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中露による威嚇行動を許すな

2021年10月26日

 中国とロシアは、最近、共同で軍用艦10隻を連ねて日本列島の周りを一周した。特に津軽海峡と大隅海峡は日本の領土に極めて接近した位置にあり、いわば日本の庭先において軍艦10隻を通過させたに等しい。これは防衛省が23日に公表した情報である。
 津軽海峡は、北海道と青森県に挟まれた海域であり、海峡の幅はおおよそ22キロメートルである。テレビニュースなどで大間のマグロ一本釣りの様子が紹介されることがあるが、あの海域が津軽海峡である。
 では、なぜ中露は津軽海峡を航行することができるのか?航行しているのは大きな軍艦であるから、その軍艦からいつミサイル弾が飛んでくるかも分からないのである。近くの漁師などは、10隻もの巨大な軍艦が並列して海上を航行する姿を見て非常に心配したのではなかろうか。
 そもそも、近代国家の領域は、領土、領空、領海の3つから構成される。国家領域において国家は主権を行使することができる。そのうち、領海は、沿岸国の基線(干潮時の海岸線)から、原則12カイリ(なお、1カイリ=1.852キロメートル)以内とされており、12カイリとは約22キロメートルである(国連海洋法条約)。我が国も22カイリを採用している。
 そうすると、例えば、津軽海峡の場合、海峡全体が日本の領海になってしまう。領海において外国船舶は、無害通航権(innocent passage)といって一定の要件を満たせば他国の領海であっても通行することができる。ここで、「無害通航」の意味が問題になるが、無害通航とは、沿岸国の平和、秩序、安全を害さないことをいう(国連海洋法条約19条参照)。
 特に問題になるのは軍艦の通航である。世界の国の中では、軍艦については事前許可制度を採用している国もある(防衛実務国際法95頁参照)。例えば、イラン、中国、ベトナムなどがこれに当たる。
 今回、中露の軍艦がなぜ津軽海峡を堂々と通航することができたのかといえば、日本は、特例として宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道、大隅海峡の5つの海域については、日本政府において1977年以降、「特定海域」として当分の間、領海幅を3カイリにしたためである。そうすることで、北海道の方から3カイリ、青森県の方からも3カイリの領海になる。すると、双方の地域の中間に位置する海域は、領海から公海に戻ることになるのである。公海であれば、公海自由の原則が適用され、今回のように、中露の軍艦も通行することができるようになる。
 ここで、問題は、日本がなぜ上記の5つの海域を特定海域としたのかである。テレビ報道などのによれば、日本には、非核3原則というものがあり、仮に津軽海峡を日本の領海にしてしまうと、アメリカの核ミサイルを搭載した原子力潜水艦が津軽海峡を航行した場合に、「核を持ち込ませない」という原則に抵触し、野党などが批判を始める事態になるから、それを回避するためという説明がされる。
 しかし、これは全く不合理で本末転倒の議論である。第1に、核を持ち込ませないという原則自体が不合理なものであり、今日の世界情勢に適合していないことがあげられる。非核3原則を作った当時と比べると、中国は化け物のように強大な軍事力を保持するに至っているのであるから、それに対応するには、非核3原則のうち、「核を持ち込ませない」という原則は、今日においては完全に廃止すべきである。現実に即さない原則は直ちに改めるべきである。また、現に、核兵器を搭載している可能性がある同盟国アメリカの軍艦が日本の港(領海)に寄港することもあり、現実にも合っていないのである。非核3原則を堅持せよと叫ぶ論者の意見には説得力が全くないということである。
 以上のことから、特定海域の特例は早急に廃止し、専制国家である中露が、日本の庭先ともいうべき海域で、二度と、威嚇行動をできないよう条約の内容を改定すべきである。中露という危険な体質を持った国によるやりたい放題をこれ以上許してはならない。仮にこれを放置すると、毎年のように恒例行事化する可能性がある。津軽海峡を通航するということは当然、海底の地形などの情報も入手できるということである。その情報は、万が一の際に役にたつはずである。中露は、日本にとって基本的に敵であることを正しく認識しておく必要がある。断じて友好国ではない。
 なお、中国について、近い将来、アメリカの軍事力を上回るという見解が多数を占めているように思えるが、私は違う見解をとる。中国は、今や世界の各国から警戒され、嫌われる国となった。このままでいけば、今後10年以内に中国は成長を止め、次第に衰退に向かうのではないかと予想する。
 非核3原則の改訂を政治日程にあげた場合、中国のエージェント(または工作員・スパイ)となっている左翼政党の議員(親中派の一部与党議員も含む。例 福田康夫元首相)やマスメディアに登場するコメンテーター、新聞記者などは、改定に猛反対するはずである。改定されてしまっては、中国共産党に不利になるからである。彼らの究極の目的は、中国共産党の利益を図ることだけである。
 しかし、責任ある政治家は、これらの反日活動家による反対を押し切っても、正しい方向に国を持ってゆき、国益を実現する責務があるのである。それにしても、日本の外務省はつくづくダメな官庁だと思う。何もやる気がなく、ただただ保身と現状維持に汲々とする姿は見苦しいの一言に尽きる。

日時:20:56|この記事のページ

共産主義勢力の台頭を許すな

2021年10月21日

 いよいよ衆議院議員選挙が近日中に行われる。
 新聞各紙も、選挙結果の予想を出している。現時点では、自民党が何とか単独で過半数を確保できるのではないかという予想が大勢となっている。しかし、投票当日になってみないと確実なことは言えないのではないか。
 今回、立憲民主党は、日本共産党との選挙区における候補者の調整をかなり行ったと聞く。そのため、従来は小選挙区でこれらの左翼政党が競合していた選挙区の数が減り、その分、左翼政党の候補者と自民党の候補者がいわゆる「一騎打ち」の状態に至った選挙区が増えたと聞く。
 今回、立憲民主党の枝野氏は、日本共産党との間で、閣外協力の合意を取り付けたと発言している。しかし、「閣外協力」という言葉の意味が明確でない。普通に考えた場合、閣僚としては迎えいれることはできないが、政策面で日本共産党の意見を参考にする、あるいは一部を取り入れるという意味のように聞こえる。
 そうすると、今後、立憲民主党の目指すところは、結局、日本共産党の主張をある程度まで認め、また、共産主義自体に反対しない政党を目標とする、という理解に至る。
 しかし、これは実は大問題である。なぜなら、日本共産党は、天皇制の廃止、日米安保条約の廃止、自衛隊の解体という究極の目標を掲げているからである。少なくとも、現時点で、公式の場でこれらの目標を完全に廃止したという声明を聞いたことがない。
 まず、天皇制は、日本国憲法が明文で認める制度であって、憲法改正を経ずに天皇制を廃止することはできない。また、天皇制があるおかげで、日本国民の融和と統合が図られているという効果もある。その天皇制を廃止することなど、絶対に許されない。
 次に、日米安保条約は、日本および日本国民にとって必要不可欠の存在となっている。なぜなら、日本の隣には、中国共産党がすべてを決定できる独裁国が存在し、国際ルールを無視しても平気な顔を誇示している。実にとんでもない国であり、将来、我が国が中国と共存することはあり得ない。その中国による軍事的脅威から日本を守る役目を果たすのが日米安保条約であり、安全保障の観点から絶対に必要なものと言える。今後、ますます同盟関係を進化させる必要がある。
 さらに、自衛隊の解体に至っては、笑止千万という以外にない。日本共産党は、自衛隊に変わる軍隊の創設を密かに考えているようであるが、日本共産党が、憲法改正に強く反対する理由はここにあると見ている。仮に今後日本国憲法を改正し、自衛隊の存在を憲法の明文で認めてしまった場合、日本共産党の策謀が実現できなくなるからである。
 以上、今回、立憲民主党が掲げた日本共産党との協力合意は、非常に危険なものである。
 しかし、枝野代表はそのことに全く気付いていないようである。あるいは、実は気が付いているのであるが、有権者にはそこまで深く考える能力はないとタカをくくって、今回のような馬鹿げた協定を結んだ可能性もある。
 今回の立憲民主党から出ている候補者は、仮に当選してもまともな議員活動はできないと考える。せいぜい、過去に既に決着がついた些末な問題、具体的には、桜を見る会の問題とか日本学術会議の問題に対し、「けしからん」と声をあげて大騒ぎするだけの能しかないとみている。
 左翼野党の議員たるもの、声高に政府・与党を非難・批判するだけの行動さえできれば当面のところ合格というのであれば、別に政策を深く勉強する必要もなく、単に、党の事務方が作成した「政策問答マニュアル」数枚を暗記して、記者会見の場でオウム返しに主張するだけで済むということになる。
 プロ野球にたとえれば、球場内で試合をしているのは、政府(官僚)であり、与党(各省大臣)である。左翼野党は、外野席に陣取って大声でヤジを飛ばす酔客のようなものである。責任を負わない気楽な稼業であると同時に、権力を保持・運営できない「遠吠えをする犬」のような惨めな存在でもある。
 立憲民主党が、今後、左翼野党暮らしの「貧困状態」から抜け出すには、まずは現在の立憲民主党の幹部を全員更迭し、新しい発想を持った若手議員に党の運営を委ねることである。また、議会制民主主義の維持、人権の尊重、国際ルールの遵守、法の支配の尊重、国防力の強化、憲法改正などの基本理念を掲げて党の体制を刷新する必要がある。要するに、まともな考え方を持った人物が党を引っ張ることが必要だということである。

日時:13:12|この記事のページ

投票先がない状態には困った

2021年10月10日

 いよいよ衆議院議員選挙が2021年10月31日に行われる。新聞を見ても、衆議院議員選挙がらみの話題が多くを占めている。選挙となると、決まって「候補者の人柄や訴える政策をよく吟味して投票先を決めよう」などというキャンペーンが行われる。一般論としてはその標語のとおりであるが、私が住む岐阜一区には困った事情がある。
 私はもともと保守思想の持ち主であり、また、反共思想の立場をとっている。現在、岐阜一区には、自民党現職の野田聖子氏、立憲民主党新人の川本氏、共産党の山越氏その他の泡沫候補が立候補を予定していると聞く。
 困ったことに、私は誰も支持できない。やむなく長年にわたって投票を棄権している。
 自民党の現職である野田氏は、所属政党こそ自民党であるが、思想はむしろ立憲民主党に近い。また、先の総裁選での発言を聞いても、言っていることのレベルが低く、問題にならない。加えて、夫が元暴力団員であるとの報道もあり、政治家として適正を欠く。本人は「夫を信じている」などとボケた発言をしているが、仮に夫の体に本格的な入れ墨が彫られている場合は、元暴力団員の経歴を有していた可能性が高い。
 野田氏は、もともと福岡県生まれであり、岐阜県には何のゆかりもない。元自民党の代議士であった野田卯一の孫というだけの理由で、自民党の後継候補者として担ぎ出されただけの人物である。政治家としての適性など最初からないと言ってよい。候補者として担ぎ出されたときに、私の記憶が正しければ、東京都内のホテルの従業員をしていた経歴がある。本人は、ホテルの新人教育の一環として客室のトイレ掃除を会社から命じられ、掃除が済んだ後に、トイレの水を飲めと言われ、大変な体験をしたと語っていた(現在であれば、パワハラ案件に相当し、問題研修を実施したホテル側も、ただではすまないであろう。)。
 次に、立憲民主党の候補者であるが、私は、枝野氏が代表を務める立憲民主党自体を全く信用していないため、その候補者である川本氏に投票することはあり得ない。
さらに、共産党の山越氏については、私は共産主義の思想自体を根底から否定(拒否)する立場をとっており、階級闘争史観に基づき、共産主義社会の実現を目的とする日本共産党の山越氏に投票することは、地球がひっくり返ってもない。日本共産党は、階級対立がなくなった後は、国家権力そのものが不要となると主張するが、実にデタラメな主張というほかない。現在、共産党が国家権力を握る中国の姿を見れば、共産主義の主張そのものが全く成り立たないことが分かる。国民を煽って不安を掻き立てることを常套手段とする共産主義者には、この世から完全に消滅してもらいたいものである。
 重要な衆議院議員選挙において、投票できないという状態は実に歯がゆい。昔は、中選挙区制度であり、多くの候補者のうちから自分の思想に近い候補者を選ぶことができた。現在の制度である小選挙区制度は、選挙区で負けた、つまり落選した候補者が比例で復活するという不合理な制度をとっている。いわゆる「ゾンビ議員」が多く誕生して、一人前の歳費を受け取っている。こんな国民を馬鹿にした制度はない。
 将来は、中選挙区制度に戻してもらいたいものである。岐阜県の場合、現在、小選挙区は全部で1区から5区までの5つあり、計5人が当選することになっている。今後は、小選挙区を廃止し、選挙区を二つの中選挙区に分け、美濃で4名、飛騨で1名の計5人の当選者を出すようにすべきである。中選挙区制度の場合、昔から「政権交代が起こりにくい」という批判が出ることがあった。しかし、現実を見れば、小選挙区だからといって政権交代が頻繁に起きている事実はなく、批判は的外れというほかない。
 衆議院議員の投票率が、昔の中選挙区制の時代と異なって、小選挙区制になってから著しく低下しているのは、私のように、投票したい人物に投票できないということが大きく影響していると考える。保守層が選挙(投票)から離れてしまっているのは、小選挙区制度(および比例代表)のためである。小選挙区制度は即刻廃止すべきである。

日時:13:05|この記事のページ

賃貸借の更新(農地法ゼミ第2回)

2021年10月06日

1 一般に賃貸借契約を締結する場合、賃貸借の期間を定めることが多いといえる。例えば、農地を農地として使用する内容の賃貸借において、期間を○○年と定めた場合は、末日の終了によって期間が満了する(民141条)。
 ここで、例えば、賃貸人Aと賃借人Bの間で農地の賃貸借契約を適法に締結した場合、つまり双方が農地法3条の許可を受けて農地の賃貸借が行われた場合、期間の末日の終了をもって賃貸借契約は当然に失効するのであろうか。答えは、失効しないということである。
 期間の定めがある農地の賃貸借の場合、期間の満了をもって契約関係を終了させようとする当事者は、期間の満了の日の1年前から6か月前までの間に、相手方に対し、更新拒絶の通知を行う必要がある。
2 更新拒絶の通知とは、賃貸借の期間が満了した場合、その時点で賃貸借関係を解消するという意思表示である。通知の方法は、手紙、FAX、電話、メール、口頭での申入れなど、いずれの方法でも構わない。ただし、通知をしたという事実の有無をめぐって後日争いになるおそれがあるため、できる限り内容証明郵便など、証拠が残る方法が望ましい。
上記期間内に更新拒絶の通知をしておかないと、後記のとおり、賃貸借が更新されてしまう。ただし、更新拒絶の通知をしようとした場合、農地法は、事前に都道府県知事の許可を受けておくことを求めており(法18条1項柱書)、許可を受けずに通知しても無効となる(同条5項)。
この農地法18条の許可であるが、同条2項に許可を受けられるための要件(許可要件)が明記されており、現実には許可を受けることは容易とはいえない。
3 では、農地賃貸借の当事者が更新拒絶の通知をしなかった場合に、どのような効果が発生するか。法定更新という制度が適用されるが(法17条)、その結果、「従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなす」ことになる。
ただし、従前の賃貸借と同一の条件といっても、期間については最初の賃貸借の期間が再び適用されることになるのではなく、期間の定めのないものとして存続する(最判昭35年7月8日)。
例えば、最初の賃貸借が期間10年のものであった場合、法定更新の結果、期間の定めのないものとなる。ここで、期間の定めのない賃貸借の意味が問題となるが、文字どおり賃貸借の期間が定められていないものをいう。永久の賃貸借という意味ではなく、契約当事者は、いつでも解約の申入れ(解約告知)をすることができる(民617条1項)。解約の申入れがあった場合、その日から、土地の賃貸借の場合は1年を経過することによって契約が終了する(同項1号)。
ただし、解約申入れをする場合も、農地の賃貸借の場合は、あらかじめ都道府県知事の許可を受ける必要がある(法18条)。
4 農地の賃貸借の場合、上記のとおり、農地法17条によって都道府県知事の許可を受けておく必要がある。そうすると、農地を賃貸した地主の側からみた場合、いったん農地を賃貸すると、契約解消の前提として農地法の許可を受ける必要があり、また、容易にはその許可が出ないことから、賃貸農地が半永久的に返ってこないという懸念を持つのは当然のことである。
 そこで、農地法の定める法定更新の適用がない賃貸借の制度として、農業経営基盤強化促進法によって、市町村が作成する農用地利用集積計画に定めてもらう方法による利用権設定というものがある。ここでいう「利用権」とは、農地を利用する権利という意味であるが、この利用権には法律上3つのものがある。しかし、現実には、賃借権と使用貸借による権利に絞られる。
5 農地法17条ただし書によれば、農用地利用集積計画に定められた賃借権については法定更新の適用がないとされている。
 例えば、利用権の設定を行う者(賃貸人)Aと利用権の設定を受ける者(賃借人)Bの間で、A所有農地甲について期間5年の賃借権が設定されたとする。Bは5年にわたり耕作を継続した。普通は期間が満了した時点で、Aは、Bに対し農地甲の返還を要求することになる。
 仮にBがAの要求を拒んだ場合、Aは、農地甲の返還を求めて訴訟の手続をとることができる。その結果、Aは勝訴し、Bは農地甲を明け渡す義務を負う。
6 仮に上記事例で、5年の期間が満了した後も、Bが農地甲の耕作を平穏に継続し、また、Aも異議を述べようとしなかった場合、A・B間の法律関係はどうなるであろうか。
 先に結論をいえば、Bには何ら正当な耕作権(賃借権)は生じないということになる。Bによる耕作は、あくまで事実上のものにすぎず、法的な権利ではない。ただし、そのようなA・B間の関係が極めて長期間継続した場合、Bによる賃借権の時効取得が可能となる場合があり、その場合、農地法3条の許可は不要と解される(最判平16年7月13日)。
 なお、期間経過後も、Bが事実上A所有の農地甲を耕作している場合に、民法619条1項の賃貸借更新の推定規定を使って黙示の更新を認め、権原ある賃借人として処遇しようとする見解が一部にある。
しかし、賛成できない。なぜなら、賃貸借の期間経過後、Bは無権利者の地位に戻るからである(ヤミ小作人)。Bが農地甲について有効な賃借権を取得するためには、あらためて農地法3条許可を受けるか、あるいは上記の農用地利用集積計画に定めてもらう必要があると解する。

日時:16:55|この記事のページ

篠原常一郎著「中国が仕掛ける『シン・共産主義革命』工作」を読んで

2021年10月03日

 10月になってから、篠原常一郎著「中国が仕掛ける『シン・共産主義革命』工作」を読んだ。本文は189頁しかなく、比較的薄い本である。この本は第1章から第6章までの構成となっている。最近、自民党の総裁選挙も行われ、いよいよ岸田内閣が誕生する運びとなっている。菅政権については、国民に対する説明が少なかったこともあり、評判は良いとは言えなかった。しかし、僅か1年の任期であったが、新型コロナに対する対策を何とかやり遂げた事実がある。日本における新規感染者数が最近になって激減してきたという事実は認めざるを得ないのである。もちろん、新型コロナの感染が収束したわけではないから、今後も十分に注意を払う必要はある。
 本題に話を戻す。篠原氏は、1960年生まれであり、過去に日本共産党で国会議員の公設秘書や政策秘書を務めたことがある人物であり、日本共産党の本質や内部事情に詳しい人物である。
 本の第1章では、中国共産党の習近平についてその思想の危険性を指摘する。
 また、共産主義に共通する世論工作のパターンについても言及する。これを要約すると、➀大量の情報(嘘であってもかまわない)の流布、➁歴史、伝統、昔から続いている価値観の否定(最近で言えば、例えば、夫婦別姓選択自由の議論がこれに当たる)、➂誹謗・中傷の活用(例えば、冷静になって考えれば問題がないことが分かるようなニュースについて、「〇〇は説明責任を果たしていない」としつこく非難を繰り返すような状況。慰安婦問題について韓国が日本を非難していることも誹謗・中傷の典型的な見本である)、➃社会に分断と憎悪を生じさせる、➄上記4つの手法を繰り返す、というものである(43頁)。かつて、中国共産党と同じ全体主義を採用していたナチスドイツの宣伝相であったゲッペルスが「嘘であっても100回繰り返すと事実になる」と述べたことと同じである。
 以上のようにして社会不安を発生させ、また、時の政権に対する信頼感を喪失させ、選挙で政権の交代を図るというものである。日本でも、2009年に、国内の左翼マスメディアの扇動が効果を発揮し、自民党から民主党に政権が交代したことがある。
 本の第2章では、中国が日本の政・財・官界に根強く影響を及ぼしていることを明らかにしている。具体的に言えば、中国共産党は、長期的な立場で見た場合に将来性のある人間に目を付け、あらゆる面でバックアップする。しかし、すぐに見返りを求めるようなことはしないため、仕掛けられた人物は、単に好意又は善意でそのような便宜を図ってくれるものと思い込み、中国共産党に対し信頼感を持つ。そして、中国の利害に少なからぬ影響が及ぶ重要な問題が生じた場合に、対象者に対し、やんわりと行動を促し、結果、中国の利益になる方向で事が進むことを期待するというものである(57頁)。その人物が中国の意を受けて動くことによって、中国は利益を得(その日本人も見返りを受ける。簡単に言えば、売国奴ということである)、他方、日本の国益は毀損するということになる。
 篠原氏は、自民党内の媚中派は、二階(前)幹事長が首領として君臨しているが、年齢面から次世代のリーダーの登場も時間の問題であると言う(63頁)。では、次世代のリーダーが誰になるのかについて、野田聖子議員の名前をあげる。ここで初めて知ったことであるが、篠原氏は、「チャイナゲート問題」を取り上げる。チャイナゲート問題とは、篠原氏によれば、日本人高齢者が中国で介護サービスを受けられるようにする5か年計画を指す。この事業は、日本に帰化した中国人(A氏)や野田議員が旗振り役を務めている事業であるとされる(64頁)。
 駐名古屋中国総領事館の公式サイトによれば、2020年12月5日の計画発表会には、野田議員と駐名古屋総領事の劉曉軍氏が出席したとされている。さらに注目されるのは、岐阜新聞社の杉山幹夫岐阜県日中友好協会会長も出席したとされている。野田議員と杉山会長は、それぞれ祝辞を述べ「5か年計画」の成功を祝ったとされている(65頁)。ちなみに杉山会長は、岐阜新聞社の最高顧問として高齢にもかかわらずいまだに君臨している。また、このサービスを一手に引き受けることになる「株式会社シルバータイムズ」(岐阜市)の社長(上記のA氏)は、中国の北京出身で現在は日本国籍を持っている。
 A氏について、篠原氏は、「驚くべきスピードで日本において事業展開しています。国籍取得も早いです」(68頁)。「特別なサポートを受けて日本への浸透工作と経済的侵略を果たすため、日本に送り込まれた華人エージェンシーとしか思えません」と指摘する。このA氏であるが、今年1月、岐阜県知事選挙があったが、一時、候補者として名乗りを上げていた事実がある(すぐに降りた。当時、正体不明の新人が出馬したことに対し、何を狙っているのか疑問に思ったことがある)。
 今回、篠原氏の著作を読んで、改めて野田議員の正体について垣間見る機会を与えられた。また、どうして岐阜新聞の社説において、繰り返し繰り返し中国との協調を唱えているのか、合点がいった。
 本日(2021年10月3日)の社説も、中国のTPP加入申請にからんで、「公正で透明性の高い制度によって経済連携を図り、共生を目指してほしい」などと全く的外れで、中国寄りの偏った見解を掲載している。しかし、中国のこれまでの国際社会における行動を検証すれば、中国が、国際法を順守してこなかったこと、また、今後も遵守する気かないことがは誰の目にも明らかである。デタラメもほどほどにしてもらいたいものである。共産主義を掲げた全体主義国家・中国のTPP加入など絶対に認めてはならない。逆に、民主主義国である台湾の加入は積極的に促進すべきである。
 アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ、我が国などが採用する西欧型民主主義の国家制度とは、簡単に言えば、意見の違う者同士が冷静に議論を重ね、その内容(優劣)を有権者が判断し、公正な選挙を通じて国政の運営者を選択するというものである。そうすると、中国共産党の言うことが唯一絶対に正しいという基本理念を絶対に曲げない独裁国中国と、日本が共生することはあり得ないことが分かる。いずれ近い将来、西側諸国と専制主義国家である中国とは、雌雄を決することになると確信する。分かりやすく言えば、その時、日本はいずれの陣営に属するつもりか、態度をはっきりさせる必要があるということである。
 本の第3章から第6章までについては、紹介を割愛するが、興味のある方は本を買って読んでいただきたい。
(追記)本日、岸田総裁が、野田議員を少子化担当相・地方創生相に充てる予定であるとのニュースが入った。私はこれを全く評価しない。理由は述べるまでもないので省略する。
(追記2)最近、中国の多数の軍用機が、台湾の防空識別圏の中に侵入する事態が毎日のように起こっている。このこと一つとっても、中国が平和的手段で物事を解決する気が全くないことが分かる。これまで以上に、日本国内の媚中派議員の動きに注意を払う必要がある。衆議院議員選挙も迫っている。媚中派・親中派の議員は、所属政党に関係なく、全員を落選させよう。

日時:14:39|この記事のページ

世帯合算の適用要件(農地法ゼミ第1回)

2021年10月01日

1 ある人物Aが所有している農地の権利を、他人Bが取得しようとした場合、他人Bの権利取得目的が農業目的である場合は農地法3条の、また、転用目的である場合は同法5条の許可を受ける必要がある。許可を受ける必要があるのは、仮に許可を受けないと、権利の移転又は権利の設定の効力が発生しないためである。つまり、単に契約をしただけでは、権利移転又は権利設定の効力は生じない。
 例えば、農地の所有者であるAと隣人Bが話し合って、Aの農地をBが耕作目的(営農目的)で買い受けるという話がまとまったとする。この場合、AとBは、農地が所在する地の農業委員会に対し、許可申請をする必要がある。いわゆる双方申請の原則である。3条許可を受けて農地の権利(所有権)を取得できるのはBである。
 ここで、許可申請をしても必ずしも許可が受けられるわけではないことに留意しなければならない。農地法3条2項には農業委員会が許可を出すことができる要件が書かれている(正確には、不許可要件が定められている。いずれかに当たると不許可処分となる)。一番問題になるのは2項1号の効率的耕作要件である。その趣旨は、仮に農地の権利を取得しても効率的に耕作の事業が行えないような人物の場合は、権利を取得しても無意味となるから、許可を受けられないということである。
2 次に、効率的な耕作を行うことができるか否かを誰を基準に判断するかという問題がある(判断基準の人的範囲)。一番厳格な立場は、上記の例でいえば、農地の所有権を取得しようとする契約当事者のBのみについて判断するという立場である。ところが、農地法には、世帯合算という考え方があり(2条2項)、B一人だけで判断するのではなく、「住居および生計を一にする親族」の労働力も考慮してよいということになっている。
 例えば、Bが高齢の農家であり、自分では耕作の事業に従事する体力がない場合であっても、住居および生計を一にする親族、つまり、いわゆる同居の親族がいる場合、その労働力もカウントして許否の判断をしてもらうことができるのである。例えば、長男Cは親Bと同居しているが、CとBおよびその親族が皆で支え合って全体で効率的な農業をしている実態があれば、3条許可を受けることができる。
3 では、仮に、何らかの事情があって、長男Cが一時的に実家を離れている場合、つまり不在者状態にある場合はどうか?高齢の親Bしかいないので、許可を受けられないことになるのか?答は、許可を受けられる場合があるのである。その理由として、農地法2条2項1号~4号に示されている一定の場合には、もともと「住居および生計を一にする親族」が、一時的な事情で住居又は生計を異にしていて場合に限り、Bの住所において「住居および生計を一にする親族」つまり同居の親族とみてよいという特例的な取り扱いを定めているからである。
 したがって、例えば、長男Cが遠方の農業大学に就学しているような場合は、許可を受けられる。なぜなら、農地法2条2項は、療養、就学、公職への就任および省令で定める事由(刑の執行又は未決勾留)としているからである。今回、Cの場合、「就学」という事由に該当する。
4 ここで問題を提起する。現在、故郷の農村(甲市)から遠く離れた地(乙市)にある農業大学で学んでいるCが、甲市内にあるA所有の農地を耕作目的で取得することができるか?
 答は、できないということになる。理由は簡単である。Cは現に遠方の土地に住んでおり、仮に乙市内の農地を取得しても効率的に農地を耕作できないからである。また、Bは、3条許可を受けようとするCからみて「同居」の親族に該当しないため、世帯合算の原則を適用することはできない。
 では、仮に自分の父親であるBが甲市において農業経験が豊富で、かつ体力が十分あった場合はどうか?この場合も答は変わらない。子CからみてBは「住居および生計を一する親族」(Cと同居する親族)には該当しないため、Bの労働力をカウントすることはできないのである。
5 農地法3条は、誰が農地の権利を取得するのかの点に着目して、許可要件を定めている。今回の問題の場合、農地の権利を取得しようとするのはあくまでCである(cおよび親Bが共同で取得するのではない)。権利を取得しようとする者以外は、すべて第三者となるが、「住居および生計を一にする親族」に限り、例外的に、効率的耕作要件の判断にあたって取り込むことができる。ただ、Bは、それに該当しない。また、Bは農地法2条2項1号~4号のいずれの事由にも当たらないため、世帯合算が可能となる特例を使うことはできない。
 私見をまとめる。農地法3条の許可を受けようとする者(権利を取得し又は設定を受けようとする者)以外の者は、第三者に当たる。しかし、第三者であっても同居の親族に限って世帯合算が可能となり、許可要件の判断に当たっては考慮してもらえる。ただし、それまでは同居の親族であっても、出稼ぎなどの理由でその地を離れてしまうと、世帯合算の適用はできないことになる(同居していない状態に陥るからである)。しかし、就学などの一定の限られた事由に当たる場合は、同居していなくても依然として世帯合算の適用を受けることができる。
 なお、一部に、就学のために乙市内に居住する子Cが、甲市内にあるA所有農地の権利を取得しようとした場合に、甲市内で農業を営む親Bも世帯合算の対象となることを認める解釈がある。しかし、このような根拠不明の考え方には賛成できない。

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