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弁護士日記

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RSDの裁判を終えて

2008年08月04日

 私が担当した交通事故によるRSDの患者さんの裁判が、本日結審つまり審理を終えた。判決は、名古屋地裁の某支部で本年10月に言い渡される予定である。この事件は、今から相当以前に発生した交通事故によって、被害者の太田静子さん(仮名)にRSDが発生し、その後遺症のために非常に苦しんでおられるという事件である。 
 争点はいろいろあるが、第1の争点は、被害者の太田さんが事故後に罹患した病気が果たしてRSDであるのか否かという点である。損保会社の弁護士は、被害者はRSDに罹患していないとして争ったが、その主張はきわめて杜撰なものであった。
 というのは、患者を長年にわたって治療している主治医、第三者である信頼できる医療機関および被害者の治療を担当した大学病院医師のいずれもが、この病名を肯定しているからである。反面、損保会社が拠り所としている証拠は、損保会社から金をもらって損保会社に有利な意見を書いている医師が書いた意見書であった。しかし、そのような恣意的な意見書は、そもそも「意見書」の名に値しない。
 なぜなら、その医師は、患者である被害者を実際に一度たりとも自分で診ることもなく、しかも、本件では被害者に事故による骨折があったにもかかわらず、これを否定し、被害者の症状は、心因性のものにすぎないと完全に間違った意見を述べたからである。事故による骨折があったことは、最初に被害者が治療を受けた公立病院の担当医も認めている事実である。しかし、この事実さえ否定して損保会社に有利な意見を書く医師には、本当に怒りを覚える。金に目がくらんで、良心が麻痺しているとしか思えない。
 RSDの診断基準については、世界疼痛学会が、1994年に一応の基準を示したが、最近になって新たな診断基準が発表された。それは、2005年に出された診断基準であり、
①感覚障害、②血管運動障害、③浮腫・発汗機能障害、④運動栄養障害の計4項目で診断する。しかし、この診断基準も確立したものとは言い難く、あくまで現時点における最新の基準であるにとどまる。
 心因性という言葉は、損保会社が特に好む言葉である。心因性という言葉については、医学専門書を読めば、定義を理解することは容易である。しかし、損保会社が、この用語を使用する場合は、事故被害者である患者の回復状態が、通常想定される状態よりも悪い場合である。つまり、患者の治療が長引けば、患者にかかる治療費、休業損害、慰謝料等が増える。それを何とか減額させようとして、損保会社は心因性という言葉を持ち出す。しかし、事故被害者としては、このような意味不明の言葉にごまかされてはいけない。われわれ弁護士としても、裁判上、特に注意をしている点でもある。

日時:17:40|この記事のページ

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