お問い合わせ電話番号
受付時間:午前10時~午後5時

052-211-3639

電話でのお問い合わせ
メール相談申し込み

交通事故の法律Q&A

交通事故の法律Q&A

Q51人身傷害保険と損害賠償請求権の関係(その1)

設問私は、人身傷害補償保険に加入していますが、今回、事故に遭って重い後遺障害が残ってしまいました。そこで、損害の補償を受けたいと考えていますが、先に人身傷害補償保険金を受け取り、その後、加害者に対する損害賠償請求をした方がよいのか、あるいは、加害者に対する損害賠償請求をして損害賠償金を受け取り、その後で保険会社に対して人身傷害補償保険金を請求した方がよいのか、いずれがよいでしょうか?

Answer

いずれの場合であっても、受領できる損害賠償金および保険金の合計額は、原則として変わらないとする立場と、変わることがあるとする立場に分かれます。

解 説

(1) 人身傷害補償保険と損害賠償請求権の相互関係
 交通事故の被害者が、人身傷害補償保険に加入していた場合、その過失の有無を問うことなく、人身傷害補償保険の定める基準に従って保険金を受け取ることができます。他方、被害者は、加害者に対して不法行為責任に基づく損害賠償請求権を有します。
 そこで、双方の関係について問題が生じます。具体的には、先に人身傷害補償保険金を受領した被害者が、後で加害者に対して損害賠償請求訴訟を提起した場合、裁判所の判決によって、一体いくらの賠償金を受け取ることができるのかという問題です。
 この点について、かつてはいろいろな考え方がありました。しかし、最近になって最高裁の判断が示されたことによって、現在では問題が決着するに至りました(最判平24・2・20判時2145・103)。
(2) 最高裁の立場
 (a) 最高裁判例
 最高裁は、裁判基準差額説(訴訟基準差額説)を採用しました。
 裁判基準差額説とは、被害者に対し、裁判所が認定した損害賠償金額を、人身傷害補償保険金と損害賠償金で保障しようとする見解です。やや長文になりますが、次のとおり判決を引用します。
 すなわち、「本件約款によれば、訴外保険会社は、交通事故等により被保険者が死傷した場合においては、被保険者に過失があるときでも、その過失割合を考慮することなく算定される額の保険金を支払うものとされているのであって、上記保険金は、被害者が被る損害に対して支払われる傷害保険金として、被害者が被る実損をその過失の有無、割合にかかわらず塡補する趣旨・目的の下で支払われるもの解される。上記保険金が支払われる趣旨・目的に照らすと、本件代位条項にいう『保険金請求権者の権利を害さない範囲』との文言は、保険金請求権者が、被保険者である被害者の過失の有無、割合にかかわらず、上記保険金の支払によって民法上認められるべき過失相殺前の損害額(以下「裁判基準損害額」という。)を確保することができるように解することが合理的である。そうすると、上記保険金を支払った訴外保険会社は、保険金請求権者に裁判基準損害額に相応する額が確保されるように、上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り、その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。」としました。
(b) 解釈
 上記最高裁の立場を分かりやすく説明すると、次のようになります。
 第1に、人身傷害補償保険は、被害者が被る実損を、同人の過失の有無・割合にかかわらず填補する趣旨の下で支払われるものです。したがって、約款の代位条項の文言も、被害者が過失相殺前の損害額(裁判基準損害額)を確保できるように解釈する必要があります。
 第2に、人身傷害補償保険会社は、被保険者(被害者)に支払済みの人身傷害補償保険金と被害者が加害者に請求できる(過失相殺後の)損害賠償金の合計額から、裁判基準損害額(過失相殺しないもの)を控除した残額について、代位取得します(なお、最判平24・5・29判時2155・109)。
 第3に、被害者は、加害者に請求できる(過失相殺後の)損害賠償金から、上記代位取得額を控除した残額についてのみ、加害者に対し損害賠償請求することが認められます。

ページの先頭へ

Copyright (c) 宮﨑直己法律事務所.All Rights Reserved.