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弁護士日記

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暴力団員の犯罪には厳罰が必要だ

2022年05月25日

 本日(2022年5月25日)、ネットのニュースを見ていたら、風俗店の無料紹介所で店の紹介を断った紹介所の店員に対し、スコップを使って殴り重傷を負わせた容疑で5人の暴力団員が逮捕されたという。この手の犯罪は、暴力団という犯罪組織をバックとして暴力で他人を従わせようするする悪質な行為であって絶対に許されない。ちょうど、現在、ウクライナでロシアの狂気の独裁者プーチンが武力をもってウクライナに侵略行為を行い、罪もない市民を虐殺し、国民の財産を徹底して破壊し、ウクライナ国内で生産され、ウクライナの農民が所有する穀物を強奪している(強盗行為を行っている)のと本質は同じである。要するに、ロシアの蛮行は、力を背景として他人の生命・自由と財産を奪おうとする卑劣な行為であり、決して許すことはできないし、また、どのような理屈を付けてもこのような犯罪行為を正当化することはできない。極悪犯罪人プーチンが率いるロシアは、いわば「国際社会に巣くう巨大暴力団」であり、徹底して潰す必要がある。しかし、無法地帯と言える国際社会と違って、法が支配する法治国家である日本国内では、暴力を振るうことは刑罰をもって禁止されている。
 では、あってはならない行為が今回の事件のように起きてしまった場合、我々はどのように考えればよいのか?刑法204条は、「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定する。仮に刑法の条文のとおり、この事件を起こした容疑者(犯罪者)が全員懲役15年の実刑判決を受ければ、正義が少しは回復されたという評価となろう。
 ところが、現実の裁判を見ていると、今回の事件を起こした容疑者が初犯者であったような場合、仮に示談が成立すれば、軽い刑罰で終わってしまう危険がある。また、示談が成立せず実刑となってもせいぜい懲役2~3年という信じ難い軽さの刑罰で終わってしまう可能性がある。このようなおかしな結果は、被害者の目から見た場合、到底納得できないであろう。犯罪行為に甘い裁判官が大半を占めているのが悪の現象の根本原因である。
 暴力団をこの世から消滅させるには、いろいろな方法があろうが、一番大事なことは、事件を起こした暴力団員に対し、「この程度の犯罪で、このような重い刑を宣告されるのは、全く割に合わない。酷すぎる、助けてくれー」と思わせることが肝である。したがって、今回の罪について5人が傷害罪の正犯で起訴された場合、担当裁判官は、全員に対し懲役15年を言い渡すべきである。さらに、刑法を改正し、暴力団員(およびこれに類する半グレ集団のメンバーを含む)が事件を起こした場合は、一般人に適用される刑の2倍の量刑とすべきである。傷害罪の場合は、懲役刑の上限は30年とすべきである(また、有期刑の上限についても、刑法14条を改正し、現行の有期刑の上限、つまり長期30年をさらに伸ばし、有期刑の上限は50年~60年程度にまで伸ばすことが望ましい。悪党は、一生刑務所で人生を送れというメッセージである)。
 このように法律を改正するだけで、暴力団員も犯罪の実行行為をすることに相当に重い心理的圧迫を感じ、犯罪に安易に手を染めることが抑制できるのではないか、と考える。そうすれば、日本は今よりも、はるかに安全な国になる。一部の犯罪者を除いて日本国民全員が喜ぶことになるのである。これをしないのは、国会議員の怠慢という以外にない。

日時:18:59|この記事のページ

農地事務担当者研修会in名古屋を終えて

2022年05月23日

 本日(2022年5月23日)、私は、恒例となっている第1回農地事務担当者研修会に講師として招かれ、90分にわたってお話をした。会場は、名古屋市中区にある愛知県自治センターである。この研修会は、愛知県が毎年春と秋の年2回主催しているものであり、講師陣は、東海農政局の職員(1名)、愛知県の職員(計3名)及び私となっている。
 受講者は、愛知県下の市町村農業委員会の担当職員と愛知県の出先機関の担当職員であり、合計すると約100名となる。講義の内容は、年によって多少の違いはあるが、おおむね、農地法3条許可制度、農地転用許可制度、農業振興地域について、開発許可制度について、そして私の担当である農地法の理解に必要な行政法の知識について、となっている。
 この研修は、東海農政局の職員及び愛知県の担当部局の職員が、市町村農業委員会の担当者に対し、実務能力を向上させるために行っているものと理解できる。いわば、許可事務について、その解釈と運用を事実上決定できる職員による許可基準などの解説であり、処分権限を持つ立場にある当局の考え方を知る上で不可欠のものと言い得る。大変意義のある研修である。
 今回私が取り上げたテーマは、「取消訴訟の訴訟要件と国家賠償法上の違法について」という内容と、「行政指導と不作為の違法確認訴訟について」という内容であった。
 前者の処分の取消訴訟については、そもそも訴訟の対象(訴訟物)が処分であることが大前提となっており、処分以外のものを判決で取り消してもらうことはできない。この点が争われることがある。また、取消訴訟について裁判所で本案審理をしてもらうためには、上記の審理の対象が処分であること以外にもいろいろな要件があり、これらをまとめて「訴訟要件」と呼んでいる。訴訟要件を一つでも欠くと、却下判決となってしまう(原告敗訴)。
 また、国家賠償法であるが、違法な公権力の行使をした公務員について、その公務員を雇っている(任命している)国又は地方公共団体に賠償責任が発生する制度である。国家賠償法1条の「違法」が認められるための判断枠組みとして、判例の多くは職務行為基準説を採用していると思われる。公務員が職務を行う上で職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかった場合に「違法」が認められるという考え方である。
 次に、行政指導については、我が国において非常に多用されている仕組みと言える。しかし、便利な「行政指導」については、行政手続法によって、いろいろな規制がかけられており、自由にその手法を使うことはできない。行政指導は、あくまで相手方の任意の協力に期待する制度である。何でもできるわけでは決してない。行政指導に対する法的規制については、それを知っている公務員と、全く知らない公務員では、大きな落差があると思われる。
 県によっては、研修を行うことに余り関心がなく、何かとお金と手間暇のかかる研修会を開催することに消極的な県もあるように思える。職員研修をしなくても大きな実害がこれまで顕在化していなかったため、何も手を打ってこなかったということではなかろうか。しかしこのままでは、各自治体の職員間で執務能力に自ずと格差が生まれることは必然である。であればそれを是正する方向に進むべきである。県政のトップに立つ人物(県知事)の意識改革が急務となる。

日時:22:06|この記事のページ

弁護士法72条の規制と研修会講師業務の関係

2022年05月20日

1 弁護士法72条は、弁護士資格を有しない者(非弁護士)による法律事務の取扱いを禁止している。この規定は、弁護士の資格を持たない者が、報酬を得る目的で、かつ、業として訴訟事件その他一般の法律事件に関し、鑑定、代理等を行うことを禁止している。この規定に違反すると、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられる(弁護士法77条)。
2 立法趣旨は次のようなことである。弁護士として職務を行うためには、原則として、高度の法律知識を要する司法試験に合格する必要があり、また、入会を許された所属弁護士会による規律を受けるなど厳格な行動規範が定められている。これは、基本的人権の擁護及び社会正義の実現という高度の職務を果たすための最低限の条件である。
 ところが、そのような能力と規律を受けない一般人が、仮に弁護士業務を自由に取り扱うことができるとされれば、社会的な安定を損ない、また、法的秩序を著しく乱すことになりかねない。ちょうど、医師免許を持たない者(ニセ医者)が医療行為に従事するようなものである。そこで、弁護士法は、他人の法律事務に介入する資格を持つ者を厳しく制限している。
 ただし、弁護士法以外の法律によって取扱いを認められている法律事務については、その法律の定めるところによる。例えば、司法書士は、他人を代理して登記申請書を有償で作成することができるし、また、作成した申請書を代理人として法務局に提出することもできる。さらに、認定司法書士の場合は、訴額140万円を超えない簡易裁判所の民事訴訟事件について、他人の代理人となることが認められている。
3 弁護士法72条によれば、一般の法律事件について、例えば、鑑定することが原則として禁止される。ここでいう「鑑定」とは、法律事件について法律的な観点から意見を述べることである。例えば、Aという人物が友人Bに金300万円を貸したが、Bが返済期限になってもお金を返済しようとしない場合に、困ったAが、弁護士Cに対し、お金を取り戻すための法的方法を尋ねるような場合がこれに当たる。いわゆる有料法律相談である。
 仮にAが弁護士資格を持たないDに対し法律相談を依頼し、これに対しDが有料で回答したような場合は、Dの行為は、いわゆる「非弁行為」に該当し、違法となる可能性がある。可能性があるとした理由は、Dの行為が「業として行った」ものとは言い難い場合には、つまり反復継続して行うものではないと認められる場合は、非弁行為には当たらないと解されるためである。また、例えば、法学部の学生が、一般市民を対象として定期的に大学の構内で「無料法律相談」を行うこともある。このような定期的な法律相談会の場合、反復継続が予定されていることはそのとおりであるが、しかし、学生による相談会は完全無償であって報酬を得る目的を欠くため、非弁行為には当たらないと解される。
4 では、有料のセミナーにおいて、講師が法律の解説を行うことには問題がないであろうか?法律の解説といっても、具体的な法律問題ではなく、あくまで事例として解説するのであれば問題ないと言える。大学において法学部の教授が、学生に対し授業を行う際に、過去に発生した事件に関する具体的な判例を取り上げて法的評価を交えて解説するのと同じであり、問題ないであろう。
5 では、弁護士資格を持たない講師が、農地法のセミナーを行ったが、セミナーの中で、受講者の方から「今、私の自治体では、かくかくしかじかの問題が起きて苦慮していますが、どう対処するのが正解か、ここで講師の法的見解を示してください」と質問された場合は、気を付けなければならない。なぜなら、そのような質問は、具体的な法律事件(ここでいう「事件」に該当するためには、別に訴訟や調停にまで発展している必要はない。)に関するものであり、しかも、講師の法的見解を問うているからである。その場で講師が答えれば、それは法的見解を開示したということになり、弁護士法72条の「鑑定」に当たることになると解される。講師が弁護士資格を持っていれば、最初から問題となる余地がない。
 しかし、例えば、講師が行政書士の資格しか持っていないような場合、行政書士は鑑定を行う法的資格がないため、いわば素人が法的見解を述べたことになる。しかも、セミナーが有料参加の場合、講師も主催者から所定の講師料を受け取っているのが普通であり、「報酬を得る目的」があったと認定できる。また、セミナーの性格として、受講生から出た同様の質問には原則として回答を行うものとするという方針が示されている場合は、当初から反復継続が予定されているため「業として」行っていると解することができる。
6 以上のことから、セミナーを運営する主体(主催者)は、弁護士以外の者が講師となって法律問題を扱うセミナーを開催する場合は、後になってから「まさか責任を追及されるとは考えてもみなかった」というようなコメントを出すことがないよう、慎重に準備する必要があろう。

日時:20:21|この記事のページ

令和4年5月16日付け岐阜地裁判決に疑問あり

2022年05月17日

1 本日(2022年5月17日)付けの岐阜新聞の記事によれば、昨日、岐阜地裁は、産廃施設許可を取り消すという判決を下したと報道されている。事案の内容はやや複雑であり、仮に弁護士資格があっても、記事内容だけを材料にして短時間で判決の是非を正確に理解することは容易ではないと思われる。そこで、さっそく解説を行う(ただし、手元の資料は上記新聞記事のみであるため評価の正確性には一定の限界があることをお断りする。)。
2 事の発端は、岐阜県が、2009年の11月に岐阜県中津川市内における産業廃棄物処理施設の建設計画について許可処分を行ったことにある。ところが、県は、許可申請者(業者)の説明に誤りがあったという理由で、2010年4月に上記許可処分を取り消した。申請内容に事実と違う点があったので、職権を発動して許可を取り消したというのである(職権取消し)。
 そうすると、そもそも許可時点において瑕疵(違法又は不当な事由)があった可能性が高いと言い得る。職権取消しという行政の自己反省のための仕組みは、もちろん重要な制度であるが、しかし、その実例は余りないのではなかろうか?したがって、2009年に出された許可処分自体が非常にいい加減なものであった可能性がある。平易な言葉でいえば、担当職員が平均的な法律知識のレベルに達していなかったため、安易に許可処分を出したのではないかという疑いが残る(古田知事の下、岐阜県職員採用試験において、昔のように専門知識を尊重・重視せず、「人物本位」という耳障りのよい時代迎合的な採点方法が影響しているのかもしれない。)。
3 上記のとおり、2009年に県がいったんは出した許可を、県自らが2010年になって職権を発動して取り消した。そのことによって、当該許可処分は最初からなかったことになる(白紙、つまり申請時の状態に戻る。)。ところが、申請者(業者)はこれ(つまり取消行為)を不服として行政不服申立てを環境大臣に対して行った。その結果、2013年12月、環境大臣は、上記の取消行為(なお、上記記事では撤回と表示されている。)を取り消した。その結果、法律的には許可処分が存在する状態に戻る。
 しかし、この環境大臣による裁決を不服として、地元住民は、右裁決の取り消しを求めて訴訟を提起したが、結局、2019年3月に住民側の敗訴が最高裁で確定した。その結果、環境大臣の行った上記裁決は適法ということが確定する。その結果、上記のとおり岐阜県知事による申請者(業者)に対する許可処分は有効という状態が未来永劫継続することになる。
4 そこで、住民側は、岐阜県を被告として上記許可処分の取消しを求める行政訴訟(取消訴訟)を提起した。今回、岐阜地裁の鳥居俊一裁判長はこれを認め、住民側が勝訴した。
 しかし、この判決には、次のような疑問点がある。取消訴訟の訴訟要件という問題である。訴訟要件とは、適法に取消訴訟を提起し、裁判として系属するための要件である。訴訟要件が一つでも欠けると、却下判決となる(原告敗訴)。
 その訴訟要件の一つとして、狭義の「訴えの利益」というものがある。換言すると、訴訟の提起及び係属中において、岐阜県知事の上記許可処分を取り消す現実的必要性があることが要件とされる。例えば、違法建築物に対する除却命令が出され、代執行に基づく建物除却工事が完了してしまった場合、除却命令の取消しを求める訴えの利益は失われる、というのが昭和48年3月6日の最高裁の判例である(宇賀克也「行政法概説Ⅱ第6版」216頁参照)。
5 上記新聞記事によれば、「施設は着工されず、予定地は他の業者に売却され、現在は太陽光パネルが設置されている」と言う。一般論として、通常の許可処分とは禁止の解除である。国の法律によって一定の行為を行うことが原則禁止される状態に置かれるが、申請者が個別に許可申請をすることによって、当該法律の定める要件を満たした場合は、許可処分が出て法律による禁止が解除され、自由に活動することが許される。産廃施設についていえば、どこに設置するかという立地条件が、許可処分をするための重要点となっていることは疑いない(対物許可)。
6 そうすると、許可を受けた土地は、現時点では他人の所有物となっているのであるから、最初に許可処分を受けた業者が、少なくとも現在の所有者から当該土地を買い戻すことに成功しない限り、単に、許可書が手元にあったとしても、その地に産廃施設を建設することは不可能という以外にない。そうすると、訴えの利益はもはや存在せず、却下という判決も十分にあり得たのではないかと考えることも可能である(仮に岐阜県が控訴した場合、名古屋高裁の裁判官がそのような立場をとる可能性がある。)。
7 より深く考えると、岐阜県としては、提訴の前に、有名無実となった許可処分を撤回しておけばよかったとも言い得る(ただし、岐阜県知事は、環境大臣による裁決の結果に拘束されるから、撤回処分をすること自体が許されないという議論がある。)。撤回処分は、許可後に新たに生じた事由を根拠として、もはや許可処分をそのままにしておく理由が無くなった場合に行い得る(職権による撤回処分)。処分を撤回しておけば、住民側が訴訟を起こすことを未然に防止することもできたのである(結果、無駄な弁護士費用も発生しなかった。)。
 しかし、年季が入った古田知事の率いる岐阜県の担当者には、そのような知恵は働かなかったようである。事なかれ主義である。そのような現象が起きる原因はいろいろとあるが、一つは、執務上必要とされる法律の基本知識が欠如していることではなかろうか(何か分からないことがあったら、自分で追究するのではなく、その都度東京の霞が関の役人にお伺いを立てれば十分であるという思考停止的な考え方に陥っていた可能性がある。)。今後は、地方公務員たる者、自分の頭だけで適正な判断ができるための法律知識を涵養する必要があろう。岐阜県としても、より多くの予算と時間を割いて県庁内における法律研修を充実させる必要がある。
(追記)
2022年5月21日付けの岐阜新聞を読んでいたら、「中津川の産廃処理施設訴訟」について「県が控訴せず」という見出しが出ていた。記事によれば、古田知事は「当該企業は既に清算されており、本件処分を維持する意味がないため、控訴しないこととした」という見解を述べた。これにはやや驚いた。なぜか?通常、行政が被告とされた行政訴訟においては、仮に一審で負けても、ほぼ全てのケースで控訴して争うのが普通だからである。ところが、今回は一審で負けたがそれで良しという姿勢である。極めて異例の対応である。これは推測であるが、岐阜県の幹部職員は、住民が訴訟を提起した当初から、「この訴訟には負けても仕方がない」と考えていたのではなかろうか?そのように推理しないと辻褄が合わない。前記のとおり、岐阜県は、この「政治案件」に対し関心を払い、もっと早い時期に職権を発動して許可処分を取り消しておくべきであった。そのように適切に対処しておれば、今回の訴訟を招くこともなかったのである。これは古田知事の判断ミスと言えよう。

 

日時:15:33|この記事のページ

世襲政治を打破せよ

2022年05月11日

 昨日の新聞記事を読むと、元国会議員であった山下八州夫容疑者(79歳)が、愛知県警に逮捕されたという事件が報道されていた。昨日5月10日付けの産経新聞及び岐阜新聞によれば、岐阜県中津川市に住む山下容疑者は、現職の国会議員だけに与えられる「JR無料パス」を悪用し、東京・名古屋間の新幹線の往復特急券とグリーン券を騙しとったという。本人は、容疑を認めているとのことである。
 犯罪が発覚したのは、山下容疑者が、国会議員用の申込書に他人(現職)の名前を勝手に記入し(これは私文書偽造罪に当たる。)、それをJR東海(?)の東京駅の駅員に提示して、東京・名古屋間の東海道新幹線特急券とグリーン乗車券を詐取した(これは詐欺罪に当たる。)が、駅員が間違えて片道の切符を2枚発行したため、山下容疑者は、未使用の1枚を名古屋駅で東京行きの切符に交換した。ところが、名古屋のJR東海の駅員が、念のために国会議員用の申込書に記載された国会議員に確認の連絡をしたところ、当該議員は身に覚えがないと回答したようであり、そのため今回の悪事が発覚したというものである。仮に東京駅の駅員が、間違えて切符を発行していなかったとしたら、山下容疑者による小賢しい悪事は、闇のまま見過ごされていたことになろう。
 ここで、報道を見てもひとつ不明なのは、JR無料パスと、特急券・グリーン乗車券の相互関係である。JR無料パスだけを不正使用して得ることができるのは、乗車券(普通乗車券)だけなのか?つまり、特急券とグリーン乗車券を入手するには、別途、申込をする必要があるのか?という点である。仮にそうだとすると、今回、山下容疑者は、申込書に他人の国会議員の名前を記入して新幹線の特急券とグリーン乗車券を手に入れたということになる。
 山下容疑者は、1983年に国会議員となり、2010年の参議院選挙で落選した。すると、落選時から10年以上も経過していることになる。5月10日付けの岐阜新聞によれば、本人は、「落選後も継続的に使っていた」と供述しているようである。不正乗車を長年にわたって続けていたと推測される。
 山下容疑者は、逮捕が明らかになる時点まで、立憲民主党岐阜県連の常任顧問を務めていたようである。今回は、身内が不祥事を起こしたということで、日頃、口やかましい蓮舫議員なども、ほとんど口を噤んでいるように見える。このようなセコイ人物が立憲民主党の岐阜県連の大幹部を務めていたことから、立憲民主党の体質が明るみになったと言えよう。
 思うに、山下容疑者であろうと、あるいは自民党の国会議員であろうと、誰でも表では「国のため、郷土のため奉仕する」「有権者のご支援を得て国政に出させていただいた」などと立派な発言をするものであるが、内心は分かったものではない。特に政治経歴が長くなればなるほど、表と裏の顔に違いが生じてくるのではなかろうか。
 しかも、国会議員には経済的な特権がいろいろと付与されているため、長くやればやるほど「こんなうまみのある商売はない」と、内心ほくそえんでいるのではなかろうか。その証拠に、国会議員という人種は、当選した後は、当選を継続することだけが最大の目標となっていることをあげることができる。なぜ、最大の目標になるかといえば、政治家を継続することが自分個人の(精神的・経済的・社会的)利益になるからである。 
 これが、世襲政治の最大の弊害である。過去数十年にわたり日本社会を停滞させている最大の原因は、世襲政治の蔓延である。自分が現職にとどまり、また、自分の息子に政治家を継がせることが一番の目標となっているため、国家・国民の利益を増進することを可能とする思い切った改革が全くできないということである。
 下手に目立つと偏向マスコミから個人攻撃を受け、次回の選挙で落選させられる危険が生ずる。したがって、正論を主張して落選の憂き目を見るよりは、「黙っていよう」、「余分なことは言わないようにしよう」という保身の論理がまかり通るのである。結果、妖怪のような古だぬきの政治家が幅をきかすことになる。しかし、政治家などという職業は、もっと新陳代謝があってもよい職業である。常に新しい人が出てくるという方が良い。たとえ政治家の経歴が短い者であっても、非常時に、卓越した指導力・政治力を発揮する人間もいる。ウクライナのゼレンスキー大統領がその例である。
 以上のことから、日本を停滞させている世襲政治を打破するためには、国会議員の特権を廃止し、議員報酬も半減させるべきである。仮にそういうことができれば、政治家になってもうま味を得ることがほとんどできなくなるため、真剣に政治を志す青年・壮年層の者だけが、政治家を務めることができる環境が整う。生命エネルギーが枯渇し、国民にとっては毒にも薬にもならない状態に陥った年寄政治家には、一刻も早く完全に引退してもらいたいものである。
 どのような職業でも同じであるが、一定の職業を長く継続することは、芸術家のような一部の例外を除き、良くないことが起こる。良い見本が中・露のような独裁国家である。独裁者は、長期にわたって権力を握っている。そして、大きな顔して死ぬまでその権力にしがみつこうとする。人間として実に醜悪な姿である。老人は、さっさと一線から退場した方が良い。
 以上、国会議員の特権を廃止し、日本国憲法を改正し、衆議院議員の任期は、連続で5期までとするべきである。なお、無用の長物となっている参議院は廃止を検討すべきである。
(追記)
 現在も、全てを嘘で固めたロシアの悪党プーチンによる隣国ウクライナへの侵略が継続している。プーチンの嘘に比べれば、山下容疑者の詐欺行為など問題にもならない些末な出来事である。逆に言えば、侵略者プーチンの所業がいかに悪質で残虐なものであるかを物語っている。戦争の帰趨を予測する上で、5月中旬から数か月間は、世界にとってもまさに正念場である。自由と人権を尊重する国は、ウクライナを最大限に支援する必要がある。とにかくロシアが戦争に大敗北し、ウクライナの国土から完全に放逐され、後世に至ってから「侵略国ロシアの没落」の歴史が刻まれることを願うだけである。
 

日時:13:56|この記事のページ

共有者不明農地の賃貸借(農地法ゼミ第6回)

2022年05月03日

1 最近、民法の物権法の分野で重要な改正があった。令和3年4月28日法律24号「民法等の一部を改正する法律」である。施行日は令和5年4月1日のようである。したがって、法律の施行日まで後1年を切った。そこで、今回は、改正法に則り重要問題について以下解説する(一般に法律というものは、年々改正が行われているのが通常であるから、最新の情報による解釈を心掛ける必要があろう。)。
2 まず、事例を掲げる。農地の所有者であった太郎が死亡し、相続人として妻竹子、長男一郎、次男二郎、三男三郎の四人が権利を承継した。4人で協議した上、遺産分割手続が終わり、亡太郎の所有していた農地甲は、4人が法定相続分どおり権利を承継することになった。農地甲に共有関係が生じたということである。共有者である4人の持分権は、竹子が2分の1、一郎、二郎及び三郎は、各自6分の1を取得した。現在、農地甲を耕作しているのは竹子一人であり、長男一郎は本業が公務員であるため、竹子と同居し、竹子の農業の手伝いをしている。他方、二郎と三郎は、遺産分割の協議が終わってから行方をくらまし、今生きていることは疑いないが、どこで生活しているかは不明である。
 農地甲の隣には、農業法人Aが他人から借りている農地があるが、同法人は、竹子が耕作している農地甲について賃借権を設定して欲しいと希望している。これに対し、竹子は自分が高齢であるためそろそろ農業を辞めたいと考えており、法人Aからの話に賛成である。他方、一郎はその話には乗り気ではない。なお、二郎と三郎とは全く連絡がつかないため、どのように考えているか不明である。果たして、法人Aは、農地甲について賃借権を設定してもらえるか?
3 答えを先に言えば、設定してもらえる可能性は高いということである。
 しかし、問題点が多くある。農地甲は、4人の共有物であるため、4人のうち何人が賃借権設定に賛成する必要があるのか、という問題である。本件では、二郎と三郎は行方不明であり、その意思を確認することができないという特別の事情がある。
 さらに、大きな問題点として、農地甲について仮に賃借権が適法に設定された場合、以後、当該賃貸借には農地法の適用があるため、農地法の定める特殊の制度が賃貸借にも適用されるという点がある。具体的には、後記するところの法定更新の制度(農17条)と、農地の賃貸借の解除、解約等の場合に農地法18条の許可をあらかじめ受ける必要があるという点である。
4 ところで、改正民法251条1項は、共有物の変更を行うには、共有者全員の同意が必要であると規定する。そこで、一体「変更」とは何を意味するのかという点が問題となる。改正民法は、同項かっこ書で「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」と規定する。そのようなものは、いわゆる軽微な変更という類型になる。
 これに関連して、最高裁の平成10年3月24日判決は、農地を宅地に転用する行為について、変更に該当するとの判断を示している。農地が非農地化するのであるから、改正法でいうところの「形状又は効用の著しい変更」を伴うものに当たる。他方、農地を農地のまま他人に賃貸する行為については、最高裁は、今のところ明確な判断を示していない。
 従来の条文では、「変更」の意味が今一つ明確ではなかったが、今般の改正によって、「形状又は効用の著しい変更」をもたらさないものは変更には当たらず、「管理」に当たるという条文が新設されたことから、農地を農地として賃貸する行為は、管理行為に当たると解することが可能となった。私見も同様の解釈をとる。ただし、後記のとおり期間制限があると解する。
5 そして、共有物の管理について、改正民法252条1項は、共有持分権者の過半数で決定することができると定めた。ただし、本件のように共有者の一部の者(二郎と三郎)が所在不明者に該当する場合は、同人ら以外の竹子と一郎の方で、裁判所に対し申し出て、過半数で共有物の管理に関する事項を決定できる旨の裁判を行うことができる(同条2項)。仮に竹子又は一郎の申立が認められ裁判が行われた場合は、竹子と一郎のみで、共有物である農地甲の管理に関する事項(農地甲を法人Aに賃貸するという内容)を決定することができる。そして、竹子と一郎の持分権を比較した場合、竹子の方が圧倒的に大きいことから、竹子が賛成すれば、仮に一郎が反対しても、結果的に過半数の同意を得たことになる。
6 だたし、賃貸借の期間については制限がある(同条4項)。山林以外の土地(農地を含む。)については5年を超えることができない。仮に5年を超えて賃貸借契約を結んだ場合、5年以内の期間においては有効と解する。5年を超えた期間についてはその部分のみが無効となると解する(平野裕之「債権各論Ⅰ」260頁参照)。
7 では、このような契約(短期賃貸借)についても法定更新の適用があるか?今のところ、明確に判断を示した判例は見当たらないので、原則どおり適用があると解するほかない。したがって、仮に5年間の期間が満了した場合、満了以前に適法に更新拒絶の通知を賃貸人の方から賃借人に対して行っておかないと、以後、期間の定めのない賃貸借関係が存続すると解される。結局、農地の賃貸借については、(今後農地法の一部改正がない限り)5年の期間制限は有名無実のものとなる危険がある。

日時:18:59|この記事のページ

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