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弁護士日記

弁護士日記

賠償金が1440万円以上増加した

2009年09月30日

 本年4月27日付けの弁護士日記でも紹介した交通事故損害賠償請求事件について、本年9月中旬に名古屋地裁で判決が出た。この事件は、数年前に東北地方のある小都市で発生した死亡事故である(なお、プライバシー保護の見地から、地名、人名、年齢等は全部変更してある。)。商店街にある狭い道路を横断中の女性が、前方不注視のまま右折してきた軽自動車にはねられて死亡したという事件であった。
 裁判の中で、加害者(被告)の弁護士は、加害者には法的責任がないとか、仮にあったとしても被害者には少なくとも50パーセント以上の過失があるとして争ったのであった。しかし、事故態様から見て、加害者の弁護士の言い分が認められる余地はゼロであるし、第一、提訴前に損保会社の担当者自体が10パーセントの過失しか主張していなかったのであるから、誰が見ても50パーセントの過失はあり得ない話であった。一体、加害者の弁護士は、何を意図してそのような不合理きわまる主張をしたのか、今でも私には不明である。
 さて、上記判決は、被害者である女性が近くにある横断歩道を渡らなかった点に5パーセントの過失が認められるとした。また、上記の不合理な加害者の主張については、正当な権利主張を逸脱したものであると指摘した。要するに、裁判において何を言っても許されるものではないことをはっきりと認めたのである。
 ここで、判決文の内容を一部紹介すると、「被告が右折するに際し、左方からの直進車が約10メートルという極めて近い距離に迫っているのに急いで右折を開始したのは極めて危険な運転であるというべきであり、そのような危険な運転をするために右方を見ずに右折発進して本件事故に至っていることからすれば、被告の過失が極めて大きいことは明らかであり、(中略)本件訴訟の始った時点においては、本件事故における被告の過失が大きく、過失相殺の割合が5割になるなどということはあり得ないことを十分に認識し得たというべきである。そうすると、上記のような本件訴訟における被告の主張は、正当な権利主張を逸脱したものというべきであり、慰謝料の増額事由に当たると解される。」とした。
 普通の交通事故裁判において、訴訟上の権利主張が不当であることを理由として慰謝料の増額が認められる事案はほとんどないというのが実情である。その意味で、本件事件の判決は注目に値する。もちろん、遺族である佐藤さんが、弁護士に訴訟を任せっきりにするのではなく、真剣な態度で、弁護士と一緒に法廷に何回も出られたことも影響しているのではないかと思われる。
 この判決は、その後、原告被告の双方から控訴申立てがなかったため、一審判決が確定した。思えば、被害者の遺族である佐藤さんが、最初に私の事務所に来られて相談されたのが平成19年12月のことであった。それから1年9か月後の本年9月に事件は無事解決したのである。
 提訴前の損保会社の担当者の最終呈示額は2000万円であった。それに対し、佐藤さんは、「どうしても納得がいかない」と裁判を決断されたのであった。そして、このたび判決が確定したことによって、事故日からの年5パーセント遅延損害金や弁護士代200万円の加算もあって、損保会社からの振込予定額は3440万円余りになった(なお、現時点では振込みが現実にあったわけではないが、近いうちにそのようになるはずである。)。したがって、最初の損保会社の呈示額と比較すると、賠償金は、正味1440万円余り増加したことになる。率にすると、72パーセントの増加であった。私としても、ほぼ納得がいく結果であった。

日時:13:54|この記事のページ

八ツ場ダムの建設は中止する以外にない

2009年09月24日

 鳩山由紀夫内閣が本年9月16日の夜に発足して、約1週間が経った。各種の世論調査の数字を見ても、おおむね70パーセント前後の国民が鳩山内閣を支持するという結果が出ている。私も鳩山内閣には大いに期待をしている。従来の自民党政権による官僚任せの馴れ合い政治・行政には非常に問題があり、早急な転換が必要と考えていたからである。私以外の多くの国民もそう思っていたのではないだろうか。その証拠に、総選挙で民主党は国民の支持を受け、結果として圧倒的多数の議席を占めることができた。
 さて、自民党による官僚任せの馴れ合い政治・行政の一番悪い見本の一つが、現在話題になっている八ツ場ダムである。民主党は、このダムを無駄使いの象徴的なものとして工事の見直しをマニフェストに明記し、選挙に勝利した。そして、鳩山政権で国土交通大臣に任命された前原誠司議員は、昨日(9月23日)にダム工事現場を視察に訪れ、地元住民との意見交換会に臨もうとした。
 ところが、前原大臣は、就任直後に、八ツ場ダム建設工事の中止を明言していた。これに反発した地元住民は、「建設工事中止を前提とした話合いには応じる余地がない。」という結論を決め、意見交換会への出席中止を決めたのであった。地元住民が、前原大臣の方針に反対する理由は、立場によって多少の差はあるようであるが、要約すると、「自分たちは、最初はダム建設には反対であった。しかし、政府がどうしても建設を推進すると言うので、仕方がなくこれに従った。ところが、今になって政権が変わったからと言って、工事を中止することは到底納得がいかない。今さら、元に戻すと言っても、既にダムを建設することを前提にした生活が始まっているのだから、中止は絶対に認められない。」というものであろう。
 これについて、どう考えるべきであろうか。私の答えを先に言うと、前原大臣はダム工事中止の方針を堅持するべきである、となる。その理由を次に述べる。
 第1に、確かに、地元の人々が過去につらい目にあったことはその通りであろう。その事実は否定しない。しかし、人情論とあるべき政策の方向とは、一致する方が好ましいことは疑いないが、仮に一致しない場合は、人情論を押し切ってでも正しい政策を実現するべきである。
 今回、八ツ場ダムは無駄な事業の象徴として、選挙前に、工事中止を民主党が求めたのである。無駄な事業という説明に嘘がない限り、財政的に余裕のない我が国の民主党政権としては、工事中止以外に選択枝はあり得ない。仮に無駄な事業が今後も漫然と継続されるなら、一般国民がその経済的負担を押し付けられるということを意味するのである。しかし、そのようなことはあってはならないし、避けるのが正論である。
 第2に、地元住民は、移転先に引っ越して、そこで新たな生活を計画してしまったのに、いまさら工事が中止されては、将来に対する展望が開けない、どうしてくれるのか、という気持ちが強いと思われる。突き詰めて言えば、「今後の生活をしっかりと保障してくれ。」ということではないのか。であれば、国としては、八ツ場ダム中止に伴う補償を地元住民に対して実施すれば済むことである。この場合に、一体いくらの補償が妥当なものかについては、前原大臣(国)と地元住民がよく協議をして話をまとめる必要がある。しかし、話合いでどうしても解決しなければ、最終的には、地元住民が訴訟を提起して、裁判所で金額を決めてもらうほかない。
 第3に、民主主義社会では、選挙で多数を握った政党が政権を構成して、その政権が掲げる政策を実施するのが本道である。地元住民の中には、「私たちの事情を考慮することなくダム工事を一方的に中止するのは民主政治に反する」という趣旨の発言をした者もいたようである。しかし、そのような意見には、民主政治について何か心得違いをしているのではないかという疑問を感じる。八ツ場ダムの工事は、国が責任を持って実施するものとされている以上、政権が変わって政策が変更されれば、新しい政策に従って従来の方針が見直されるのは、当たり前の話である。政策の変更は、民主政治に反するものではない。
ただ、従来の国と地元住民との間には法的拘束力のある契約関係が既に成立しており今回のダム工事中止はその契約に反するから違法である、というなら話は別である。その場合は、異論を出すこと自体は筋が通っている。しかし、紛争を解決するには、上記のように双方で時間をかけて話合いを行った上で契約内容を見直すか、あるいは訴訟で白黒を付けるほかないのである。私としては、今回の問題は、今後、遠くない時期に話合いで解決するものと予想する。

日時:13:19|この記事のページ

法律相談のうまい受け方

2009年09月09日

 一般市民の方々が弁護士に法律相談をされる際に、どのような点に留意する必要があるか。弁護士サイドから見た留意事項を以下にあげてみるので、参考になれば幸いである。
(1)相談時には、問題点を記載したメモを持参する。
 法律相談を弁護士に頼む際に、口頭でいきなり相談内容を説明していただくよりは、書面に書いてそれを弁護士に見せた上で相談をしていただいた方が良い。さらに言えば、相談日の前に、あらかじめ事実関係および相談したい点を記載した書面を弁護士あてに送付していただくのがベストである。なぜなら、事前に相談内容が判明しておれば、弁護士としても時間的余裕をもって相談に関する問題点を整理した上で、十分な回答内容をまとめておくことができるからである。
(2)相談者は、あくまで紛争の当事者であることが望ましい。
 法律相談の場合、現に相談に来られるのは、ほとんどの場合、法的な問題を抱えたご本人である。しかし、ときどきではあるが、当事者ではなくてその親族とか身内の方が相談をされることがある。
 例えば、自分の息子とその嫁の仲が悪化して別れ話が出ているが、どうすればよいか、というような相談がこれにあたる。親としては、結婚した息子のことが心配で相談をされているのであろう。その気持ちは分かる。しかし、紛争当事者以外の第三者の話というのは、あくまで紛争当事者から聞いた話にすぎない。したがって、正確性に問題がある場合が多い。弁護士としては、正確な情報をもとに法的判断を下すことを基本とする以上、前提事実があいまいでは、明確な回答をすることもできない。したがって、紛争当事者ご本人が直接、弁護士に相談をされるのが一番望ましいと言える。
(3)弁護士の回答が期待外れの場合
 相談者の立場から言えば、自分の相談に対し、弁護士が自分の期待した回答をすれば、納得がいくし、気分も良いものである。反対に、相談者の期待に反した内容の回答が弁護士の口から出た場合は、気分が悪いし、素直に納得もできないであろう。それは、人間の心理として致し方ない。
 しかし、弁護士の立場から言わせていただくと、あくまでプロとして法律相談を行っているのであるから、「黒」を「白」ということはできない。例えば、交通事故相談において、相談者の方から、このような損害を請求したいという相談があったとする。その場合、弁護士である私としては、従来からの法律解釈や過去の判例から見て判断を行う。その結果、そのような請求をすることは、無理又は極めて困難と判断した場合は、率直に「それは難しいです。」と回答するようにしている。仮に、ここで、内心は無理と判断しても、事件依頼が欲しくて「もちろん請求できます。大丈夫です。私にお任せください。」と回答したとしたら、それは、相談者に対し、重大な背信行為を行ったことになる。そのようなやり方は、あってはならない。
 ただし、正確な回答をお話した上で、それでも相談者が、「難しいことはよく分かりました。でも、請求をしてみてください。」と言われた場合は、私としても、諸般の事情を勘案した上で、請求が認められる可能性が僅かでもある限り、裁判上の請求を行うこともある。
(4)別の弁護士の意見を聞く。
 最近は、昔と違って司法試験の合格者が急激に増加している。一昔前は、年間合格者はおおむね500人程度であった。それが最近では2000人を超える水準にまで行っている。これは、2001年6月に出された司法制度改革審議会の意見書が契機となって司法試験の合格者を年間3000人にまで増加させるという実に無謀な計画が実施されてきたためである。アメリカ流の法曹養成制度・司法制度を理想とする学者や財界人がこれを推進した。また、過去の弁護士会の最高幹部の中にもこの方針に賛成した者が少なからずいたと承知している。
 しかし、現在の多くの弁護士は、このような計画が完全に間違ったものであることに気が付いている。最近、弁護士に対するアンケート調査を中部弁護士連合会が行った。これによれば、司法試験合格者数を年間1000人以下とすべきであるとの回答が実に65パーセントを占めたということである。
 話を元に戻すが、このように弁護士が増加した結果、必ずしも経験と知識が十分に備わっていない弁護士が多く存在するに至った。そのようなヒヨコ弁護士に相談をして間違った回答をされるということもある程度覚悟しておかないといけない。
 そこで、「弁護士に相談したが、回答がおかしい。」と感じられた場合は、別の弁護士に相談をされることをお勧めする。別の弁護士も同様の回答を示した場合は、相談者の単なる認識不足ということになって、結果的に安心できるからである。

日時:13:26|この記事のページ

最新判例紹介(会社役員の逸失利益)

2009年09月04日

 会社役員が交通事故で怪我をして後遺障害が残った場合、あるいは死亡した場合の逸失利益の計算方法については、難しい問題がある。これは、逸失利益算定の基礎となる収入をいくらとみるのが正当かという問題と深く関わるからである。
 ここでいう基礎年収とは、労働の対価部分でなければならないのである。例えば、ある会社の役員Aは、役員報酬として年間1000万円を会社からもらっていたとする。そのAが交通事故で死亡した場合に、遺族は、損害賠償請求権を相続によって取得し、その支払いを加害者に対して求めることができる。その場合、1000万円を基礎として逸失利益を計算することができるのか、あるいは1000万円ではなく、例えば800万円を基礎として計算するべきかという問題である(この場合、1000万円を基礎とした方が、逸失利益が大きくなることは当然である)。この場合、差額の200万円は利益配当的な性格を有し、現実に労働をしていなくても当然に受け取れる部分ということになる。
 この問題について、下級審判例の多くは、役員報酬額の全額を基礎年収とは見ずに、その8割程度を労働の対価部分として見る傾向にある。しかし、この点について、札幌地裁平成21年2月26日判決は、交通事故で死亡した57歳の会社役員の逸失利益について役員報酬額840万円全額を労働対価部分と認定した(判例時報2045号130頁参照)。実務上の参考になるのでここで紹介したい。
 この判決は、逸失利益として5523万円余りを認定したが、その理由として、①被害者が経営していた会社は小規模であること、②被害者はその会社の代表取締役として現場での作業を含めて会社の業務全般を行っていたこと、③被害者が行っていた業務は他の取締役や従業員のそれと比べて極めて重要なものであったこと、④被害者が生前に受け取っていた報酬額も年齢等に比べてさほど高額とは言えないこと、⑤被害者が死亡した後、会社の売上が大きく減少するなど同人の死亡の結果が大きく表れていること、の5点をあげている。
 この判決は、逸失利益として約5523万円、死亡慰謝料として2850万円、合計8379万円余りを認めた上で、これに葬儀費用150万円を加算する一方、受領済の自賠責保険の損害賠償額を控除し、さらに被害者に過失があったことを考慮して、実質的損害額を3817万円余りと認定した。また、弁護士費用として、被害者の妻の分が190万円、3名の子の分として189万円の小計379万円を認めた。なお、判決が言い渡した賠償金額は、合計で4196万円余りであった。
 この事件の場合は、上記の5点が根拠となって、役員報酬の全額が逸失利益算定の基礎収入とされた珍しい事例である。ただし、会社役員と言っても、会社の一従業員から役員にまで出世した場合(いわゆるサラリーマン重役)は、創業者社長とか同族企業の同族役員の場合とは異なって、原則として役員報酬の全額を労働の対価と見るべきであるとする考え方が強い。        

日時:16:14|この記事のページ

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