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弁護士日記

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農地法研修会in大阪を終えて

2016年12月21日

 昨日(12月20日)、私は、大阪府農業会議から招かれ、大阪市中央区内の会場を使って開催された農地法研修会の講師を務めた。テーマは、大阪府農業会議の担当の方から、事前に「農地転用にからむ民法・行政法の基礎について話をして欲しい」との要望があったので、それに沿ったお話をした。
 出席者は、大阪府下の農業委員会の担当者の方々であり、総勢50名弱の人数が集まられた。農業会議の担当者の話では、当初は30名ほどの出席者を見込んでいたが、途中から参加希望者が増え、結局、50名弱の人数にまで至ったとのことであった。
 研修で使用したテキストは、「農地法講義[改訂版]」である。研修会を開催するに当たっては、もちろんレジュメを作成し、それを使用して行うことも可能である。しかし、今回は、農業会議の方で「全員分のテキストを揃えます」との連絡があったため、上記の本を研修時に使用したものである。
 研修時間は90分であり、私は懇切丁寧に解説を行った。午後の3時過ぎに当日の研修会のうちの私の担当分が終了し、私はその日のうちに自宅に帰った。今回は、講師席に椅子が用意されていなかったので、90分間立ちっぱなしであり、やや足が疲れた。しかし、1日経過すると全く疲労感は残っていない。
 やはり、健康が第1である。人間の健康を害する日々の生活習慣及び地域の環境要因は、極力改善する必要があると改めて感じた次第である。
 では、皆さん良いお年をお迎えください。

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日時:14:54|この記事のページ

安倍首相はそろそろ退陣の支度をされた方がよい

2016年12月19日

 本年12月15日・16日と、日ロの首脳会談が開催された。結果は、事前の予想どおり何の収穫もない無残な結果で終わった。
 そもそも、今年に入ってから、最初のころは、今回の山口県で開催される日ロの首脳会談において北方領土問題について前進がみられるのではないかという希望的観測が広まった。ところが、本年12月15日が近づくにつれて、安倍首相の発言は、明らかのトーンダウンしてきていた。そのため、会談が開かれる前の時点で、北方領土問題についての進展は期待できないという空気が大勢を占めるようになった。
 蓋を開けてみると、やはりそのとおりの結果となった。あえて言えば、事前の予想よりも悪い結果となった。なぜ、悪い結果となったと言えるのかというと、領土問題の解決を進展させる話題は一切なく、他方、ロシアが望んでいた経済協力は、しっかりと合意が成立したからである。
 一番おかしな話は、日ロ双方で、北方四島の共同経済活動の実現に向けて協議を開始し、「特別な制度」の仕組みに基づく共同経済活動を推進するという話である。私は、この話を聞いたとき、「安倍首相は、今後、実現不可能な話を実現しようと考えている。これではダメだ」と感じた。仮に安倍首相が、本気で、雲をつかむような計画を実現可能と考えているのであれば、考え方が甘すぎる。安倍首相の賞味期限は、相当近くまで至っていると思わざるを得ない。ここで、「賞味期限」という言葉を使ったが、換言すると安倍首相には今後期待できないという意味である。
 しかも、ロシアのプーチン大統領は、仮に将来、両国で平和条約を締結し、歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡すことがあったとしても、島の主権までは日本に渡すということではない、という狡猾な理屈をこねている。
 しかし、主権がロシアに留保されたまま、仮に、歯舞諸島と色丹島が我が国に引き渡されたとしても、全く意味がない。普通の考え方では、「島を引き渡す」とは、当然に主権も引き渡すという意味である。ところが、上記したようにロシアは、島は引き渡しても、主権は引き渡すつもりは一切ないというのである。このような詭弁を弄して何とも思わないプーチン大統領を信用することは極めて危険である。
 主権がないということは、裁判権、行政権及び立法権は、全部ロシアにあるという意味である。例えば、何十年か後に、色丹島が我が国に引き渡されたが、居住するロシア人と日本人の間に事件が発生したとする。この場合、ロシアに主権があるということは、ロシアの法律に従って訴訟手続を行うということであり、裁判官もロシア人が務めることになる。
 そのような状況下で、日本人とロシア人との間に発生した事件又は紛争に対し、果たして、公平な司法判断が下されるであろうか?私は、ほとんどの場合、ロシア人にとって有利な判決が出ると予想する。そのような島に日本人が仮に居住することができたとしても、その生活は決して快適なものではなく、昔風に考えれば、植民地に居住する支配下国民と実態は何も変わらないというべきである。
 ロシアという国は、ウクライナ紛争でも分かるとおり、仮に遠い将来、北方領土のうちの歯舞諸島と色丹島が我が国に返ってくることがあったとしても、島の中でロシア人が「国民」としての資格で生活できる限り、いったん何か紛争が発生すれば、武力で事態を解決してくる可能性が極めて強い。現にウクライナの領土であったクリミア半島は、今では、戦争の結果、多数を占めるロシア系住民が支配する独立地域となっている。したがって、仮に遠い将来、歯舞諸島と色丹島が主権をロシアに留保されたまま返還されたとしても、そのような状況は、我が国にとっては100%無意味なのである。
 なお、旧島民の自由な往来を実現したいという希望を旧島民が有していると聞く。気持ちは分かるが、一体、どのような法的立場で島を訪問するというのであろうか?
 島に渡ったとしても、果たして自由な経済活動をすることができるのであろうか?仮に許されるとしても、主権が我が国に認められる可能性は、当面のところゼロである以上、あくまでロシア法の規制を受けた活動となる。結局、旅行者としての立場で訪問するのと大差ない。であれば、そのようなことにどれほどの意義があるのか、大きな疑問が生じる。
 以上、主権を伴わない北方領土の返還は、我が国にとって全く無意味である。今回、ロシアのプーチン大統領は、仮に遠い将来、平和条約が締結されて歯舞諸島と色丹島が日本に引き渡されることがあったとしても、主権は譲らないと明言しているのである。そうであれば、今回、安倍首相がロシアに約束した3000億円もの経済協力は、ドブに捨てた「死に金」と同じであると断定してよい。
 つまり、今回、安倍首相が行った選択は、歴史的に見た場合、太平洋戦争における真珠湾攻撃のように、我が国の歴史に大きな禍根を残したものと言うほかない。完全に間違った選択をあえて実行した安倍首相には、そろそろ退陣を願うほかない。
 私個人としては、択捉島は完全にロシアに帰属させ、他方、国後島、歯舞諸島及び色丹島は完全に我が国の領土として明確に分割するという案を実現するほかなく、共同経済活動という意味不明なアイデアにはあくまで反対する。

日時:15:54|この記事のページ

「判例からみた労働能力喪失率の認定」(新日本法規出版)が来年出ます

2016年12月09日

 当事務所では、長年にわたって交通事故訴訟を中心に業務を行っている。
 交通事故訴訟の本質は、一言で表すと、不法行為による損害賠償請求という性格を持つ。もちろん、人身事故においては、自賠法という法律が適用されるため、民法の適用が議論となることは比較的少ない。
 人身事故においては、いろいろな点が争点となるが、特に被害者に後遺障害が残ったような事故の場合は、労働能力の喪失率がどの程度のものかを巡って大きな争いとなることが多い。
 この場合、裁判に先立って、被害者請求又は事前認定という方法を経て、自賠責保険又は損保料率機構によって後遺障害の有無と等級が認定されていることが一般の姿である。仮に、障害等級の認定が示されている場合は、自賠法施行令に記載のある労働能力喪失率が、原則的に適用されると考えてよい。
 例えば、ある被害者Aさんに、8級の後遺障害等級が認定された場合は、45%の労働能力喪失率となる。ところが、いざ、被害者が訴訟を提起して、「自分は8級の障害等級認定を受けたのであるから、労働能力を45%失ったのである」と主張しても、加害者側がこれを素直に認めることは皆無に近い。
 被告となった加害者は、いろいろな理屈をつけて、例えば、「45%も労働能力を失っていない。せいぜい27%程度にすぎない」などと言って争ってくるわけである。ここで「争ってくる」という表現をとったが、加害者自身がそのように考えているのではない。そのような理屈を考え出すのは、加害者が契約している損害保険会社の下請け弁護士である。
下請け弁護士は、形式上は、加害者から委任状をもらい、加害者の代理人として行動する。しかし、当の加害者は、自分で弁護士費用を出すわけではなく、弁護士代を負担しているのは全部損害保険会社である。
 下請け弁護士は、損害保険会社からお金をもらう立場にあるため(経済的な従属関係の存在)、実質的には、損害保険会社の意向に従って行動することが通常である。損害保険会社としては、被害者に支払う賠償金が少なければ少ないほど利益があがることになるため、下請け弁護士としても損害保険会社のために、いろいろと頑張って理屈を考え出すわけである。
 問題は、損害保険会社の弁護士がいろいろと理屈を述べた場合、その理屈が裁判所によって認められる確率がどの程度なのか、という点である。これについては、従来から、自賠責保険又は損保料率機構の障害等級認定と裁判所の障害等級認定は、同じであることが多いと言われてきた。しかし、その点に関する確たる資料があるわけでもない。
 そこで、私は、今回、最近出された100判例を分析したのである。
 その結果、全体としては、自賠責保険又は損保料率機構の等級判断と、裁判所の判断が一致しているものは5割強であり、5割弱のものは、不一致という結果が出た。今回の調査結果は、「判例からみた労働能力喪失率の認定」という本となって、来年の春に新日本法規出版から発売される予定である。
 ただし、ここで言う「不一致」とは、必ずしも、自賠責保険又は損保料率機構が判断した等級よりも裁判所が判断した等級の方が軽かったということではない。自賠責保険又は損保料率機構によって比較的軽い等級認定を受けたもの(12級~14級)については、逆に重い等級認定が裁判所によって行われているものが散見された。
 もっとも、今回の分析は、たかだか100判例の分析にすぎないため、より正確なデータを得るためには、少なくとも500程度の判例を対象とする必要があるのではなかろうか。
現実の交通事故裁判を見た場合、仮に主張しても時間の無駄であって、結果として裁判官の負担増になるだけの、不合理な主張が加害者側の弁護士から出されることが多い。この場合、担当裁判官としては、無理筋の主張と分かっていても、主張自体は一種の権利行使であるから、原則的に止めてもらいたいと言うことはできない。後は、事実認定を間違いなく行って判決を書く苦労が残るだけとなる。私としては「ご苦労様」と言うほかない。
 私としては、双方の弁護士とも、無理・無駄な主張を行うことに時間と労力を費やすことは、いい加減止めにすべきと考える。まともな争点に絞って短期間のうちに主張立証を済まし、その後は、裁判官の示す適切な和解案を双方が受諾することによって、事件を早期に解決する方が生産的であると思うが、いかがであろうか。

日時:16:29|この記事のページ

産経新聞による「ヤルタ密約に英疑念」の報道に接して

2016年12月07日

 2016年12月6日付けの産経新聞の記事によれば、ロシアが北方領土の領有を正当化する根拠のうちで、一番先にあげるのが「ヤルタ密約」の存在であるという。
 ヤルタ密約については、高校の歴史の教科書でも写真が掲載されているので、歴史を勉強したことがある人々には記憶があるのではなかろうか。1945年の2月にクリミア半島のヤルタにおいて、3人の首脳会談が開催された。すなわち、アメリカ大統領のルーズベルトが中央に座り、その左右に、イギリスの首相であるチャーチルとソ連の首相であるスターリンが並んで座り、3人で何やら話し込んでいる姿を写した写真である。
 今回分かったことは、英国政府が、第二次世界大戦が終了した直後の1946年2月には、ヤルタ密約の有効性について疑義を有していたということである。
 歴史的事実として、当時、アメリカの大統領であったルーズベルトは、当時のソ連の対日参戦の条件として、当時、我が国の領土であった樺太、千島列島の領有を認めるという条件を出し、当時、スターリンは、この提案に狂喜したという。
 ところが、ヤルタ密約は、ルーズベルトが大統領としての正当な権限に基づくことなく署名したものであって、アメリカ上院の批准もなかった。そのため、1953年に大統領となった共和党のアイゼンハワー大統領は、あらゆる秘密協定を破棄すると宣言し、その後も、1956年には、アイゼンハワー政権は、ヤルタ協定はルーズベルトが個人として行ったものにすぎず、アメリカ政府の公式文書ではなく無効である、との国務省声明を出すにいたっている。つまり、冷戦が既に始まっていた1956年には、アメリカの公式見解は、ヤルタ協定は無効であり、よってソ連による北方領土の占有には法的根拠がないことを確認しているのである。
 3当事国のうち、アメリカの態度は上記のようなものであった。英国政府は、前記のとおり、1946年2月に、既にヤルタ協定の有効性について疑義を持っていたことが分かったのである。
 実は英国政府は、それよりも前の1941年の8月には、米国とともに、領土不拡大の原則をうたう大西洋憲章に正式に署名している。「領土不拡大の原則」とは、簡単にいえば、戦勝国といえども敗戦国の領土を奪ってはならないという原則であり、少なくとも、西欧民主主義の国家であった米国と英国はそのような原則を遵守するという立場をとっていたのである。
 ところが、当時のソ連は、自由平等の民主主義国家などではなく、独裁者スターリンの率いる共産主義国家であって、最初から、米英と価値観を共有する立場にはなかったのである。スターリンは、20世紀における3大悪人の一人といわれており、国内・国外の多くの人間の命を奪ってきた、まさに大悪人である。(なお、3大悪人とは、ソ連のスターリン、ナチスドイツのヒットラー、中国共産党の毛沢東の3人を指す)。
 そもそも我が国は、ヤルタ協定の締結当事国ではないから、そのような密約に拘束されるいわれはない。また、我が国は、確かに、1951年のサンフランシスコ講和条約を締結し、千島列島に対する権利を放棄しているが、ここでいう「千島列島」には、我が国固有の領土である択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島は含まれていない。
 さらに、ソ連は、講和会議に出席したものの、この条約には署名していない。したがって、ソ連との関係でいえば、サンフランシスコ講和条約の内容は、日本とソ連(ロシア)を法的に拘束しないのである。したがって、ロシアによる北方領土の占有は、明らかな不法占拠である。
 今月には、ソ連を継承したロシアと、我が国との日ロ首脳会談が山口県で開催される。
 ロシアという国は、力の信奉者であるから、正当な根拠があろうとなかろうと、自らが強権を行使することによって、自国に有利になるよう国際紛争を解決しようとする。
したがって、対ロシア交渉においては、いくら我が国が、その歴史的正当性を力説しても無駄であろう。効果があるのは、ロシアにとって大きな利益が生じる条件を我が国が提示した場合に限定されるであろう。しかし、我が国が、仮にそのような条件を提示したとしても、北方領土が早期に帰ってくる保障はないのである。

日時:15:45|この記事のページ

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