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交通事故の法律Q&A

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Q8運行供用者責任

設問運行供用者責任というものがあると聞きましたが、この責任はどのような性格を有しますか?また、運行供用者責任が免責される場合はありますか?

Answer

運行供用者責任とは、自賠法3条が定める責任を指します。実質的な無過失責任という性格を持ちます。運行供用者において免責3要件を立証できれば、免責されます。

解 説

(1) 実質的な無過失責任 
 (a) 民法の一般原則
 民法の一般原則からすると、交通事故のような不法行為が発生し、被害者に何らかの損害が生じ、加害者に対してその損害を賠償することを求めようとする場合、被害者の側において、民法709条の不法行為が成立するための要件を証明する必要があります(立証責任は、被害者の方にあります。)。
 (b) 立証責任の転換
 しかし、民法の原則をそのまま貫徹した場合、交通事故の被害者にとっては、酷とも思える不合理な事態が発生することもあり得ます。
 例えば、前方の車道から歩行者に向かって車道を走行してきた車が、突然、車道を逸れて歩道に乗り上げ、歩道上の歩行者をはねたような場合、民法の一般原則によれば、歩行者の側で積極的に車を運転していた者に過失があったことを証明しなければなりません。しかし、車がなぜ車道を逸れたのかについて、歩行者がその原因を究明することは必ずしも容易ではありません(例えば、車を運転していた者が、事故原因について何も語ろうとしないような場合は、事故原因を被害者の側で証明することは通常困難です。)。
 そこで、自賠法3条は、被害者を救済するために、民法の一般原則を修正し、人身事故に限って損害賠償責任を運行供用者に集中させることにしました(したがって、物損事故には本条の適用がありません。)。
 具体的にいうと、加害者つまり運行供用者の側で、自分が免責されるための三つの要件(免責3要件)を積極的に証明しない限り、損害賠償責任を負わなければならないものとしました。

自賠法3条 「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。」

(2) 運行供用者の認定基準
 (a) 運行供用者とは
 運行供用者とは、自賠法3条でいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」を指します。運行供用者の意味について、最高裁の判例は、「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味する」としています(最判昭43・9・24判時539・40)。
 つまり、自動車の使用について、運行支配と運行利益を有する者が運行供用者となります(このような考え方を「二元説」と呼ぶことがあります。)。
 これに対し、運行支配の要件だけで判断すれば足りるという立場もあります(このような立場を「一元説」と呼ぶことがあります。最判昭50・11・18民集29・10・1818)。
 (b) 運行供用者性の立証責任
 損害賠償請求訴訟において、被告(加害者)が運行供用者に当たることを、原告(被害者)がどの程度立証すれば足りるか、という問題があります。この点について、裁判実務は、原告は、被告が事故を起こした自動車について所有権、賃借権、使用借権などの使用権原を有していたことを立証すれば足りる、としています。
 例えば、裁判所に提出する訴状の請求原因として、「被告は、本件自動車を保有していたから運行供用者に当たる。」と記載すれば足ります。
これに対し、仮にそのような事実が存在しないのであれば、被告の方で、自分には事故を起こした自動車の使用権原がなかったことを積極的に立証する必要があります(被告の方でそのことを立証できなかったときは、裁判所としては、被告は運行供用者に当たるという判断を下すことになります。)。
 このように、運行供用者責任は、実質的な無過失責任であるといわれます。
(3) 免責3要件
 加害者が、たとえ運行供用者に該当しても、免責3要件をすべて立証することができれば、損害賠償責任を免れることができます。次の(a)から(c)までがそれに当たります(免責3要件)。
 (a) 自己および運転者の無過失
 運行供用者および運転者(他人のために自動車を運転する者および運転の補助に従事する者をいいます。自賠2条4項参照)が、自動車の運行に関し、注意を怠らなかったこと、つまり無過失という意味です。
 例えば、甲が国道を大型トラックで走行していたところ、反対車線を走行中の乙の運転する軽自動車が、急に中央線を超えて甲の運転するトラックに正面衝突したため、軽自動車が大破して乙が重傷を負った場合がこれに当たります。乙は、当該事故によって損害を被りますが、その損害を甲に対し請求することはできないということになります。
 それは、甲としては、当該事故の発生を予見することも回避することもできなかったと評価されるからです。つまり、甲には過失が認められないため、運行供用者責任を免れることになります(もちろん、他の2要件を同時に満たす必要はあります。)。
 (b) 被害者または運転者以外の第三者の故意・過失
 第1に、事故の被害者に過失がある場合を指します。上記の例でいえば、軽自動車を運転していた乙が、急に中央線を越えて走行してきたのですから、被害者である乙に過失があることは明らかです。
 第2に、第三者に故意・過失がある場合です。これは、例えば、上記の例で、軽自動車の助手席にたまたま同乗していた丙が、運転席のハンドルを勝手に回したために車が中央線を越えたような場合を指します。この場合、第三者丙には故意が認められます。
 (c) 自動車に構造上の欠陥がなかったこと
 自動車に構造上の欠陥があった場合には、運行供用者責任は免責されないという意味です。ここでいう構造上の欠陥とは、自動車メーカーに責任のあるいわゆる欠陥車の場合がこれに含まれることはもとより、運行供用者に責任がある場合も含まれると解されます(例えば、整備不良車の場合がこれに当たります。)。

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