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交通事故の法律Q&A

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Q11運行供用者責任が問題となる場合(その1)

設問自賠法3条の運行供用者責任の有無が問題となる事例について、具体的に教えてください。 

Answer

運行供用者に該当するか否かが問題となるのは、多くの場合、車の保有者と現実の使用者が分かれている場合です。 

解 説

(1) 車が盗まれた場合  
 (a) 車を盗んだ者の責任
 甲が所有する車を泥棒乙が盗んで逃走中に、通行人丙を轢いて傷害を負わせた場合(泥棒運転)、果たして乙は運行供用者責任を負うでしょうか。この場合、泥棒乙には、車を使用する正当な権利はありませんが、現にその車を運転して逃走しているわけですから、運行支配と運行利益は同人に帰属していると解されます。したがって、泥棒乙は、運行供用者に該当すると考えられます。
 (b) 車を盗まれた者の責任
 車を盗まれた者甲は、原則として、車に対する運行支配および運行利益を喪失していると解されますから、運行供用者には当たらないと解されます。
 例えば、甲タクシー会社の車庫に、エンジンキーを付けたままドアに鍵を掛けない状態で駐車しておいたタクシーが、泥棒乙によって盗まれ、乙がそのタクシーを使って営業中に、たまたま乗客となった丙に怪我を負わせた事例について、最高裁判例は甲タクシー会社の運行供用者責任を否定しています(最判昭48・12・20民集27・11・1611)。
その理由として、同判例は、甲タクシー会社には、盗まれたタクシーについての運行支配も運行利益もないことをあげています。
 ただし、車を盗まれたことについて、保有者としての管理責任を十分に果たしておらず過失があったと評価される場合や、盗難を容認したといわれても仕方がないような事情がある場合には、例外的に運行供用者責任を認める立場もあります。
 例えば、車の所有者甲が日本を離れる際に、車のキーを知人乙に預けたところ、車が盗まれて人身事故が発生した場合に、甲の運行供用者責任を認めた判例があります(東京地判平20・2・4交民41・1・148)。
 (c) 無断使用運転
 車を無断使用した者が起こした人身事故について(無断運転)、果たして車の保有者は運行供用者責任を負わされるでしょうか。無断使用の場合は、泥棒運転と同じく保有者の同意がありません。反面、保有者と無断使用者との間には何らかの人的関係が存在します。
 例えば、農協の運転手が、私用のために農協が所有する車を運転中に人身事故を起こした場合について、客観的・外形的にみて、所有者である農協のために車を運行の用に供していたといえるか否かという基準を立てた上で、農協は運行供用者に当たるとした最高裁判例があります(最判昭39・2・11民集18・2・315)。
 また、甲の家に遊びに来ていた乙が、甲が眠っている間に、勝手に甲所有の車を運転して買物に行く途中で人身事故を起こした場合に、甲の運行供用者責任を認めた判例があります(神戸地判平20・3・21交民41・2・418)。
(2) マイカーの場合
 会社の従業員が、会社の業務とは無関係に個人的目的で自家用車(マイカー)を運転中に人身事故を起こした場合、会社がその責任を問われることは原則的にありません。
 しかし、会社が従業員に対し、マイカーを会社の業務に使用することを承認していた場合や、原則禁止でも事実上は黙認していた場合は、会社にも運行利益が生じていたと考えることが可能であり、そのような場合には、会社についても運行供用者責任が発生することになります。
 例えば、最高裁判例は、建設会社の従業員が、マイカーで工事現場から会社の寮に帰る途中で起こした人身事故について、会社は、日頃から従業員が寮から工事現場に通勤するための交通手段として従業員のマイカー使用を黙認しており、また、会社の建物に隣接する駐車場を従業員のマイカーの駐車場として使用することを認めていた場合は、会社は従業員のマイカーの運行について指導監督をなし得る立場にあったとして、会社の運行供用者責任を認めました(最判平元・6・6交民22・3・551)。
 これに対し、会社の従業員が、マイカーを運転して帰宅する途中で人身事故を起こした事例で、会社が従業員に対しマイカー通勤を禁止していた場合には、会社は運行供用者責任を負わないとした判決もあります(大阪地判平18・12・13交民39・6・1703)。
(3) 車の貸借の場合 
 車の所有者甲が、その車を知人乙に貸して(車の貸借)、乙が車を運転中に人身事故を起こした場合、乙が運行供用者に該当することに異論はありません。
 また、車を貸した甲にも運行供用者責任が認められることが原則です。なぜなら、貸主は、未だ車に対する運行支配と運行利益を喪失していないと考えられるからです。
 例えば、甲自動車会社が所有する車を乙タクシー会社に貸したところ、乙タクシー会社の乗務員がその車を運転中に人身事故を起こした場合に、甲自動車会社に運行供用者責任が認められるとした判例があります(東京地判平21・3・30交民42・2・473)。
しかし、事情によっては、車の貸主の運行供用者責任が否定されることがあります。例えば、車の貸主甲が、約2時間後には車を返還してもらう約束で車を知人乙に貸したが、乙は最初から長期間にわたって車を使用する意図を持っており、そのことを甲に告げずに車を借りたため、返還期限を過ぎても、「もう少し待って欲しい。」などと言い訳をして車を使い続けていたところ、約束した返還期限から約1か月後に死亡事故を起こしたという事例について、最高裁判例は、甲の運行供用者責任を否定しました(最判平9・11・27判時1626・65)。
この事例において、最高裁は、本件事故当時、車の運行は専ら乙が支配しており、甲は運行を支配する立場になく、また、運行利益も甲に帰属していたとはいえなかったことを理由に、甲は運行供用者には当たらないと判断しました。

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