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交通事故の法律Q&A

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Q36脳外傷による高次脳機能障害(その2)

設問交通事故で頭部外傷を受けた場合に、しばしば高次脳機能障害が発生すると聞きました。高次脳機能障害とは、どのようなものをいいますか?

Answer

高次脳機能障害とは、事故後に現れる認知障害、行動障害および人格障害を典型的な症状とする脳機能の障害をいいます。

解 説

(3) 高次脳機能障害の等級判断
 (a) 問題点の所在
 高次脳機能障害を負った被害者について、その後遺障害の有無および障害等級を判断する機関は、損保料率機構です。
損保料率機構が、相当の根拠に基づいてその判断を示すことによって、自賠責保険または任意保険が、具体的に損害賠償額(または損害賠償金)を被害者に対して支払う準備体制が整います。
 ただし、損保料率機構が、高次脳機能障害における後遺障害の等級(労働能力の喪失割合)を適正に決定することは、必ずしも容易とはいえません。それは、高次脳機能障害という後遺障害が、前記のとおり多様な障害を呈するためです。多様な障害のうち、いずれを特に重視するのか、あるいは全部の障害について同じ比重で評価するのかなどの、いろいろと難しい問題があるためです。
 (b) 損保料率機構の考え方
 前掲報告書(前問(1)参照)は、次のようにいいます。
 「高次脳機能障害者の労働能力を考えるとき、障害認識能力、家庭や職場への適応能力、生活の困難さ、支援の有無など複数の事柄が労働能力に影響を及ぼしていることを理解するべきである。しかし、特に就労を阻害する要因としては、認知障害だけでなく、行動障害および人格変化を原因とした社会的行動障害を重視すべきであって、社会的行動障害があれば労働能力をかなりの程度喪失すると考えるべきである」としています(前掲報告書12頁)。
 社会的行動障害(ここでは、行動障害および人格障害を指します。)は、就労という場面において、特に不利益をもたらす蓋然性が高い要素といえます。例えば、リハビリ治療の結果、知能指数だけが平常値にまで回復していたとしても、与えられた仕事に対する意欲がみられず、また、職場における人間関係をうまく保っていけない状況下では、就労は通常困難であるといえます(仮に一時的に就労できたとしても、就労が永続しない可能性があります。)。
 (c) 自賠責保険と裁判所の判断の乖離
 損保料率機構の判断をベースとする自賠責保険による高次脳機能障害の有無および等級の認定は、同様の事案について、公平かつ迅速な事務処理を第一としますから、被害者に高次脳機能障害の存在を推測させる事実が発生していたとしても、形式的な認定要件を満たさないことを理由に非該当という結果で終わることもあり得ます。
 その場合、その結果に納得がいかない被害者においては、裁判所に対し訴訟を提起し、判決によって高次脳機能障害が生じていることを認定してもらうほかありません(もちろん、判決によっては、被害者に高次脳機能障害は生じていないという内容の判断が示されることもあり得ます。しかし、仮にそのような結果で終わっても、被害者としては裁判所も自賠責保険と同じ判断をしたことから、ある程度の納得感が生まれるのではないかと思われます。)。
 現に、下級審判例の中には、自賠責保険が非該当とした事案について、高次脳機能障害の発生を認めたものが少なからずあります。 
(4) 自賠責保険
 高次脳機能障害は、神経系統の障害といえます。神経系統の障害は、自賠法施行令2条および別表第1・別表第2において、次の六段階に区分されます(「1級・2級・3級・5級・7級・9級」の六つの等級です。)。
 ところで、高次脳機能障害の後遺障害等級の認定は、原則として、労災保険障害等級認定基準に準じて行われます(労災サポートセンター・労災補償障害認定必携139頁以下・161頁以下。)。具体的には、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力および社会行動能力の四つの能力の喪失程度によって評価を行うものとされています(なお、障害の程度を例示した高次脳機能障害整理票が、AからFまでの六段階で表示されています。)。また、複数の後遺障害が認められるときは、障害の程度が最も重いものに着目して障害の程度を評価する、としています。
しかし、自賠責保険の場合は、労災保険と異なって、障害等級の認定を受ける対象者は必ずしも労働者とは限りません。また、上記の四つの能力が損なわれた状態が、上記六段階のうち、いずれの段階に該当するかの判断も、必ずしも容易とはいえません。そこで、旧自算会(旧・自動車保険料率算定会)は、既に平成12年12月18日付けの報告書「高次脳機能障害認定システム確立検討委員会」において、自賠責保険で障害等級を認定する際の考え方を提示しています(これが、いわゆる「補足的な考え方」といわれるものです。)。

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