お問い合わせ電話番号
受付時間:午前10時~午後5時

052-211-3639

電話でのお問い合わせ
メール相談申し込み

交通事故の法律Q&A

交通事故の法律Q&A

Q24 給与所得者の休業損害

設問私は交通事故で怪我を負い、1か月間仕事を休みました。休業損害を加害者に請求することはできるでしょうか?

Answer

事故で仕事を休んだ結果、収入が減少した場合に、休業損害として加害者に対し損害賠償請求をすることが可能です。

解 説

(1) 休業損害とは
 休業損害とは、事故の被害者が、事故による傷病の治療のために仕事を休むことを余儀なくされ、その結果、現実に収入が減少した場合に発生する損害です。例えば、会社員が事故による治療を受けるために仕事を休み、そのために給与10万円を減額された場合は、その10万円が休業損害となります。
 したがって、事故当時、現実の収入がない者については、休業損害は発生しません。例えば、高校生が事故で長期間入院しても、通常は、事故前に同人に収入はありませんから、休業損害は生じません。
 ただし、収入がなくとも、主婦または求職中の者のような場合は、例外的取扱いが認められます。
(2) 休業損害の計算
 休業損害の計算は、次のように行います。

   1日当たりの基礎収入額×休業期間=休業損害

(3) 給与所得者の休業損害
 (a) 基礎収入額
 給与所得者の場合、基礎収入日額は、被害者が勤務する会社から、休業損害証明書を出してもらい、その金額を基に計算をします。具体的には、事故前3か月間に被害者が受け取った給与(本給のほか、付加給も含まれますから、残業手当、住宅手当等も加算します。)の合計額を、事故前3か月間の日数(90日)で割って出します。その際、税金や社会保険料は控除しません(いわゆる税込額で計算します。)。(注)
 例えば、事故が8月に発生したとします。この場合、事故前3か月とは、「5月、6月、7月」をいいます。そして、5月から7月までの給与の合計額が、例えば100万円だったとします。その場合、基礎収入日額は、100万円÷90日=1万1,111円となります。
  (注) 会社(雇用主)発行の休業損害証明書の内容に疑問がある場合には、加害者側から、さらに源泉徴収票や公的な所得証明書の提出を求められることがある。例えば、休業したアルバイトの従業員に対し、通常はあり得ないような高額の休業損害証明書が提出されたような場合がこれに当たる。
 (b) 年次有給休暇
 年次有給休暇を取得した日数は、休業日として計算します。
 (c) 賞与の減額
 事故で会社を休んだことによって賞与が減額された場合、会社が作成した賞与減額証明書によって、賞与減額分に相当する損害を受けたことを証明することができます。
 (d) 事故による受傷が原因の解雇
 事故による受傷が原因となって、今まで勤めていた会社を解雇され、または会社を自主退職した場合に、果たして休業損害を請求することができるか、という問題があります。
被害者が会社を解雇された場合、解雇時以降は、会社から給与を受け取ることはできません。この場合、被害者としては、一時的に収入が途絶えてしまう状態になります。したがって、被害者が生活できるようにするため、一定の補償を行う必要があります。失業手当の受給などの公的補償とは別に、被害者は、加害者に対し、実際に稼働できなかった期間について、休業損害を請求することができると解されます。
 この点について、青い本は、「無職状態となった以降も、現実に稼働困難な期間が休業期間とされる。また、稼働可能となっていても就職先が得られなかった場合には、現実に就職先を得られたときまでの期間か転職先を得るまでの相当期間のいずれか短期の期間につき損害算定をする」という見解を示しています。
 (4) 休業期間
 事故の被害者が医療機関に入通院した場合、休業期間としていつまで認定することができるか、という問題があります。
 (a) 入院期間
 入院期間については、原則的にその全部を休業期間として認めることができると解されています。
 (b) 通院期間
 通院期間については、原則として、事故によって稼働できなくなった時点から、症状固定日までの期間について、休業損害を考慮することができます(症状固定日以降の期間については、後遺障害があれば、逸失利益の問題となります。)。
 第1に、症状固定日以前に稼働が可能となった場合には、稼働可能日までの期間において休業損害を算定します。
 この場合、稼働可能日を基準として、それ以前の労働能力はゼロであったが、それ以降は100パーセント回復したと考えることは不自然であり、不合理でもあると考えられます。そこで、症状固定日までの全期間について、平均して何パーセント稼働できなかったか、という認定を行う下級審判例が多いといえます(ここで「稼働できなかった」という言葉は、休業を要したという意味を持ちます。)。
 例えば、「入院期間については100パーセント、通院期間については平均して70パーセントの休業を認める」という判断が、これに当たります。

     受傷日       稼働可能日    症状固定日
                  
          休業期間

第2に、症状固定日においても、なお稼働が困難である場合には、症状固定日までの全期間について、100パーセントの休業損害を算定します。
(5) 会社役員の場合
 会社役員の場合は、普通の給与所得者の場合とは違った特別の考慮が必要となります。一口に会社役員といっても千差万別であり、実態が個人事業主と余り変わらない場合は、むしろ事業所得者として休業損害の算定をした方が合理的であるといえます。
 他方、一定規模以上の法人において、会社役員としての待遇を受けている場合、同人は、会社から経営を委任された者としての地位に基づいて役員報酬を受け取ることができます。その役員報酬は、労務対価的部分と、企業経営者として当然に受け取ることができる利益配当的部分に区別することができます。
 そのうち、前者の部分だけが休業損害算定の基礎収入として認められると解されます(他方、配当部分については、基礎収入から除外されます。)。
(6) 企業損害
 企業損害とは、会社の代表者または従業員が事故で受傷したため、会社の売上が減少し、会社に経済的損害が生じた場合を指します。この場合、会社に発生した損失を加害者に請求することができるか否かが、企業損害の問題といわれるものです。
 この点について、最高裁の判例は、経済的同一体説という立場をとっていると解されます(最判昭43・11・15民集22・12・2614)。この判例は、会社(法人)が、名ばかりの個人企業であって、経済的に会社の役員(取締役)と会社が一体をなす関係にあって、会社の機関としての代替性がない場合には、加害行為と会社に生じた損害との間に、相当因果関係を認めることができる、としました。
つまり、会社の役員個人の身に発生した交通事故によって損害を受けるのは、直接被害者たる役員です。会社は、役員とは別の法的主体であって、いわば間接被害者に相当します。間接被害者は、原則として賠償請求権の主体とはなりませんが、例外的に事故被害者である役員と会社とが経済的同一体をなしている場合(財布共通の原則が認められる場合)は、会社から、加害者に対する損害賠償請求権を認めようとする考え方です。
 ただし、両者が経済的同一体をなしていたとしても、直接の被害者である役員が、既に損害賠償の支払いを受けているときは、賠償金の二重取りを防止する趣旨から、会社はもはや重ねて損害賠償の請求をすることはできない、と解されます(東京高判平13・1・31交民34・6・1744)。
(7) 肩代わり損害
 肩代わり損害(反射損害)とは、事故被害者である会社役員または従業員のために、その者が所属する会社が、治療費・入院費、交通費、休業損害などを支払った場合に発生する損害をいいます。本来、これらの損害は、被害者から加害者に対して請求すべきものです。しかし、場合によっては、会社が一時的に立替払いをすることもあり得ます。その場合、会社は、加害者に対して立て替えた損害を請求することができます(民法499条の任意代位として理解することが可能です。)。

ページの先頭へ

Copyright (c) 宮﨑直己法律事務所.All Rights Reserved.