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弁護士日記

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名古屋市選挙管理委員会委員の個人責任

2010年10月27日

 名古屋市の河村市長が旗振り役となって始まった今回の名古屋市議会の解散請求については、先般、解散請求に必要な数を上回る有権者の署名が集まったと新聞報道され、河村市長の描くトリプル選挙の可能性が一時は高まった。
 ところが、思いもよらない裏技が出た。署名の有効性に疑問があるという理由で、名古屋市選挙管理委員会が、署名の有効性を確認するため、審査期間をなお1か月間延長することを決めたのである。
 もちろん、署名が仮に無効であれば、当たり前の話ではあるが、有効な署名とは認められず、解散請求に必要な数を上回ったかどうかの点にも疑問を生ずることになる。
 問題は、署名簿を各区の選挙管理委員会に提出してから、その有効・無効を審査する期間について、法律はどのように定めているかということである。今回の議会の解散請求に関する条文は、地方自治法76条に規定がある。そして、同条4項は、地方自治法74条の2から74条の4までの規定を準用していることから、当該条文を参照する必要がある。
 そして、地方自治法74条の2第1項は、解散請求者の代表者は、署名簿上に署名・捺印がされた者が、選挙人名簿に登録された者であることについて、市町村の選挙管理委員会(ただし、政令指定都市の場合は区選挙管理委員会)に対し、証明を求めなければならないと規定する。
 また、同項は、証明を求められた市町村選挙管理委員会は、証明を求められた日から20日以内に審査を行い、署名の効力を決定し、その旨を証明しなければならないと規定する。
 今回、新聞報道によれば、10月19日に、名古屋市選挙管理委員会の委員4名及び市選管の事務局長らが、受任者欄が空白の署名簿に記載された約11万4千人分の署名を有効と認めるか否かについて議論を行い、その結果、本人確認をする必要があるとして審査期間の延長を決めたという。その際、朝日新聞の10月21日(朝刊)の記事によれば、選挙管理委員会の委員は、署名の有効性を判断するためにはすべて調査する必要があると主張したのに対し、事務局側は市民の反発を懸念して反対したとされる。注目点は、次の箇所である。「委員側が責任を取ると押し切り審査延長を決めた」という箇所である。
 仮に、この報道どおりの事実関係があったとした場合、これは極めて恣意的な措置であって、その裏には、何らかの政治的意図を感じざるを得ない。まさに、無理が通れば道理が引っ込むという事態が生じたのである。
 ここで、仮に、「責任を取る」と委員が発言したことが事実とした場合、では、いかなる形で具体的に責任を取るつもりか?という点である。委員個人らはどう考えているかは知らないが、単に、委員を辞任するというような生易しいことで済む話ではない。
 以下、私見を述べる。
(1)審査期間は、「20日以内」と地方自治法の明文で規定されている以上、その例外はあり得ない。「本人確認が必要」であろうとなかろうと、行政機関である名古屋市選挙管理委員会(以下、「名古屋市選管」という。)は、20日以内に結論を出す法律上の義務がある。そのことを、地方自治法は命令しているのである。したがって、今回の審査期間延長を決めた措置は、完全に違法である。
(2)名古屋市選管は、いわゆる行政委員会の一種である。名古屋市選管は、地方自治法で認められた権限を行使するに当たり、河村名古屋市長の指揮を受けない。また、名古屋市選管委員は、特別職の公務員である。
(3)国家賠償法1条1項は、公権力の行使に当たる公務員がその職務を行うに当たり、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が賠償責任を負うと規定する。名古屋市選管委員は、同条にいう「公務員」に該当すると解される。また、同条でいう「過失」とは、最高裁の平成5年3月11日の判決によれば、職務上尽くすべき注意義務を尽くさなかった場合を指すと考えられているから、名古屋市選管委員が審査期間延長を決めた措置には、過失が認められると解される。
(4)そして、名古屋市選管が決めた「審査期間延長決定」も公権力の行使に当たる。その結果、第三者が損害を受けた場合は、名古屋市に対し、損害賠償を請求できる。なお、損害賠償の中には、経済的損害のみならず精神的損害も含まれる。
(5)仮に、名古屋市が、第三者である市民などに訴えられて敗訴した場合、名古屋市は、国家賠償法1条2項に従って、今回の違法な措置を決定した名古屋市選管委員に対し、求償することができる。ただし、求償の要件として、公務員つまり名古屋市選管委員に、故意又は重過失が認められる必要がある。しかし、今回の審査期間延長の措置は、違法なものであることが明らかである以上、名古屋市選管委員に対する求償は、十分に可能であろう。
(6)要するに、名古屋市選管委員は、後日、個人の懐から損害賠償金を名古屋市に支払うはめになる可能性が高いということである。その場合、「晩節を汚した」という個人的マイナス評価も終生付きまとうことになろう。

日時:13:28|この記事のページ

交通事故の解説書の原稿を書き上げた

2010年10月06日

 今回私が企画したのは、交通事故に関する基本書である。私は、過去に、技術書院という出版社から「交通事故賠償問題の知識と判例」という解説書を出させていただいたことがある(2004年5月)。昨年は、この本の初版を出してから相当の期間が経過したので、その改訂版を出そうと考えていた。
 ところが、出版元の会社が出版不況のために倒産してしまった。そこで、私は、改訂版を出していただける出版社を探した。すると、幸いにも、今年の3月上旬に、すぐに引受け手が見つかった。東京に本社がある大成出版という会社である。大成出版からは、わざわざ、名古屋の当事務所まで、常務取締役のほか2名の方が来られた。そして、その場で話が決まったのであった。
 今回の本は、前回私が出した本の改訂版ということで執筆作業が始まったのであるが、実際に出来上がった原稿を読むと、決して改訂版ではなく、むしろ別の本という表現の方が正確ではないかと思った。原稿の執筆は、今年の4月下旬に始まり、今年の9月末日に完成した。執筆期間は、形式的には、5か月であるが、途中、私の体調不良で執筆を休んだ期間が1か月弱あったので、実質的な期間は4か月強であった。
 本の構成は、本文のうち、第1編が交通事故の責任論であり、約90頁である。同じく第2編は損害論であり、約160頁である。両方合わせて約250頁となっている。
 また、資料は、約30頁弱である。これに、目次および索引が付くので、完成後の本は、頁数が全部で約300頁となる予定である。
 本の内容は、人身事故に関する法律上の諸問題を扱っている。実務の動向を忠実に表す下級審判例についても、最新の判例を多く掲載した。掲載した判例の原本は、ぎょうせいから出ている「交通事故民事裁判例集」である。交通事故民事裁判例集に掲載されている何百もの判例について、自分の目で直接見た上で、その内容を理解し、その要約を、今回の企画にかかる本の原稿に書き入れるという作業は、本当に苦しい作業であった。
 しかし、そのような苦しい作業を経て、今まで自分ではよく分かっていたつもりの論点についても、より深く問題点を掘り下げることができた。また、最新の情報に接することによって、実務の動向を的確に把握することができた。
 最後になったが、今回の本は、ある程度の法律知識や実務上の決まり事を心得ている方々のために書かれたものであり、まったくの素人さん向けの本ではない。したがって、想定される読者としては、例えば、交通事故の賠償問題に直面している方々、登録したての若手弁護士、損保会社の担当者、自治体の交通事故相談担当者の方々などがこれに該当するのではないかと考えている。
 本の完成時期は、来年の1月上旬の見込みである。本が完成したら、またその時点で紹介をさせていただこうと考えている。今は「乞うご期待」といったところであろうか。

日時:17:03|この記事のページ

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