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弁護士日記

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相も変らぬ朝日の社説

2013年04月03日

 本年3月31日に朝日新聞の社説が掲載された。タイトルは、「法律家の養成 利用者のためを貫け」である。かつて政府が打ち出した司法試験合格者3000人の目標は、いわば「かすみ」のようなものであったことが最近判明してきた。そのため、政府も司法試験の合格者年3000人計画が全く現実を無視した無謀なものであったことを認めざるを得なくなり、合格者数を目標としては掲げないという方針に転換した、という中間提言案に接したばかりであった。
 ところが、朝日新聞の論説委員は、この方針転換に必ずしも賛成しないようである。私が3月31日の社説を読んで感じたことは、一体、朝日新聞は何がいいたいのか。さっぱりわからないということである。体裁のよい言葉だけが羅列され、何を訴えたいのかその論旨が不明という、悪文の典型例といってよい。一体、誰がこのようなお粗末な社説を書いて、わざわざ国民に読ませているのであろうか。
 そこで、私なりに、朝日新聞は何を言いたいのかを考えてみた。社説の冒頭は、「法律家のため、ではない。あくまでも市民、利用者の視点から考える」とある。いつもの朝日のパターンである。自分だけは国民の側に立ち、反対側に立つ対象者(法律家)を批判するという手法である。いわば「正義は常に我にあり」という朝日新聞流のパターンである。
 事情をよく知らない読者がこの冒頭の文章を読むと、国民一般の利益と、司法を司る法律家の利害は一致していないという誤解に陥る。しかし、これは誤解である。
 私の思うところ、一般国民の利益と法律家の利益が、矛盾するとはいえない。一般国民は、我が国の司法制度を利用することによって、自分の権利利益を守ることができる。また、法律家は一般国民が法的なサービスを享受できるよう、お手伝いをする。当然に報酬もいただく。そのような関係の下で、司法は日々運用されている。
 さて、朝日新聞が盛んに唱える「司法改革」とは何を意味するものであろうか?過去から何回も掲載されている複数の社説を読む限り、法曹人口を増大させることがすなわち国民の利益増進につながるという主張に尽きるのではないのか。
 しかし、朝日新聞のいう法曹人口の増大という言葉の意味は、きわめて曖昧である。なぜなら、法律家のうち、裁判官と検察官は公務員であるから、国会の制定する法律で定員が決まる。給料も法律で決まる。定員と給料について、法律家である裁判官と検察官は決定権はないのである。したがって、法律家のうち、こと裁判官と検察官に限れば、法曹人口の増大の責任を負うのは立法府であり、行政府である。法律家自身には責任はない。
 法律家のうち、残るは弁護士である。弁護士は昔から自由業の典型とされてきた。要するに、自分自身の力で食えということである。弁護士が弁護士業を継続するためには、事務所や事務員等の一定の物的人的設備を要する。その上で、一般国民から仕事の依頼を受け、事件をうまく解決して報酬金をいただき、日々の生活を送るのである。
 ここで、あらためて朝日新聞の主張を確認する。法曹人口の増大は国民の利益につながるというものであった。
 しかし、法曹3者のうち、弁護士だけは自分で生活費を稼ぐ必要があるから、弁護士人口が増大するにつれ、仕事にあぶれる弁護士が必ず出てくる。そのような弁護士は、廃業するほかない。また、司法試験に合格しても、先輩弁護士が生活苦に陥っている姿を見て、最初から弁護士登録をしない若手が出てくる。現に、司法試験合格者の何割かに相当する若手は、弁護士登録をせずに他の分野に活路を見出しているのである。
 ということは、一定の合理的な人数を超える弁護士は存在できないということである。リンゴが大豊作になると、供給が需要を大幅に上回りリンゴの値段が暴落し、普通の値段では売れなくなるという経済現象と同じである。かつて、政府の唱えた合格者3000人などという話は、リンゴの話と本質は同じであって、最初から経済的合理性のない計画であった。法曹人口が健全にその数を増やしてゆくには、せいぜい合格者1500人程度にとどめる必要があったのである。
 以上、朝日新聞の社説はいまだに間違っているというほかない。
                                     

日時:16:52|この記事のページ

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