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弁護士日記

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「恥ずかしい」という以外にない日弁連会長声明

2021年12月21日

 報道によれば、法務省(国)は、2021年12月21日、死刑囚3人の死刑を執行したと発表した。これに対し、日弁連の荒会長は、死刑執行の事実に対し抗議を行い、死刑制度の廃止まで死刑の執行を停止するよう求めたという。
 この報道を聞いて、荒会長がこのような声明を出したこと自体、非常に恥ずかしいと感じた。もっとも、日弁連がこのような声明を出すことは、これまでの行動歴から、当然想定されることであり、驚きはない。しかし、大多数の国民から見た場合、「弁護士の全員がそのような偏向した考え方に染まっているのか」と思われることは、個人的には非常に恥ずかしいことである。私も同類と勘違いされる危険があるからである。
 私は、死刑制度を今後も堅持すべきであり、むしろ死刑の執行を迅速に行うべきであるという考え方をとっている。もちろん死刑制度についてはいろいろな考え方があるはずであり、各人は、自分が正当と思う見解を述べることが権利として保障されている。私は、昔から死刑推進派であるから、今回の日弁連会長声明は全く評価しない。つまり、日弁連会長の考え方は支持できないということである。したがって、できることであれば、基本的な考え方が相容れない日弁連とは無関係に弁護士業を営むことができれば最良と考える。
 ところが、日弁連は弁護士の強制加入の制度をとっているため、日本で通常の弁護士業を営もうとする者は、例外なく日弁連に加入することが義務付けられているのである。そのため、すべての弁護士は日弁連と手を切ることはできない。
 そのような制度下にあって、今回のような政治色を帯びた、死刑廃止を求める間違ったメッセージを会長が公表することは迷惑千万という以外にない。特に問題なのは、「世論調査をよりどころに死刑制度の存置を正当化することは許されない」と述べたといわれる点である。仮に報道のとおりの声明を出した事実があるとした場合、このような考え方こそ許されないというべきである。考え方が根本から間違っているからである。以下、理由を示す。
 まず、死刑は現行の刑法9条が明文で規定している適法な制度である。最高裁判決も死刑制度が憲法違反であるとの判断を示したことは過去にない(つまり死刑制度を肯定している。)。今回、法務省(行政府)は、前記のとおり、適法な制度である死刑を執行した。刑事訴訟法も475条2項において、法務大臣が命じた死刑の執行は、判決確定の日から6か月以内にこれを執行しなければならないと明文で定める。
このように今回の死刑執行は、国家の三権力である国会(立法)、裁判所(司法)および行政が法律に則って適法に行ったものである。
 日本国民もまた、世論調査の結果、圧倒的多数は死刑制度を肯定しているという結果が現に出ている。つまり、多数の善良な市民(被害者)に対し、放火・殺人の凶悪犯罪行為を行った極悪人(真犯人)は生かしておくわけにはいかないのである。
 このような大多数の日本国民の感覚は極めて自然のものというほかない。民主制は、基本的に国民の意思を尊重する思想であり、この民意に基づいて国政(立法・司法・行政)が遂行されることは当たり前のことである。換言すると、国民は、死刑制度を堅持することを国に対して求めており、国はその正当な民意を尊重して今回の死刑執行を行ったということである。よって何ら問題はない。
 ところが、日弁連を代表する会長だけは、何を勘違いしているのかは知らないが、民意をよりどころにして死刑制度を存置することは許されないなどと、あたかも気楽な評論家のような異議を唱えている。この御仁は果たして本心からそのように考えているのであろうか。仮にそうだとしたら、実に恥ずべき姿という以外にない。
 日弁連がこのようなことを続けていたら、国民の正当な意思を尊重しない団体であるという意識が定着し、今後、国民の支持を失い、結果、弁護士制度全般について悪い影響が生じるかもしれない。唯我独尊的な態度もほどほどにすべきである。

 

日時:19:03|この記事のページ

日弁連ライブ実務研修を受けた

2021年12月17日

 2021年12月15日・16日の二日間にわたり、各2時間、日弁連ライブ実務研修を受けた。場所は岐阜県弁護士会の会議室の中である。
 テーマは、「新しい土地法制の解説」であった。研修会の講師は、法務省の法制審議会において改正作業に従事された実力派の弁護士の方々であり、総勢3名である。事前に岐阜県弁護士会の事務局の方から、コロナ対策のため研修を受けられる参加者の定員は15名という通知があったので、定員オーバーになる前に申し込みをしようと考えた。そして初日の15日の定刻10分前に会議室に赴くと、私以外には誰もおらず、やや拍子抜けした。
 コロナ対策のため、会議室の窓が少し開いており、やや寒かったが、研修を受けて新しい知識を獲得するのが一番重要であり、寒さなど何ともなかった。研修開始時刻になって数名の弁護士が入室してきた。しかし、参加した弁護士は、私を含めて合計しても4、5名にとどまっており、やや戸惑った。土地法制という国民に身近な非常に重要なテーマなのであるから、弁護士の関心も、もう少し高くてもよいのではないかと思ったからである。
 さて、研修の内容であるが、初日は、相続制度の改正、共有制度の改正および相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する新法の解説であり、二日目は、相隣関係の改正、所有者不明土地等管理制度・管理不全土地等管理制度についての改正および不動産登記法の改正に関する解説であった。
 いずれのテーマも非常に重要なものであり、今後、改正法が施行されると、それ以降は改正法による規律が実施されることになる。したがって、例えば、一般市民から法律相談を受けた弁護士も、改正法の内容を踏まえて回答ないし助言をする必要が生じる。仮に法律が改正されたことを忘れて、間違った回答・助言をした場合は、いわゆる「弁護過誤」ということになり、その弁護士自身に法的な賠償責任が発生するおそれも生じる。
 今回の改正内容は多岐にわたるため、ここですべてを紹介することはできない。そこで、ここでは共有制度についてのみ紹介したい。所有権の共有とは、所有権を共同で所有しているという状態を指す。単独所有の場合は、所有権者である一人の者が、自分の一存で自由に所有物を使用したり、あるいは処分することができる。
 これに反し、共有物の場合は、複数人からなる共有者(共有持分権者)が存在するため、合議をして決定する必要がある。ここで、合議をして決定するに当たり、共有者全員の同意つまり承諾が必要か、あるいは過半数の同意(賛成)で適法に決定することができるのか、という問題を生ずる。
 従来の民法によれば、共有物を「変更」しようとした場合は全員一致が必要とされたが、「管理」にとどまる場合は、共有持分権者の過半数の同意でよかった。しかし、従来から、変更と管理のいずれに当たるのかが必ずしも明らかでない場合があった。そのため、客観的には管理に当たる事柄であっても、もしかすると変更に当たるのではないかとの疑念が生じ(この場合は全員一致が必要)、結果、共有物の円滑な利用が妨げられる事態も生じた(上記研修テキスト9頁参照)。
 そこで、改正法は、従来の変更を二つに細分化し、変更(軽微なものを除く)と軽微な変更に分け、前者の変更については従来どおり共有持分権者全員の同意を要するとした。他方、後者の軽微な変更については、広い意味の管理の概念に含めるものとした。その結果、軽微な変更については、共有持分権者の過半数の同意で足りるとされた。
 具体的には、共有物の形状・効用を著しく変更する行為は「変更」に該当するが、著しく変更しないものは「管理」に当たるとされた。例えば、共有持分が均等状態の共有者A・B・Cが共有する農地を転用し、非農地化しようとする場合は土地の形状・効用が著しく変更されるので、「変更」に当たり、3名が一致して賛成する必要がある。他方、これまで水田として長年にわたって利用してきた農地(田)を畑に変える行為は、単なる「管理」に当たると考えるのが相当であろう。すると、この場合は、3名のうち2名が賛成すれば適法となる。
 今回の改正法が施行されるまでにはやや時間がある。それまでに、立法の内容を十分に咀嚼し、間違いのないよう対処したい。とりわけ、農地法を所管する農水省(本省)の職員は、採用の時点で必ずしも司法試験にも合格しているわけではなく、法律的には素人の域を出ない(法律家ではない)。今回の民法等の改正をうけて、今後農地法を改正しようとする際は、間違っても民法等の基本を誤解して不適切な農地法改正を招来しないよう、今から猛勉強する必要があろう。

日時:14:33|この記事のページ

ダメな弁護士の見分け方

2021年12月13日

 弁護士登録をしてから既に30数年が経過し、最近では、かつてのような活発な活動は控えている。理由はいろいろあるが、私の持論である「ベテラン弁護士がいつまでも第一線で大きな顔をしているのは良いことではない」という考え方が基盤にある。人間の寿命は限られている。またそれぞれの仕事における最盛期という概念もある。ベテランは、順番に若手に道を譲り、譲られた若手が、それぞれの職業において今までよりも良い成果をあげることによって、脈々と伝統が守られるということである。したがって、いつまでたっても自分がスポットライトを浴びて目立つことしか念頭になく、若手に対し活躍の場を譲ろうとしない老人は、「老害」という有害な存在でしかない。
 話が本論から逸れたので元に戻す。普通の人が弁護士に何か事件の解決を依頼しようとした場合、一体どの弁護士が有能なのか見分けがつかないという悩みがあるのではなかろうか?弁護士を探そうとして法律事務所のホームページを見ても、どの弁護士もすべて好いことしか掲載していない。ホームページは宣伝媒体であるから、都合の悪いことは一切載っていないのは、ある意味当然である。
 昔から、他人から評判を聞いて、できる弁護士か否かを見極め、依頼するという方法があった。今ではそのような方法は余り利用されていないように思える。ここで、一つの方法を提案したい。
 まず、第1に、自分が解決して欲しいと思っている事件が何か高度で専門的な知識を要するような事件である場合、「何でも屋」の弁護士に依頼するのは止めた方が無難であろう。やはり、専門分野に詳しい弁護士に依頼するのが正解と言える。
 第2に、一般的な事件の場合は、まずは依頼しようと思った法律事務所で有料法律相談を受けてみてはどうであろうか?有料相談を受けた結果、回答者である弁護士が信頼できそうな人物である場合は、その人物に依頼することでよいのではなかろうか。信頼できるか否かを見極めるには、いろいろと質問をしても、嫌な顔をせずに誠実に答えてくれる弁護士であるか否かで大半は分かる。また、その弁護士に、日頃仕事を処理する上でどのようなポリシーで臨んでいるかを確認することも良いであろう。
 ただし、法律知識もろくにないのに、ニコニコと愛想だけが良く、自信ありげに「私にお任せください。最高の結果を出すことをお約束します」などと調子よく話す、いわゆる「客あしらいがうまい」だけのダメ弁護士か否かの点は慎重に見極める必要はあろう。
 私だったら、仕事の速度、つまり事務処理速度に注目する。昔から、弁護士業界では「仕事の遅い弁護士に有能な弁護士はいない」という言い伝えがある。ある意味、当たり前のことである。
 例えば、解決するのに時間も労力も余り要らないはずの事件であるにもかかわらず、解決までに時間がかかりすぎる弁護士がいる。原因は、例えば、平均的な弁護士であれば、1時間で依頼者の側の主張を要領よく書面にまとめることができるのに対し、無能な弁護士の場合は、同じことをするのに2倍の2時間(または3倍の3時間)を要するためである。
 したがって、事件が解決するまでの時間も2倍、3倍とかかることになるのである。普通の標準的弁護士であれば1か月の期間内に書面を完成することが十分に可能であるのに対し、ダメな弁護士の場合はその締め切りにすら間に合わない。いつまでたってもまともな書面が出てこない。要するに、頭のスペック(能力)が不足しているのが根本原因である。あるいは金儲け主義の、やる気が全くない悪徳弁護士である可能性もある。
 依頼者の側に立った場合、同じ結果が出るのであれば、早く結果が出た方が良いに決まっている。なぜなら、訴訟にしろ、民事調停にしろ、解決するまでの期間は一定の緊張を強いられるからである(結果、本業がおろそかになる危険がある)。また、弁護士に依頼している期間が長くなれば、費用も余分に多くかかるおそれがある。
 このように事件の処理は迅速が第一である。ただし、何でもかんでも早ければ良いということではない。依頼者にとっては、「納得」という要素も重要だからである。納得するまでに、一定の時間がかかっても、それは仕方がないと言えよう。
 ただし、昔から「正しく勝つ、また、正しく負ける」という格言もある。単に法律論だけではなく、その解決(結果)が社会常識ないし条理に合致していることも重要だということである。
 仮にたまたま無能な裁判官が事件を担当した結果、負けるべき事件の当事者が、間違って勝ってしまった場合、大半の人は、判決が出た時点では、大喜びの気持ちになるはずである。しかし、そのような判決は、控訴審で修正される可能性が高い。また、控訴審で逆転敗訴とはならないとしても、和解(引き分け)で終結することになる可能性が大きい。さらに、仮に控訴審で勝訴が確定したとしても、負けた方からは一生恨まれることになり、後味は良くない。
 一般人が弁護士に事件を依頼するときは、その弁護士の性格、人格、経歴、学歴、発言内容などを総合的に評価することが肝要と言えよう。着手金の額が妥当な範囲に収まっていることも、もちろん見逃せない。

日時:19:09|この記事のページ

農地賃貸借と離作料(農地法ゼミ第4回)

2021年12月09日

1 長年にわたって農地の賃貸借関係が継続してきたが、これを解消しようとした場合、原則として都道府県知事の許可が必要となる。しかし、例外として、書面による合意解約の場合は許可が不要となり、通常この方法がとられることが多い(法18条1項2号)。
この方法は、農地を賃貸人に引き渡す期限(返還期限)の前6か月以内に成立した書面による合意解約という手法による。例えば、ある年の12月1日に返還期限を設定した場合、その半年前に当たる6月1日以降に書面による合意が成立している必要がある。
 このように賃貸人と賃借人の間で、賃貸借の目的物である農地を賃借人が賃貸人に返還する場合、統計資料を見る限り、ほとんどすべての場合に対価なく無償で返還が行われている。
2 ところが、農地の返還に当たって、賃借人が賃貸人に対し、離作料(離作補償)を請求することがある。しかし、離作料というものは、法令で認められた制度ではなく、賃借人において賃貸人に対し当然のように支払いを求めることができる権利を有しているわけではない。
 また、離作料の本質については、農業経営上の損失補償または賃借権消滅の対価という分析が一般的である。
 では、なぜ離作料というような慣行が存在しているのか。それは、賃貸人が農地の返還を求めているのに対し、一方、賃借人がこれを拒んでいるような場合に、同人に任意に同意してもらうための対価(承諾料)ということになる。
 双方が交渉をして、離作料の金額について合意に至った場合、賃貸人は賃借人に対し当該離作料を支払う。一方、賃借人は、賃貸借契約の合意解約書に署名(または記名押印)をする。そして、返還期限までに賃借人は賃貸人に対し、賃貸借の目的物であった農地を引き渡す。仮に賃借人が約束を破って農地を任意に返還しようとしない場合、もちろん賃貸人は賃借人を訴えて農地の引渡しを求める訴訟を提起して勝訴することが可能である。
3 次に、双方が交渉をしたが離作料について合意に至らなかった場合はどうなるであろうか。仮に賃貸人において農地の返還を求める相当の理由があり、可能な限り農地を返還して欲しいと考えているような場合は、農地法18条に従って許可を受ける必要がある。許可権者は原則として都道府県知事であるが、地方によっては、許可権限が自治体(市町村)に移譲されていることもある(この点は確認が必要である。)。
 ただし、許可を申請すれば、必ず許可を受けられるということではなく、法の定める許可要件を満たす必要がある。許可要件(許可基準)には6つのものがある。本件のような場合に適用が考えられるものとして4つある。①賃借人に信義則違反があったような場合(法18条2項1号)、②農地を転用することが相当な場合(同2号)、③賃貸人の自作を相当とする場合(同3号)、④その他正当の事由がある場合(同6号)である。
 仮に許可申請が上記のいずれかに該当したとしても、許可権者において、許可を出すための条件(ただし、ここでいう「条件」は、民法の定める条件ではないことに留意)として、申請者に対し離作料の支払いを命ずることがある。その性格は、行政処分の付款の性質を持つ。より正確にいえば、行政処分(許可処分)に付加される特別の義務である(このような義務は行政法学では「負担」と呼ばれることが多い。)。
 この場面では、許可権者は、申請者に対して許可を行うが、同時に許可を受けた者(申請者)に対し、離作料を賃借人に対して支払うことを命ずるわけである。許可が出された場合、許可を受けた賃貸人としては、賃借人に対し、適法に賃貸借契約の解約申入れを行うことができる。解約申入れを行ってから1年を経過することによって、当然に賃貸借契約は効力を失うことになる(民617条1項1号)。
4 ところで、許可権者が農地法18条の許可を求める申請があった場合に、果たして離作料の支払いを義務付ける付款を付けるべきか否か、あるいは仮に付けることが相当と考えられる場合であっても、具体的にどのように離作料の金額を算定すればよいのかが問題となる。
 そもそも、離作料については次のようなことが指摘できよう。賃借人は賃借権を有しているところ、確かに賃借権も一つの財産権であることから原則としてそれなりに尊重されるべきである。しかし、農地法が民法の原則を超えて賃借人の地位を手厚く保障しているのは、現に耕作に従事して農業生産を行い、またそれによって自分自身の生計を維持しているという状況を前提としているからであると解される。そのような耕作者についてはその地位を守る必要があるということである。
 他方、形式的に賃借権を有していても、現実には全く耕作をせず、長年にわたって事実上耕作放棄に近いような状況を生じさせているような賃借人の場合は、上記の前提を欠くため、賃借人として手厚く保護されるべき根拠ないし理由が欠ける。したがって、このような場合は、許可の付款として離作料の支払いを命ずる必要は原則としてないと考えられる。
5 また、仮に離作料の支払いを命ずることが相当と考えられる場合であっても、賃貸借の目的となっている農地の価格(地価)を基準に、その何割かを離作料として評価するというような考え方は妥当なものとはいえない。なぜなら、離作料を適正に評価しようとする際、離作に伴う農業経営上の損失を適正に補償すればそれで十分なはずだからである。離作料について、地価を基準にしてその何割かを賃借権消滅の対価とするような考え方は、目的農地がどこに所在するかという、農業経営とは基本的に無関係の事情に大きく影響を受ける不合理なものであって、支持できない。

日時:16:29|この記事のページ

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