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弁護士日記

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通行地役権裁判の勝訴判決が確定した

2010年05月20日

 名古屋高裁が言い渡したひとつの判決が確定した。この事件は、私の依頼者である近藤氏(仮名)から依頼され、地裁および高裁と続けて勝訴したものである。紛争が訴訟にまで至り判決で決着することは、ごくありふれたことであって、原則的に話題性はない。しかし、今回、私が近藤氏から依頼を受けた事件というのは、誰が考えてもおかしな事件であった。ありていに言えば、不当訴訟に近いものであった。
 近藤氏は、公務員として長きにわたりあるお役所に勤務をしていた。しかし、定年をそろそろ迎える時期になって、心機一転、自然の豊富な山間地域で余生を送りたいと考えるに至った。そこで、ある業者が売り出した分譲地を購入した(その後、業者は撤退した)。その際、私道には通行地役権を設定した。ところが、先に近隣分譲地を購入して家を建てて居住していた者たちは、管理組合を設立していたのであるが、近藤氏に対し、管理組合に加入するよう勧誘した。しかし、近藤氏は、管理組合に加入するか否かは個人の自由であると考え、これを断った。近藤氏は、大学で民法ゼミにいたこともあって、法的に見て、自分の考え方が正当なものであるということがよく分かっていたのである。
 ところが、管理組合の一部構成員には、この態度が気に食わなかったようであった。そのため、近藤氏が家を建築する際にも、近藤氏が依頼した建築会社にまでメールを送って、管理組合の意向に従わせようとした事実がある。
 裁判は、平成21年の初夏に某地裁で開始された。私は、最初に近藤氏から訴状を見せられた際に、「何だこれは?このようなおかしな訴状は見たことがない。」と思った。同時に、この訴訟は必ず近藤氏に勝訴させる必要があると感じた。
 原告である管理組合の主張は、論理が一貫しない杜撰なものであった。その主張の骨子は、第1に、管理組合は区分所有法65条でいう団地管理組合であり、近藤氏はその構成員であり、管理規約に拘束されること、第2に、近藤氏は、分譲業者との間で管理業務契約を締結した事実があるが、管理組合は管理業務を業者から引き継いでおり、その権利義務を承継していること、第3に、近藤氏が家を建築した際に、付近の道路(この道路は、もともと分譲業者のものであったが、業者が撤退した際に管理組合が無償譲渡を受けている。)を建設業者の工事車両が通行しており、工事車両の通行まで通行地役権に入っておらず、通行したことが不当利得になること、また、近藤氏は自宅から道路側溝に生活用水を流しているが、側溝の設置・保存の費用を分担しなければならない、というものであった。
 これに対し、被告である近藤氏側は、原告の主張は法的に見て通る余地がないものであると反論した。
 このように、原告の主張は、第1、第2、第3というふうに、先に出ている主張が仮に通らない場合は、次の主張を行うという方法である。しかし、一般論として考えても、このような主張のやり方は、主張に余り自信がない場合に、よく見られるパターンである。本当に主張に自信があるのであれば、どれかに絞って徹底して主張を貫き通すべきだからである。
 地裁の判決は、第1に、原告である管理組合に区分所有法65条の適用はないとした。第2に、近藤氏と分譲業者との管理業務契約は既に合意解約されており、それを管理組合が引き継ぐことはないとした。第3に、近藤氏の有する通行地役権は、工事車両の通行を除外するものではなく、また、側溝の設置・保存の費用についても認めなかった。
 その後、一審で敗訴した管理組合は名古屋高裁に控訴して争ったが、控訴審は、一審判決を支持して控訴を棄却した。分譲地を購入した者が分譲地に自宅を建築する際に、工事業者の車両が、施主の通行地役権の設定してある道路を無償で通行できることは当たり前のことである。仮に、これが否定されたら、分譲地を購入する者などいなくなる。高裁判決も「本件通行地役権が、その所有地上に、自己所有の建物を建築するのに必要な期間(常識的に考えても、長くとも6か月程度)、必要な工事車両を通行させる権利を含まないということは、本件通行地役権設定の目的に照らして、通常考え難いし、本件証拠上、この程度の工事車両の通行によって、控訴人が主張するような損害が発生したことを認めるに足りる証拠もない。」とした。

日時:13:23|この記事のページ

物損事故の判決が確定した

2010年05月07日

 名古屋簡易裁判所で出された物損事故の判決が確定した。この事故は、依頼者である川上さん(ただし、仮名)の運転する自家用車と、相手方である岩下氏(ただし、仮名)が運転するトラックが、接触事故を起こしたというものであった。
 川上さんは、一昨年の9月に、二車線の道路の歩道側(第1車線)を職場に向かって名古屋市内を自家用車で走行していた。ところが、後ろから来た岩下氏の運転するトラックが、川上さんが運転する自家用車の右後方から、自車の右側面部に衝突してきたのである。そのため、川上さんの自家用車は、右側面が大きく損傷してしまった。
 裁判での争点は、事故態様であった。当方の主張は、川上車が第1車線を走行していたところ、第2車線を後方から追い上げてきた岩下車が、いわば側面に追突したものであって、事故の責任は全部岩下氏にあると主張した。
 これに対し、岩下氏は、自分は第2車線を普通に走行していたのであるが、川上車が、第1車線を後ろから走行してきて、無謀な擦り抜け行為に及んだものであり、事故原因は全部川上さんにあると主張した。
 裁判所は、過失割合は、川上さんが1割であり、岩下氏の過失は9割であると判断した。判決は、「岩下は、本件事故現場付近において、自車両が走行する車線を、それまでの第2車線から第1車線に変更しようとしたのであるから、このような場合、岩下としては、その進路変更先車線である第1車線の前方、後方及び自車両の真横などの安全を確認してその車線を変更すべき注意義務があるというべきであるところ、これを怠り、漫然と、岩下車両を、第2車線から第1車線に変更しようとした過失により、本件事故を惹起させたものである。そうすれば、岩下の負うべき本件過失には、著しいものがあるといわなければならない。」とした。反面、川上さんの方にも責任の一端があるというべきであるとして、川上さんに対し1割の過失を認めたものである。
 本件事故に関する依頼は、実は、当初、川上さんからT弁護士にあったのであるが、不幸にもT弁護士は病死された。その直前にT弁護士から私に依頼がきたものであった。本件は、双方の主張が真っ向から対立する事件であったが、私としては、ほぼ妥当な判断が出たものと評価している。

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