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交通事故の法律Q&A

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Q22健康保険と労災保険

設問交通事故で怪我をした場合であっても、自分の健康保険を利用して治療を受けることができると聞きました。そこで、交通事故と健康保険および労災保険の関係について教えてください。

Answer

交通事故の怪我の治療に健康保険を使うことはできます。また、事故が業務災害・通勤災害に当たれば労災保険を使うことも可能です。

解 説

(1) 健康保険
 (a) 健康保険の利用
 交通事故の被害者となった者は、健康保険(保険者は健康保険組合です。)、国民健康保険(保険者は地方自治体です。)などの社会保険を利用して、事故による傷病の治療を受けることが可能です。健康保険を利用するメリットは、治療費の自己負担額の軽減を図ることができる点にあります。
 例えば、被害者甲の怪我を治療するため、乙病院で治療費として総額100万円を要したとします。その場合、被害者甲は、乙病院の窓口で、自己負担分の3割に相当する30万円を支払うだけで済みます。
 これに対し、自由診療を選択しますと、100万円(なお、自由診療の場合、診療報酬単価が健康保険よりも高く設定されているため、治療費が、健康保険を利用した場合と比べてかなり割高になる可能性があります。)を自分で全部負担する必要があります(被害者は、後で自賠責保険に対し、支出済みの治療費について被害者請求をすることによって、これを回収することができます。しかし、自賠責保険の傷害分の保険金額は120万円が上限額ですから、超過分は、被害者本人が負担することになります。)。
 (b) 第三者行為傷病届の提出
 被害者が、健康保険(国民健康保険等)を利用して怪我の治療を受けようとする場合、保険者(健康保険を運営している健康保険組合、国民健康保険を運営している市町村等を指します。)に対し、第三者行為傷病届を提出する必要があります。
 (c) 具体例
 例えば、「被害者甲は、道路を横断中に乙の運転する自動車にはねられ、丙病院で治療を受けたところ全治したが、治療費が全部で200万円かかった。その際、被害者甲は、丁市の国民健康保険を使って治療を受けた。なお、甲と乙の過失割合は、30対70である。」とします。
 この事例の場合、被害者甲は、丙病院で自己負担分として200万円の3割に相当する60万円を支払う必要があります(窓口負担分60万円)。そして、被害者甲が国民健康保険を使って治療を受けることから、丁市は140万円を丙病院に支払います。丁市は、被害者甲に代わって治療費140万円を支払ったのですから、甲の乙に対する損害賠償請求権を代位取得するに至ります(国保64条1項「その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する」)。丁市が代位取得した権利を行使する相手方は、加害者乙が入っていた自賠責保険会社となります(いわゆる国保求償分)。
 次に、被害者甲は、加害者乙の自賠責保険会社に対し、自賠法16条1項に基づいて60万円の被害者請求権(直接請求権)を行使することができます。他方、上記のとおり、丁市も同様に乙の自賠責保険会社に対し、代位取得した140万円の債権について直接請求することができるはずです。このように、双方の直接請求権が競合する事態が生じた場合、いずれの直接請求権が他方に優先するのかという問題が発生します。最高裁判例は、被害者の直接請求権と、旧老人保健法によって市町村が取得した直接請求権が競合した事例について、これらの直接請求権の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても、被害者は、市町村に優先して自賠責保険会社から自賠責保険金額の限度において自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払いを受けることができる、としました(最判平20・2.19民集62・2・534)。
 以上のことから、被害者甲は、加害者乙の自賠責保険会社に対し60万円請求することができます。すると、乙の自賠責保険の残りは、60万円となります(自賠責保険傷害分120万円-60万円=60万円)。
 そこで、丁市は、乙の自賠責保険に60万円の限度で求償することができますが、その結果、丁市の未回収分は80万円となります(140万円-60万円=80万円)。
 ところで、乙の過失割合は7割ですから、同人が負担すべき甲の治療費の上限額は140万円です(200万円×0.7=140万円)。上記の段階で、乙側負担分として、既に120万円が支払われていますので(60万円+60万円=120万円)、乙個人として負担すべき金額は、20万円です。したがって、丁市は、乙個人に対し20万円を限度として求償することができると解されます。
(2) 労災保険
 交通事故(人身事故)が発生し、それが業務上災害または通勤災害と認められますと、労働者災害補償保険(以下「労災保険」といいいます。)の適用となります(労災事故)。この場合、被災労働者は、労働基準監督署長あてに第三者行為災害届を提出する必要があります。その結果、被災労働者の治療費は、労災保険で全額補償されます。
 ところで、労災事故であっても、なお自賠責保険の適用が認められます。この場合、原則として、自賠責保険を先に使うものとする旨の国の通達もありますが(昭和41年12月16日基発第1305号)、選択権は被災労働者にありますから、諸々の事情を考慮の上で、自分にとって一番有利と思われる手段を選択すれば足りると考えます。

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