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弁護士日記

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小泉構造改革路線との完全決別を

2007年11月05日

2007年11月5日
小泉構造改革路線との完全決別を
 
 思い起こせば、小泉内閣が出来たのが2001年4月のことであった。その当時、小泉首相は、「構造改革には痛みが伴う。国民よ、しばらくはそれに耐えてくれ。そうすれば、今より良い時代が必ず来る」というスローガンを掲げた。
 しかし、小泉内閣の5年5か月が経過し、さらに安倍内閣の約1年を経過しても、国民の生活の実感は、良くなるどころか、かえって悪化している。高級官僚による行政の私物化、格差・貧困の発生、医師不足による患者たらい回し事故など数え上げたらキリがない。
 このことから小泉首相の掲げた「構造改革」なるものは完全に失敗したと言える。構造改革路線とは、要するにアメリカ流の「弱肉強食社会」の到来と是とする利己的な考え方である。分かりやすく言えば、富める者や能力のある者はますます富み、かたや貧しい者、能力のない者はどうにでもなれ、という冷酷非情な考え方である。
 法曹界に関して言えば、政府は、法曹人口を短期間に劇的に増加させることがあたかも正しいことであるかのように唱え、「司法改革」と称して国民をミスリードし、2011年には司法試験の合格者を毎年3000人にするというデタラメな方向を示している。
 このような間違った方向を支持する論者たちは、「競争がなければ(法曹界も)よくならない。競争があって初めて国民の利益になる」という考え方に立っている。しかし、この手の論者たちが言う「競争」とは具体的に何を指すのかはっきりしない。
 弁護士の業務というものは、家電製品の価格競争とか携帯電話サービスの競争などとは根本的に異なっている。そもそもサービスの比較が困難であるという特徴を有するからである。
 一般市民が弁護士に事件を依頼するようなことは、平均すれば、一生に1回あるかどうかということではないだろうか?したがって、企業法務を除いて、一般市民が弁護士を頼む場合、「今回事件を依頼したA弁護士は熱意が感じられず良くなかった。来年何か事件を依頼するときはB弁護士にしよう」などということは余り想定できない。
 したがって、一般市民にとっては、一生に一回くらいしか予想されない弁護士との接触において重要なことは、弁護士の数だけを急激に増加させるということではない。一番重要なことは、多くの優良な弁護士をゆっくりと長い時間をかけて育て、一般市民の期待に応えるということである。それには弁護士にも一定の経済的・精神的な「ゆとり」が前提として必要となってくる。そのゆとりとその対極にある「競争万歳。自分さえ儲かればよい」という利己的な考え方とは相容れないと私は考える。

日時:20:58|この記事のページ

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