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弁護士日記

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RSD裁判の判決が出た

2008年10月16日

本年8月4日の弁護士日記でも紹介した事件であるが、交通事故による怪我が原因となってRSDに罹患した被害者の裁判の判決が、本年10月9日に、名古屋地裁の某支部で言い渡された。この事件の主な争点は、原告つまり交通事故の被害者は、今回の交通事故によってRSDに罹患したのかどうかという点と、原告の体に残った後遺障害等級が果たして何級に該当するかということであった。
RSDすなわち反射性交感神経性ジストロフィーは、発生のメカニズムが未だ解明されておらず、しかも、治療が非常に困難な難病とされている。そこでまず、原告の太田静子さん(仮名)が訴えている症状が、そもそもRSDに当たるのかどうかという点について、上記判決は、今回の交通事故を契機として原告にRSDが発症したものと認定した。RSDの最新の診断基準や主治医その他の専門医療機関の多くの医師の見解を基に合理的に考えれば、RSDの罹患が肯定されたことは当然の結論であった。
次に、後遺障害による労働能力の喪失率については、これに先行して自賠責保険が9級10号(労働能力喪失率35%)という不合理な認定を行ったのであるが、上記判決は、これを否定して、7級4号を認定した(労働能力喪失率56%)。原告は、今回の裁判において、5級2号(労働能力喪失率79%)を主張していたのであるが、この主張は退けられる結果となった。それにしても、自賠責保険が、9級10号という認定を示した点は、きわめて杜撰な認定であり、まさに正義に反する認定であった。これについて、上記判決が、7級4号を認めた点は、原告としてはいまだ不十分であるという気持ちはあるものの、しかし、一応の評価に値すると考えている。
損保側の弁護士は、今回の裁判においても、被害者である原告自身の心因的要因が、RSDの発症に影響を及ぼしているから、その分を減額するように裁判所に求めた。しかし、上記判決はこれを退けた。退けられたことは、当たり前と言えば当たり前のことである。心因的要因によってRSDが発症する、という医学的見解は見当たらないからである。今回の裁判に限らず他の交通事故裁判においても、損保会社は、しばしば「心因的要因による損害賠償額の減額」を求めてくるが、このような曖昧で、正体不明の言葉によって、正当な損害賠償額が減額されるようなことはあってはならない。
上記判決は、被告に対し、5000万円をやや上回る金額の支払を命じた。仮に双方が高等裁判所に控訴せず一審判決が確定すると、太田静子さんは、5000万円に遅延損害金を加算した賠償金を受け取ることができる。しかし、ご本人の心中は、お金は要らないから、元の元気な体に返して欲しいということではないか、とお察しする。

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