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弁護士日記

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最新判例紹介(会社役員の逸失利益)

2009年09月04日

 会社役員が交通事故で怪我をして後遺障害が残った場合、あるいは死亡した場合の逸失利益の計算方法については、難しい問題がある。これは、逸失利益算定の基礎となる収入をいくらとみるのが正当かという問題と深く関わるからである。
 ここでいう基礎年収とは、労働の対価部分でなければならないのである。例えば、ある会社の役員Aは、役員報酬として年間1000万円を会社からもらっていたとする。そのAが交通事故で死亡した場合に、遺族は、損害賠償請求権を相続によって取得し、その支払いを加害者に対して求めることができる。その場合、1000万円を基礎として逸失利益を計算することができるのか、あるいは1000万円ではなく、例えば800万円を基礎として計算するべきかという問題である(この場合、1000万円を基礎とした方が、逸失利益が大きくなることは当然である)。この場合、差額の200万円は利益配当的な性格を有し、現実に労働をしていなくても当然に受け取れる部分ということになる。
 この問題について、下級審判例の多くは、役員報酬額の全額を基礎年収とは見ずに、その8割程度を労働の対価部分として見る傾向にある。しかし、この点について、札幌地裁平成21年2月26日判決は、交通事故で死亡した57歳の会社役員の逸失利益について役員報酬額840万円全額を労働対価部分と認定した(判例時報2045号130頁参照)。実務上の参考になるのでここで紹介したい。
 この判決は、逸失利益として5523万円余りを認定したが、その理由として、①被害者が経営していた会社は小規模であること、②被害者はその会社の代表取締役として現場での作業を含めて会社の業務全般を行っていたこと、③被害者が行っていた業務は他の取締役や従業員のそれと比べて極めて重要なものであったこと、④被害者が生前に受け取っていた報酬額も年齢等に比べてさほど高額とは言えないこと、⑤被害者が死亡した後、会社の売上が大きく減少するなど同人の死亡の結果が大きく表れていること、の5点をあげている。
 この判決は、逸失利益として約5523万円、死亡慰謝料として2850万円、合計8379万円余りを認めた上で、これに葬儀費用150万円を加算する一方、受領済の自賠責保険の損害賠償額を控除し、さらに被害者に過失があったことを考慮して、実質的損害額を3817万円余りと認定した。また、弁護士費用として、被害者の妻の分が190万円、3名の子の分として189万円の小計379万円を認めた。なお、判決が言い渡した賠償金額は、合計で4196万円余りであった。
 この事件の場合は、上記の5点が根拠となって、役員報酬の全額が逸失利益算定の基礎収入とされた珍しい事例である。ただし、会社役員と言っても、会社の一従業員から役員にまで出世した場合(いわゆるサラリーマン重役)は、創業者社長とか同族企業の同族役員の場合とは異なって、原則として役員報酬の全額を労働の対価と見るべきであるとする考え方が強い。        

日時:16:14|この記事のページ

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