは、裁判によって決着させるほかありません。その場合、裁判所は、当事者の主張立証に基づいて、判決によって妥当な労働能力喪失率を認定します(なお、裁判上の和解といって、裁判所が示した和解案を当事者が了解することによって紛争が解決される場合もしばしばあります。)。
(2) 労働能力喪失率の本質
 後遺障害によって、労働能力がどれほど喪失したかを認定するに当たっては、種々の考え方があります。
基本的な考え方は、差額説です。これは、事故がなかったならば存在したであろう被害者の財産状態と、現実の被害者の財産状態を比較し、差額を逸失利益としてとらえる立場です(最判昭39・1・28民集18・1・136)。
 これに対し、労働能力の喪失自体を財産上の損害としてとらえる立場があります。これを労働能力喪失説といいます。裁判実務は、労働能力喪失説を基本として運用されていると考えられます。
(3) 労働能力喪失率が特に問題とされる職業 
 (a) 問題の所在
 自賠責保険によって後遺障害等級が認定されたにもかかわらず、事故前と事故後を比較して収入の減少がみられない場合(減収がない場合)に、逸失利益を否定しようとする考え方があります(裁判になった場合、加害者側つまり損保会社側に立つ弁護士は、必ずといってよいほどこのような主張を行います。)。
 特に、公務員の場合は、公務員法上の身分保障がありますから、事故である程度の重さの後遺障害が残ったとしても、それが原因で直ちに解雇されたり、あるいは給与を減らされたりすることは、原則的に考えにくいといえます。しかし、現時点において収入の減少が認められないという理由で逸失利益を否定する立場は、不当なものであって容認できません。
 (b) 逸失利益を認める根拠
 事故前と事故後を比較して、仮に収入の減少がなくとも、逸失利益を認めることができるとする立場の根拠は、次のようなものです。
 第1に、被害者に逸失利益という損害が発生するかどうかは、現実に67歳までの長期間を経過してみないと客観的に明らかとはなりません。事故前と事故後の僅か数年を比較しただけで、長期間にわたる収入の減少がないと結論付けることはできないはずです。
 第2に、事故後に収入の減少がないのは、被害者本人が仕事に悪影響が生じないように努力をしていた結果であって、仮に努力を怠っていた場合には収入の減少が生じていた可能性が高いという場合もあり得ます。
したがって、現実に収入の減少がなくても逸失利益を肯定するべきです。
 第3に、現在の勤務先を退職して将来は転職する可能性がある場合、転職しようとした際に、後遺障害の存在が原因で不採用となる可能性があります。その場合、収入は途絶えることになります。仮に転職先が見つかったとしても、現在よりも労働条件の悪い会社に就職せざるを得なくなることも十分にあり得ることです。
 第4に、逸失利益を考える場合、通常は、会社に雇用されたとき、あるいは自分で自営業を営むときなどに生ずる、仕事上の支障ないし能率低下を問題とします。しかし、後遺障害は、同時に家事労働能力も減少させることは疑いありませんから、被害者が現在の職場を離れて家事従事者となった場合においては、家事労働能力の減少分を、逸失利益として補償する必要が生じます。

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