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弁護士日記

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8497万円の損害賠償請求に対し8454万円の支払を命じる判決が出た

2012年03月27日

 一昨年事件の委任を受けた交通事故訴訟の判決が、本年3月上旬、名古屋地裁豊橋支部であり、このたび裁判が確定した。この訴訟とは、自転車で走行中の被害者に対し、後方から制限速度の2倍に当たる高速度で加害車が追突し、自転車に乗っていた青年をほぼ即死させたという痛ましい事故に関する訴訟であった。
 被害者の田中一郎さん(ただし、仮名)の遺族は、事故後、間もなく当事務所に事件処理の委任をされた。そこで、私は、事故現場に行って、事故発生状況を確認し、さらに交通事故の捜査に当たった警察署にも赴き、警察官に事故状況の見立てを尋ねたりした。
 その後、加害者である被告の刑事裁判が始まり、被害者である田中一郎さんの遺族も刑事裁判に参加して意見を述べたりした。しかし、被告には執行猶予判決が出た。
 民事訴訟は、昨年の7月に始まった。その後、5回の裁判を経て、本年3月上旬に判決が出たのであった。被害者の遺族は、民事裁判において、全部で8497万円余りの損害賠償を請求した。
 これに対し、判決は、全部で8454万円余りの支払を被告に命じた。判決の内容をいちいち明らかにすることはできないが、かいつまんで指摘すると、次のような内容である。
 第1に、死亡慰謝料は、死亡した青年自身の慰謝料と遺族である両親の固有の慰謝料を合計して3000万円が認められた。この点について、交通事故訴訟の実務参考書として有名ないわゆる「青い本」によれば、「一家の支柱(あるいはこれに準じる場合)」以外の場合は、2000万円から2500万円までとされている。
 今回の被害者である青年自身の慰謝料は、2400万円とされて、青い本が示す基準の範囲にとどまった。しかし、これだけで満足してしまうのは、弁護士のあるべき仕事としては、不合格である。
 というのは、被害者自身の慰謝料のほか、その遺族の固有の慰謝料を請求しておくことによって、かなりの金額の上乗せが期待できるからである。今回は、遺族の固有の慰謝料として計600万円が認められた。したがって、合計で3000万円となった。
 第2に、原告側は、弁護士費用として700万円を請求したが、判決によって700万円満額が認められた。名古屋地裁であっても名古屋市内に庁舎のある本庁の場合は、弁護士費用については独自の基準が設けられており、今回のような700万円という金額はとても認められない。より少ない金額とされてしまう。
 ただし、弁護士費用をいくら認めるかについては、事件の内容、審理に要した時間、その他の諸般の具体的事情を考慮の上で、裁判官が自由裁量で決めることになっているから、必ずこうなるという計算式は存在しない。
 いずれにせよ、損害賠償請求事件において、原告が請求した賠償額の99.5パーセントの金額を、裁判所が判決で認めることは、滅多にないことである。そのような原告完全勝訴ともいうべき判決が出た理由として、遺族が事故直後の早期の段階で弁護士に事件を依頼されたことがあげられる。早い段階で専門家に事件委任をされたことによって、周到で緻密な弁護活動が可能となり、そのことが好結果を生んだといえるからである。実に賢明な選択をされたといってよい。
 あくまで仮の話であるが、遺族において弁護士費用を少しでも節約しようと考えて、遅い段階になってから事件を弁護士に委任していたとしたら、今回のようなほぼ完全勝訴はありえなかったであろう。

日時:16:51|この記事のページ

中村仁一著「大往生したけりゃ医療とかかわるな」(幻冬舎新書)を読んで

2012年03月12日

 今回取り上げるのは、中村仁一さんという医師が書いた本である。著者の中村仁一さんは、京都大学医学部を卒業後、民間病院長を経て、現在では老人ホームの附属診療所長という経歴の持主である。
 近い将来、我が国の人口に占める老人(私の場合は、一応65歳以上と定義する。)の割合は、過去の歴史に例をみないほど増加することが確実である。我が国は、いまや老人大国に変貌しようとしているのである。
 中村氏は、この本の中で、医療が年寄の自然死を邪魔していると指摘する。中村氏によれば、過剰ともいい得る医療が、お年寄の自然死を妨げ無理に生かそうとしていると批判する。例えば、お年寄が食べられなくなると、鼻から管を入れて無理に栄養を補給しようとしたり、あるいは胃瘻といって腹部に穴を開けてそこからチューブを通じて水分や栄養を補給する医療行為が始まる。
 しかし、そのような措置は、これから楽に死んでゆこうとするお年寄を逆に苦しめることになると指摘する。これには、私も同感である。人間は、誰しも死を免れないのである。そのお年寄が天寿を全うしようとしている時に、周囲の人間が無理に延命を図ろうとするのは、一体何のためか?お年寄本人がそのような延命措置を受けることを事前に積極的に希望している場合は別として、少なくとも余分の苦痛を与えることには疑問がある。
 中村氏によれば、自然死とは、いわゆる餓死を意味するとされる。そして、餓死の実態は、飢餓、脱水、酸欠状態、炭酸ガス貯留という4つの状態を示すという。いずれの状態も、その状態に置かれた人間は、意識が低下して脳内にモルヒネ様の物資が分泌されることになると説く。また、体内に炭酸ガスが貯まるとその麻酔作用によって死の苦しみを防いでくれるという。したがって、死というものは自然の営みであって、生きている者が想像するほど過酷なものではないと説く。 
 確かに、自分の経験に照らしてもうなずける。昔、脳梗塞に倒れた祖母が自宅で介護を受けていたときも、日数が経過するに従って意識が朦朧となり、やがて、かかりつけの医者の判断で栄養補給を止めたことによって間もなく自然に死亡していった昔の記憶がある。ここで仮に無理に延命措置をとっていたら、余計に苦痛を与えることになっていたであろう。
 また、中村氏は、では、お年寄が死期を迎えた際に、なぜ家族が医師に対し、延命措置を頼むのかという問題を提起している。それには二つほど理由があり、一つは、医師の側から延命措置を家族に勧めることがあるという点である。これは医師の側の論理である。もう一つは、患者の側の理由である。それは、生前に親孝行をほとんどしてこなかった子らが、自責の念から延命措置を医師に頼むという場合だという。
 しかし、仮に、そのような延命措置を開始した場合、本来であれば安らかに天寿を全うしていけたはずのお年寄りには悲惨な運命が待っている。何年もの間、自分の意思とは無関係にベッドの上に寝かされ、自分の意思で動くこともままならぬ苦しみに満ちた人生を送ることになるのである。これは、悲劇以外の何物でもない。
 さらに、中村氏は、現在の医学界に対しても批判を向ける。普通の人間は、年をとれば誰でも病気になるという自然の法則を忘れ、多くの医者は、「年をとっても健康でなければ何もなりませんよ。健康ほど大切なものはありません」と脅し半分で説教をするというのである(本の170頁参照)。
 中村氏によれば、そのような多くの医者の論理はおかしいものであって、「老い」を「病気」にすりかえようとしていると批判する。つまり、人間老いれば誰でも必然的に病気が生ずることは事実であるにもかかわらず、「病気」であれば治すことができるはずであると考えて、老いを正面から認めようとしない態度はおかしいと指摘する。
 この点、私も同感である。お年寄りが病気をした場合に、その健康を回復させるために費用を度外視した医療行為(投薬、手術、リハビリ等)を行うことは、大いに問題であって、私には違和感がある。そのようなお金があるのであれば、将来の日本を背負って立つ子供の育成に国家予算をつぎ込むべきではないのか。若者がいない国家は滅びるほかないのである(仮に滅びなくても、これからは世界の中の三等国として日本国民は肩身の狭い思いをして生きながらえるほかない。)。
 私に対し、もし、今後、福祉予算としてどの分野に重点を置くべきかと問われれば、子供や青少年の育成に福祉予算の大半を注ぎ込むべきであると答える。それ以外の正解はあり得ないと思うからである。                             

日時:13:33|この記事のページ

東海市の女性拉致殺害事件に関する疑問点

2012年03月01日

 最近、毎日のように新聞に書かれているのが、愛知県東海市に住む相川比奈江さん(48歳)という女性が、昨年11月7日に失踪後、今年になって岐阜県御嵩町内において死体で発見された事件に関する報道である。
 新聞各社の報道によれば、警察は、事件に関与したとして岐阜県各務原市鵜沼朝日町の会社「プロスワン」社長の市川孝之容疑者(45歳)と、岐阜県輪之内町の会社「東輪化学工業」の社長の小川卓美容疑者(53歳)を、それぞれ加害目的略取容疑で逮捕した。
 加害目的略取罪とは、刑法225条に定められている。犯人には、1年以上10年以下の懲役刑が科せられる。しかし、警察が立件しようと考えているのは、単に加害目的略取罪だけではないであろう。略取(日常用語でいえば、「拉致」を指す。)された相川さんは殺害されているのであるから、今後、容疑が固まり次第、犯人を間違いなく殺人罪で逮捕するはずである(刑法199条。死刑・無期・5年以上の懲役刑)。さらには、殺人罪による起訴を視野に入れていることも疑いない。
 新聞報道によれば、殺された相川さんが勤務していた愛知県東海市の会社「富田日中貿易」と、市川容疑者が株主を務める親族経営の金属会社との間で、銅粉の売買契約にからむトラブルが発生していたという(朝日新聞2012年2月27日付け朝刊。ただし、他の新聞社報道には、富田日中貿易とプロスワンの間でトラブルが発生していたとするものもある。)。そして、富田日中貿易は、昨年10月13日に、上記金属会社を被告として、2000万円の支払いを求めて名古屋地裁半田支部に提訴したという。
 その後、市川容疑者は、相川さんに連絡を取ろうとしたが、連絡が取れなかったといって不満を漏らしていたという。訴訟の当事者が、市川容疑者の親族経営金属会社と富田日中貿易であったとすると、なぜ、市川容疑者が出てくるのかという疑問があるが、上記新聞報道によれば、市川容疑者は過去に上記金属会社に勤務したこともあり、また、同社の担当者として富田日中貿易を過去に数回訪問したこともあるとされている。その際、富田日中貿易の窓口は相川さんであったという。
 ここで、一つの疑問が湧く。富田日中貿易は民事裁判を起こしたのであるが、果たして弁護士に事件を委任して同人を代理人として提訴したのであろうか?この点は、新聞報道を見ても全く不明である。
 地方裁判所では、「本人訴訟」といって、当事者が自分一人で裁判を起こす割合がかなり高い。したがって、富田日中貿易は、弁護士を頼まずに、提訴した可能性がある。しかし、商取引に関する民事訴訟を法的知識のない者が起こすことには、やはり無理がある。
 仮に弁護士を頼んでいたのであれば、その弁護士が富田日中貿易から全権を任されることになるから、その件については、弁護士だけが責任をもって処理に当たることになる。したがって、仮に市川容疑者が、上記民事裁判にからんで相川さんと話をしようとしたのであれば、それは通らぬ話であって、いわば筋違いのことをしようとしたことになる。
 仮に今回の民事訴訟に関して富田日中貿易に弁護士が代理人として付いていたのであれば、その弁護士から、市川容疑者に対し、「この件は裁判になっているから、連絡したいことがあれば、全部代理人である自分を通してもらいたい。」と警告することによって、今回のような悲劇の発生を未然に防止することができた可能性がある。残念というほかない。
 二つ目の疑問とは、なぜ市川容疑者は、小川容疑者に頼んで、東輪化学工業に相川さんを呼び出すように依頼したのかという疑問である。また、小川容疑者は、なぜ、市川容疑者の依頼を受けて富田日中貿易にわざわざ電話して「廃プラスチックを処分したい。」と嘘をついたのか?その際、小川容疑者は、市川容疑者からの依頼であることを富田日中貿易には隠していたという。また、逮捕前は、小川容疑者は、「相川さんは飛び込みで営業に来た。」と警察に説明していたという。なぜ、そのような嘘をつく必要があったのか?疑問だらけである。
 その結果、昨年11月7日、富田日中貿易の担当者であった相川さんは、単なる商談だと信じて東輪化学工業に一人で来た。いわば、小川容疑者に騙されて、愛知県東海市から岐阜県輪之内町まで誘い出されたことになる。新聞報道によれば、同日、午後3時半頃にやって来た相川さんに対し、「奥にみえます」と言って声を掛け、市川容疑者のいる工場敷地奥の駐車場へ行くように促したという。
 おそらく、相川さんとしては、ここで市川容疑者が待っているとは想像していなかったと思われる。しかし、突然、小川容疑者から、「市川さんがみえます。」と告げられ、大変驚いたものの、会わずにすぐに帰るわけにもいかず、警戒しながら工場敷地奥に入っていったのであろうと推測される。
 ところが、工場の奥で待っていた市川容疑者から、上記トラブルをめぐる恨み言を言われ、さらに脅されて、身の危険を感じて逃げようとしたが、市川容疑者のグループによって拉致されてしまったというのが事件の真相ではなかろうか。市川容疑者は、単独ではなくあらかじめ二人の仲間を雇って拉致に及んだのであるから、最初から拉致を狙った悪質きわまる計画的犯行と言って間違いない。
 なお、この件について、小川容疑者は、自分は略取には関与していないと自分が頼んだ弁護士に説明しているそうである。しかし、仮にそうだとしたら、なぜ、相川さんをおびき寄せる重要な役割を積極的に果たしたのか?また、相川さんが略取された際になぜすぐに警察に事件を通報しなかったのか?という疑問が残る(無関係であれば、普通は110番通報するはずである。しかし、現実にはしなかったようである。ということは、拉致に手を貸したことになるのではないのか。)。
 一方、市川容疑者は、略取事件が起こった昨年11月7日に、東輪化学工業に行ったことがあるかどうか記憶がないと供述しているとのことであるが、しかし、小川容疑者が、確かに市川容疑者が当日来たことを認めている以上、それが嘘であることは疑いない。
 今回、被害に遭った相川さんが受けた恐怖感はいかほどのものであったか。さぞかし悔しかったであろう。
 私には、相川さんを殺害した真犯人の、おおよその目星はついている。警察に対しては、真犯人を必ず検挙して、殺人罪で起訴できるよう最大限の捜査をお願いする。「悪い奴を必ず捕まえる。決して逃がさない」という精神で頑張ってもらいたいものである。

日時:16:43|この記事のページ

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