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交通事故の法律Q&A

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Q34CRPS(RSD) (その2)

設問私は、散歩中に車に衝突されて転倒したのが原因でCRPS(RSD)に罹ってしまいました。そこで、自賠責保険に対し後遺障害の等級認定の申請をしましたが、7級という等級しか付きませんでした。しかし、私は、常に右上肢及び右下肢に強い痛みがあり、家ではほどんど寝た切りの生活を送っています。裁判で争った場合に、障害等級が重く変更されることはあるでしょうか?

Answer

自賠責保険では、認定される後遺障害等級に限界があり、CRPSの場合は、最高等級が7級とされています。しかし、訴訟を通じて裁判所が後遺障害の等級認定を行う場合には、そのような制限はありませんので、より重い等級が認定される可能性があります。

解 説

(3) CRPSによる後遺障害等級認定
 (a) 自賠責保険による後遺障害等級認定
 交通事故による受傷が原因となって被害者にCRPSが発症し、後遺障害が残った場合、自賠責保険によって後遺障害の等級認定を受けることができます(Q45参照)。
 ただし、ここでは二つの問題があります。
 (ⅰ) CRPS(RSD)の認定要件
 被害者に生じた傷病がCRPS(RSD)であると認められる際の要件ですが、自賠責保険における後遺障害等級の認定は、労災保険法における障害等級認定基準に準じて行われます。
それによれば、障害が生じているとされる部位について、①関節拘縮、②骨萎縮、③皮膚の変化(皮膚温の変化・皮膚の萎縮)の三つについて、明らかな所見がある場合に限ってCRPS(RSD)の認定が可能となります。反面、これらの所見を欠くものについては、CRPS(RSD)の認定は行われません。その場合、単なる疼痛を伴う傷病という評価になります。
(ⅱ) 後遺障害等級認定の限界
 また、仮に被害者の傷病名がCRPS(RSD)であると認定されたとしても、認定される後遺障害の等級には一定の限界があります。それは、上記のとおり、自賠責保険における等級認定は、原則として、労災保険法における障害等級認定基準に準じて行うものとされているためです。自賠責保険=労災保険の認定基準によれば、CRPS(RSD)による後遺障害の等級については、7級、9級または12級の三つに限定されていますから、これ以外の等級認定がされることはありません。
 (b) 裁判所による後遺障害等級認定
 これに対し、被害者が、加害者に対し訴訟を提起し、適正な後遺障害の等級認定を求めようとする場合は、上記のような制限は、原則的にありません。裁判所は、法と証拠に基づいて、被害者について、適正な後遺障害等級を認定することができます(最判平18・3・30民集60・3・1242)。
 したがって、例えば、あるCRPSの被害者について、自賠責保険としては最上位の(最も重い)等級である7級を認定しているため、これ以上の障害等級は認定できない、という立場を明らかにしていたとしても、裁判所としては、例えば、障害等級5級を認定することも可能ということになります(Q32参照)。
 なお、下級審判例の中には、被害者が訴える症状について、これをRSDと認定するためには客観的基準が必要であるとした上で、前記自賠責保険のRSD認定のための3要件を充足することが必要である、とするものもありますが(大阪地判平21・4・9交民42・2・534)、不合理な判決というほかありません。なお、同判決は、「RSDと認定できない以上、原告の症状を医学的に説明することは困難ではあるものの、単なる故意の誇張ではないと認められることに照らせば、後遺障害等級14級9号には該当すると認めるのが相当である」としています。したがって、本例は、仮に別の診断基準を採用しても、もともとCRPSつまりRSDの判定を受けられたのかどうか疑わしい事例であったと推測されます。)
(4) 素因減額の主張の不当性
 CRPSの患者となった被害者に対し、加害者側(損保会社)から、しばしば素因減額の主張が出されることがあります(Q40 参照)。具体的には、精神疾患に相当する傷病名を被害者に付けた上で、CRPSを発症したのは元来被害者にCRPSを発症しやすい精神的素因(心因的素因)があったからであると結論付け、よって素因減額を要する、とするワンパターンが多いといえます。
 しかし、このような論法に正当性が認められることは少ないといえます。それは、CRPSの発症原因が、現時点では解明されていないためです。また、多くの場合、CRPSを生じた患者は、長期間にわたる高度の疼痛などのため心身に多大のストレスを受ける結果、精神的な傷病(例えば、転換性障害がこれに当たります。)が生ずることは、むしろ自然の成行きとも考えられるからです。
したがって、医学的にみて、被害者の持って生まれた身体的・精神的な素因が、同人のCRPSの発症に関与していたことを加害者側が確実に立証できる場合を除き、素因減額は、そもそも主張として持ち出すこと自体に無理があるというべきです(これに関連して、加害者側から多額の報酬を受けて、被害者に、ことさら不利な医学的意見〈私的鑑定書〉を書くことを副業とする一部の医師の姿勢には問題があります。)。
 下級審判例の中には、同様の思考方法をとるものがあります。すなわち、神戸地裁判決は、「前記認定のとおり、本件事故前の原告の身体は健常であったが、前記認定の後遺障害が残ったこと、そもそも原告の前記症状が転換性障害、身体表現性疼痛障害に当たるものといいうるか疑問があること、原告には、本件事故により激しい疼痛が生じており、かつ疼痛が長期にわたり継続し、治療の効果が生じないことが原告の心身に影響を与えていることも考えられ、その心的ストレスによって、心身医学的な治療の必要が生じているということもできることなどを考慮すれば、被告の素因減額の主張は採用することができない」としました(神戸地判平22・12・7交民43・6・1587)。

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