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弁護士日記

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日本経営協会主催の農地法セミナーを終えて

2009年10月22日

 本年10月5日・6日の二日間にわたって、日本経営協会中部本部主催の農地法セミナーが名古屋市内で行われた。セミナーの時間は、合計9時間である。私は、そのセミナーの講師として、NHK名古屋放送センタービル内の教室で、農地法に関するお話をさせていただいた。
 今回のセミナーに出席された受講生の皆さんは、全部で20名弱であった。地元である中部地方の農業委員会の方々を中心に、関西地方、あるいは中国地方の農業委員会の方々もおられた。経験年数は、短い方々がほとんどであった。講師である私としては、いつも一番気をつけている点は、受講生の方々の実務的なレベルがどの程度かということである。経験豊富な方々に初歩的なお話をしたのでは、全く興味をもっていただけない。逆に、初心者の方々に、応用問題的な難しいお話をしても理解が進まず、やはり興味が湧いてこないように感じる。
 しかも、今年は農地法の大改正があったことから、解説についても、改正法を踏まえてのものでなければならなかった。しかし、法律の改正条文は明らかとなっているが、当時、法律を補うべき政令・省令の内容は一切明らかとされていなかった。政令や省令の内容が分からないままでは、法律の説明も深く行うことはできず、どうしても表面的なものとならざるを得ない。そのような困難さが今回のセミナーにはあったのである。
 今回の農地法改正によって、農地を所有する形態から、農地の貸借りの形態に比重が移ったと考えられる。これまでの農地法は、耕作者主義といって、農地を所有する者自身が農地を耕作することがあるべき本来の姿とされていた。農地の貸借りは、あくまで二次的なものという位置付けがされていた。そのため、農地を借りようとする場合であっても、農地の所有権取得の場合と同じく、農地法3条によって一律に非常に厳しい規制がかけられていた。
 しかし、今回の農地法改正によって、耕作を目的とする農地の貸借りは、以前と比べて相当容易になった。つまり、農地を借りた者がその後、借りた農地を適正に利用していない場合に、貸主から解除することができるという条件を付した契約に限定してのことであるが、規制が緩和されるに至った。その結果、法人については、一般企業であっても農業に参入することが容易になった。また、個人については、農作業に常時従事する必要がなくなった。
 ただし、今回の農地法改正は、単に規制を緩めたというだけのものではないことに注意する必要がある。他方で規制が強化されている。例えば、農地について権利を有する者について、適正かつ効率的な利用を確保すべき責務が課されるに至った(改正法2条の2)。また、耕作目的で農地上の権利を取得しようとする際に、周辺地域における農業に支障を及ぼすようなものは不許可とされるに至った(改正法3条2項7号)。
 このように、今回の農地法改正は、内容が非常に多岐にわたる。したがって、今まで農地法について一応の知識があった方であっても、今後は、改正法の内容をしっかりと勉強して頭にいれておかないと、とんでもないミスを犯す危険がある。
 そこで、勉強をするためには参考書が必要になるのであるが、私は、今回の農地法改正を盛り込んだ改訂版を出すための準備に既に取りかかっている。予定どおり行けば、来年の4月頃には、新日本法規出版から「設例 農地法入門(改訂版)」が出る見込みである。農地法改正の詳しい内容については、その本を参照していただければ幸いである。

日時:16:09|この記事のページ

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