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交通事故の法律Q&A

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Q19懲戒免職処分の取消訴訟

設問私(乙)は、甲県の職員でした。私は、休日に家でビールを飲んでいましたが、同居する祖母丙の具合が急に悪くなったので同女を車に乗せて近くの総合病院に向かいました。当時、私は飲酒の影響は全くないと思っていましたが、途中、一時停止中の車に追突する物損事故を起こしました。警察官が来て私の飲酒検査をした結果、酒気帯び状態であると告げられました。そのため、私は30万円の罰金刑を受けました。その後、損保会社同士が話し合って物損事故は示談が成立しました。ほどなくして、私は任命権者である県知事から懲戒免職処分を受けました。しかし、私はこの処分には納得できず、人事委員会に対し不服申立てを行いましたが、棄却裁決が出され私の主張は認められませんでした。私は、懲戒免職処分は重すぎると考えますから、処分の取消しを求めて訴訟を行う方針です。果たして、私が勝訴する見込みはあるでしょうか?

Answer

今回、乙は酒気帯び運転の結果、物損事故を起こしました。このような場合、懲戒処分としては、免職又は停職の処分が相当と考えられます。したがって、事情によっては、懲戒免職処分が取り消される可能性があると考えられます。

解 説

(1) 懲戒処分の量定
 (a) 懲戒処分の指針について
 人事院は、「懲戒処分の指針について」という通知を発し、処分を量定する際の指針を公表しています(平成12年3月31日職職-68。最終改正平成20年4月1日職審-127)。
 これによれば、上記指針は、職員が行った非違行為について、「代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものである。」としています。この指針は、国家公務員を対象としたものですが、地方自治体である甲県においても、おそらくこれと余り違わない内容の指針(通達)が定められていると思われます。
 (b) 処分量定に当たっての考慮事項
 上記指針によれば、処分量定の決定に当たり、次のような事情を考慮するべきものとされています。
 ① 非違行為の動機、態様及び結果
 ② 故意または過失の度合い
 ③ 非違行為を行った職員の職責およびこれと非違行為との関係
 ④ 他の職員および社会に与える影響の程度
 ⑤ 過去における非違行為歴
 また、適宜、対象となった職員の日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に判断するものとしています。
(2) 最高裁の基本的立場 
 最高裁は、任命権者による地方公務員の懲戒処分が違法とされるか否かについて、従来から、以下のような考え方をとっています(最判平2・1・18民集44・1・1、判時1337・3。いわゆる伝習館事件判決)。また、下級審の裁判所(地裁・高裁)も、そのような判断枠組みを原則的に支持しています。
 すなわち、「地方公務員につき地公法所定の懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、平素から庁内の事情に通暁し、職員の指揮監督の衝に当たる懲戒権者の裁量に任されているものというべきである。すなわち、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を総合的に考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを、その裁量的判断によって決定することができるものと解すべきである。したがって、裁判所が右の処分の適否を審査するに当たっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである」としています。
(3) 本件事例について
 (a) 懲戒免職処分を相当とする事実
 本件で、懲戒免職処分を支持する根拠事実としては、物損事故を起こしたこと(しかも、一時停止中の他車に一方的に衝突していること。)、酒気帯び状態で車を運転したことおよび30万円の罰金刑を受けていること、の3点があげられます。
 (b) 懲戒免職処分を不当とする事実
 これに対し、懲戒処分を重すぎるとみるべき根拠事実としては、具合の悪くなった同居の祖母を病院に送ろうとしたこと、物損事故の示談が成立していることの2点があげられます。
 しかし、乙は、自分が車を運転しなくても救急車を手配することによって祖母を病院に搬送することができたはずです。また、物損事故の場合、特に重大で複雑な事情がある事案の場合を除き、自動車保険に加入していれば示談で比較的簡単に解決することが可能です。したがって、これらの事情を過度に重視することはできません。
 (c) 結論
 以上のことから、乙が、懲戒免職処分の取消しを求めて裁判を起こしても、必ず処分が取り消されるという見通しは立ちにくいといえます。

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