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弁護士日記

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委任行為と依頼者の事理弁識能力について

2016年05月23日

 交通事故の依頼者が、弁護士に対し事故の紛争解決を依頼しようとした場合、通常は、依頼者に委任意思があるか否かが問題となることはほとんどない。
 ところが、依頼者に重い障害等級などが付いている場合は、要注意である。事件の依頼は、法的には、委任契約の申込みであり、弁護士はこれを受諾するという関係に立つから、依頼者つまり委任者において、本当に事件の解決を弁護士に頼む真意がなければならない。
 通常は、そのようなことは問題にもならないのであるが、上記したとおり、重い障害を負った被害者が、弁護士に契約の申込みをするに当たっては、果たして真意に基づいてされたか否かが問題となり得る。
 例えば、事故の被害者に障害等級2級の重い障害が残っているような場合、仮に、その依頼者が、事理を弁識する能力を欠く常況にある場合(民法7条)は、同人が一人で委任契約の申込みをすることはできないのである。事理を弁識する能力を欠く常況にある者とは、例えば、重い認知症にかかってしまい、正常な判断能力を常に欠いているような者をいう。
 このような場合は、本人に代わって代理権を持つ者が、弁護士に対し、委任契約の申込みをすることになる。その代理人とは、成年後見人といわれる者である。成年後見人となるためには、家庭裁判所に対し、成年後見の審判の申立をする必要があり、普通は、申立時から2か月程度で、成年後見人の審判が行われるようである。なお、弁護士に対し成年後見の申立手続を依頼する場合は、事件によって多少費用は異なるが、弁護士費用として、15万円~20万円が必要となる(なお、申立に要する実費は、全額申立人の負担となる。)。

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農地法読本[三訂版]の発売について

2016年05月11日

 先月の弁護士日記でも予告しておいたが、拙著「農地法読本[三訂版]」が、いよいよ5月の下旬に発売される。農地法読本[三訂版]は、初版が2011年10月4日に出て、その後、改訂版が2014年12月31日に出された。
 今回は、三訂版となる。三訂版は、大成出版社から、本年5月下旬に出る手はずとなっている。三訂版では、農地転用許可権者の改正や、農業委員会法の改正箇所、行政不服審査法の改正、農地中間管理法の紹介など、多方面にわたって内容が変わっている。
 農地法という法律は、重要な改正が比較的頻繁に行われている。農地法は、昔からある古い法律に属するが、伝統のある法律で、こんなに頻繁に改正される法律は、他には余りないのではなかろうか?原因は、おそらく、国の農地政策が、ふらふらしていて、腰が定まっていないからであろう。
 頻繁な改正は、地方自治体において、農地行政を担当する方々にとっては、大きな負担である。法改正があってその内容をようやく理解したと思った矢先に、また、法の根幹部分が改正されたり、法令用語が変わったりするのであるから、本当に大変である。
 その一例として、「農業生産法人」という用語があった。耕作目的で農地の所有権を取得できる法人という意味である。ところが、今回の法改正で、「農業生産法人」という昔から馴れ親しんだ用語が廃止され、「農地所有適格法人」という無機質な印象を与える用語に置き換えられた。今までの農業生産法人という用語では、耕作目的で農地を所有できることが明確に分からないというのが改正の一理由と聞いているが、その理由付けには、少し首をかしげざるを得ない。
 また、何年も前の農地法改正の際、なぜそのような分かりにくい改正をしたのか、非常に疑問に感じた箇所があった。その箇所は、今回の法改正で廃止された。廃止自体は、前進であるから評価できるが、より注文を付けるのであれば、「短期間で見直しを迫られるような稚拙な法改正は行うべきではない。」と言いたい。農林水産省の官僚たちが、自分の思いつきに基づいて適当に農地法を手直しすることは許されないのである。
 とにかく、農地法は、行政法の中では、理解することが難解な法律の1、2を争う法律といってよい。なぜ難解なのか?それは、農林水産省の官僚たちに「農地法を国民に理解していただく」という全体の奉仕者としての心構えが欠如しているからではないかと推測される。農林水産省の官僚たちにとっては、自分たちのみが分かっておれば、それで十分であるという慢心が感ぜられるのである。今後、より分かりやすい法文に改めるなど、農地法の抜本改正を検討するべき時期が来たと考える。                                            
                                  

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