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弁護士日記

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違法行為と迷惑行為の関係

2024年06月16日

 朝が来て新聞を読むと、毎日のようにいろいろな事件や事故についてのニュースが載っている。「人間社会あるところに、必ずトラブルあり」ということであろう。昆虫や動物を観察しても、皆、自分の利益を最優先して行動している。人間も動物の一種である以上、この根本法則から外れることはない。
 一般市民を対象とした法律相談を行っても、トラブルの元は、全て自分の利益と他人の利益との衝突から生じている。しかし、トラブルを一定のルールを適用して解決することは可能である。その代表例が、国家の定める法律であり、地方公共団体の定める条例である。いわゆる法令である(細かくいえば、政省令なども法令に含まれる)。
 国や公共団体は、行政法令を定めることによって社会秩序を保ち、国民の平穏な生活を維持しようとする。したがって、ある者の行為が、行政法令に違反した場合、その行為は違法行為となり、原則として刑罰を科され、あるいは行政処分の対象となる(ただし、必ず現実に刑罰が科され、あるいは行政処分の対象とされるわけではない。例えば、違反者に対し、行政指導を行い、違法状態を解消して、これでお終いという場合もある)。
 問題は迷惑行為である。迷惑行為の大半は、明確に行政法令に違反しない。例えば、コロナが流行していた時期に、行政が、一般市民に対し、「マスクの着用をお願いします」と呼びかける行為に対し、「どこの法律にマスクを着用せよと書いてあるのか」と反論し、物議をかもす人物もいた(実に低レベルの唾棄すべき人物である)。理屈をいえば、マスク着用の義務はない。したがって、例えば、ある公的会場に入る際に、係員の呼びかけを無視してマスクを着用せずに入ることも、行政法令違反となるわけではない。
 問題は、しかしこのような行為は、迷惑行為に該当するということである。迷惑行為とは、もちろん行政法令に違反する迷惑行為もあるが、マスク不着用の例のように、行政法令に反しない迷惑行為もある。
 ここで、問われるのは、そのような迷惑行為を実行している人物の評価である。普通の一般常識を備えた社会人の場合、自分が引き起こした迷惑行為によって自分の社会的評価が低下することや、周囲から非難の眼差しを向けられることは、決して気分の良いことではない。特に、社会的評価の高い人物ほど周囲の評判に敏感である。したがって、普通の社会人(大人)は、何も言われなくてもマスクを着用して公的会場に入る。
 ここで重要な点は、行政法令に違反しない迷惑行為であっても、民法などの一般法に違反した場合は、違法となり、損害賠償の請求を受けたり、あるいは迷惑行為の停止を求められたりするということである。この点を勘違いしてはいけない。法律の素人は、この点が全く分かっていないことが多い。最近も、他の候補者の立会演説会を妨害することも、政治活動の自由に含まれると誤解し、結果、警察に逮捕された阿呆もいる。
 例えば、騒音については、行政法令によって細かく規制が定められており、その要件に該当すると行政法令違反となる(違法行為)。反面、行政法令の規制の網から外れると、規制の対象とはならない。ここでは、法律による行政の原則から、いわば形式主義が採用されている。
 しかし、行政法令に抵触しなくても、民法の不法行為に該当することは十分にあり得る。したがって、このような相談を受けた弁護士としては、行政法令の趣旨を考え、民法の不法行為の適用の可能性がないか否かを十分に考慮する必要がある。
 いずれにしても、一般の良識を備えた弁護士としては、単純に、行政法令に違反していない以上迷惑行為を放任することもやむ得ないという誤った立場に立つのではなく、人権保障の観点からも、国民の平穏な生活と社会秩序を維持することが重要という大原則(基本的ルール)を弁えて行動することが肝要となる。
 

日時:13:48|この記事のページ

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