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弁護士日記

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中谷巌「資本主義はなぜ自壊したのか」(集英社インターナショナル)を読んで

2009年02月12日

 この本の著者である中谷巌氏は、著名な経済学者であり、過去に、いわゆる小泉・竹中構造改革路線を肯定的にとらえたメンバーの1人である。その中谷氏が、このたび反省を込めて書いたのが本書である。本書の表題だけを見ると、経済書のように見えるが、内容はむしろ文明論・社会論に近い。
 氏は、まず、アメリカ社会が近年大きく変容したことを指摘する。かつて、氏が若き日にアメリカ留学していた当時においては、社会内におけるミドルクラスの人びとがしっかりと存在していたが、時代が移るにつれ、新自由主義なる考え方がアメリカ社会を席巻するようになった。その結果、アメリカ社会は、ビルゲイツのように莫大な富を稼ぐ一握りの成功者と、貧困に苦しむ大多数の人々に分化してしまったと分析する。
 この新自由主義は、我が国においても、構造改革とかグローバル資本主義という形をとって現われた。何年か前には、我が国においても、構造改革路線なるものが社会の主流を形成していた。いわゆる小泉元首相らによる「構造改革路線」ブームが発生したことは記憶に新しい。
 氏は、アメリカと日本を次のように比較する。アメリカは、世界最初の人工国家である。確かに、世界からの移民(またはアフリカからの奴隷の子孫)によって成り立っているアメリカは、国民間の文化的バックグラウンドが多種多様であるから、文化とか伝統を拠り所にして、社会を規律することは不可能である。アメリカ独立時からの期間を考えても、わずか230年余りしか経過しておらず、固有の伝統や文化が成立していると考えることは難しい。
 これに対し、日本には長い歴史がある。私は、古代史についてはよく知らないが、歴史学者の説によれば、縄文人が主役であった縄文時代は一万年ほどの期間に及ぶと考えられている。次に、渡来人が日本列島の外からやって来て、現在の日本が成り立っていると考えるのが一般的であろう。そうすると、アメリカとは比較にならないほどの歴史があることが分かる。しかも、日本は、長きにわたり諸外国から侵略を受けたことがない。そこで、氏は、日本は、「1国家・1文明」という特異な歴史を有する国家であると評価する。
 本書には、我が国の国民が元来自然との共生を尊重する文化をもつことや欧米社会と異なって身分(階級)というものが存在しない社会であるなどの事実が豊富に語られている。今まで漠然と頭の中にあった知識を再確認することができる有益な本である。
 とりわけ、現在の政権政党が国民の支持をほとんど失っている末期的状況下にあっては、日本の優れた伝統と文化を自覚した上で、今後のあるべき方向を考えるという姿勢が一番大事であると考える。
 私としては、皆さんに本書を広くお勧めしたい。

日時:15:41|この記事のページ

地方議員の待遇見直しについて

2009年02月03日

 今後、少子高齢化社会を迎えるに当たり、高齢者福祉のための十分な予算を確保することは相当に難しくなる、と私は予測する。そこで、行政費用の無駄を省くことが急務とされるのであるが、他方、地方議会の議員の人件費については、余り議論が進んでいないように思える。
 そこで、今回は、地方議員の人件費について考えてみたい。地方議会の議員定数については、地方自治法によって、人口に応じて定める定数を超えない範囲で条例で定めるとされている(地方自治法90条・91条)。例えば、県民人口が200万人の県を例にとると、県議会議員の定数上限は60人である。また、100万人の県では定数は45人とされている。市の人口が250万人の大都市では、市議会議員の定数上限は96人であり、人口50万人の中規模都市では56人、人口20万人の小規模都市では38人とされている。
 これらの地方議員は、議員報酬のほかにも、費用弁済、期末手当(ボーナス)の金銭的給付を受ける権利がある(地方自治法203条)。例えば、都道府県議会議員および政令指定都市の市議会議員の場合、期末手当を含まない議員報酬だけで、平均して年間1000万円弱の議員報酬を受け取っている実態がある(これに期末手当を含めれば、より高額になる。)。さらに、地方議員は、上記のとおり、平均して月額数十万円以上にも及ぶ政務調査費を受け取っている。
 ここで、今後、少子高齢化社会を迎えて、国民のほとんどすべてが、場合によっては、現在よりも質素な生活を送ることを迫られるおそれがある時代にあって、県民や市民のために活動するのが理念であるべき地方議会議員に、これほどの厚い待遇をする必要があるのか?という疑問が湧いてくる。つまり、そこまで多額の税金を投入する必要があるのか?ということである。
 過日、北海道議会本会議の様子が日曜日の某局テレビ番組で放映されていたが、議会における議員の質問も、これに対する知事の答弁もあらかじめ書面化されていて、ただ、棒読みしているだけの実態が明らかにされた。これでは、何のための議会であるか、その存在意義が問われる。このような無駄とも思えることをするために高額の議員報酬を今後も支給することは、おかしいと考えるのが大多数の国民の声ではないだろうか。
 したがって、地方議会議員の定数を現在の半分ないし3分の1程度にまで削減すると同時に、議員報酬等も国民の平均所得水準にまで減額すべきであると考えるが、いかがであろうか。

日時:16:01|この記事のページ

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