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交通事故の法律Q&A

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Q6交通事故と医療事故の競合

設問甲が起こした交通事故によって、頭部を強打した被害者丙は病院に救急搬送されましたが、治療に当たった医師乙は、丙の怪我は単なる頭部打撲にすぎないと誤診をしました。その結果、被害者丙は、翌日、急性硬膜外血腫で死亡するに至りました。事故加害者甲と誤診をした医師乙は、どのような不法行為責任を負いますか?

Answer

交通事故を起こした加害者甲の責任と医療事故を起こした医師乙の責任は、共同不法行為になると解されます。

解 説

(1) 共同不法行為の成立
 (a) 最高裁判例
 本問のように、交通事故が発生して、その直後、当該事故による被害者の治療を担当した医師による医療事故が発生して、結果的に被害者の損害が拡大するような場合がしばしばあります。
 その場合に、交通事故を起こした者と医療事故を起こした者との間に共同不法行為責任を認めることができるか、という問題があります。これについて、最高裁は、共同不法行為責任を肯定しています(最判平13・3・13民集55・2・328)。
 最高裁が判断を示した事件とは、交通事故(自動車事故)によって頭部を負傷した6歳の子供が、事故後に搬送された病院で適切な治療を受けることができなかったため、事故から僅か9時間後に、急性硬膜外血腫によって死亡したという事件でした。
 (b) 共同不法行為の成立を認める理由
 最高裁は、次のような理由を示して共同不法行為の成立を認めました。
① 交通事故の直後に被害者に対し適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもって被害者を救命することができた。
② 上記①の理由から、本件交通事故と本件医療事故は、いずれも被害者の死亡という1個の結果を招来したものであって、その結果について相当因果関係が認められる。
③ 上記②の理由から、自動車事故を起こした運転行為と、医療事故を起こした医療行為は、民法719条の共同不法行為に該当するから、各不法行為者は、被害者が被った損害の全部を連帯して賠償する責任を負う。
④ 被害者との関係において、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の損害を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することはできない。
(2) 最高裁判例から導かれる結論
 最高裁は、上記のような判断を示しました。したがって、この立場からは次のような結論が導かれます。
 (a) 運転者甲と医師乙の共同不法行為責任
共同不法行為者とされた自動車の運転者甲と医療事故を起こした医師乙は、被害者丙が受けた全部の損害を連帯して賠償する責任を負います。したがって、例えば、自動車の運転者甲の側から、「自動車事故を起こした自分に責任の一端があることは認めるが、医師乙が適切な治療をしていさえすれば被害者が死亡するという最悪の結果は起こらなかった。したがって、自分の損害賠償額は減額されるべきである」というような主張をしても、それが認められる余地はないことになります。
(b) 例外
ただし、交通事故から相当の時間を経過して医療過誤が発生したような場合は、経過した時間が長ければ長いほど時間的近接性が弱くなっていきますから、客観的関連共同の要件を欠くに至る場合もあり得ます。その場合は、共同不法行為の成立は難しくなると解されます。

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