058-338-3474

お問い合わせ電話番号
受付時間:午前10時~午後5時

電話でのお問い合わせ

弁護士日記

弁護士日記

賠償金が1440万円以上増加した

2009年09月30日

 本年4月27日付けの弁護士日記でも紹介した交通事故損害賠償請求事件について、本年9月中旬に名古屋地裁で判決が出た。この事件は、数年前に東北地方のある小都市で発生した死亡事故である(なお、プライバシー保護の見地から、地名、人名、年齢等は全部変更してある。)。商店街にある狭い道路を横断中の女性が、前方不注視のまま右折してきた軽自動車にはねられて死亡したという事件であった。
 裁判の中で、加害者(被告)の弁護士は、加害者には法的責任がないとか、仮にあったとしても被害者には少なくとも50パーセント以上の過失があるとして争ったのであった。しかし、事故態様から見て、加害者の弁護士の言い分が認められる余地はゼロであるし、第一、提訴前に損保会社の担当者自体が10パーセントの過失しか主張していなかったのであるから、誰が見ても50パーセントの過失はあり得ない話であった。一体、加害者の弁護士は、何を意図してそのような不合理きわまる主張をしたのか、今でも私には不明である。
 さて、上記判決は、被害者である女性が近くにある横断歩道を渡らなかった点に5パーセントの過失が認められるとした。また、上記の不合理な加害者の主張については、正当な権利主張を逸脱したものであると指摘した。要するに、裁判において何を言っても許されるものではないことをはっきりと認めたのである。
 ここで、判決文の内容を一部紹介すると、「被告が右折するに際し、左方からの直進車が約10メートルという極めて近い距離に迫っているのに急いで右折を開始したのは極めて危険な運転であるというべきであり、そのような危険な運転をするために右方を見ずに右折発進して本件事故に至っていることからすれば、被告の過失が極めて大きいことは明らかであり、(中略)本件訴訟の始った時点においては、本件事故における被告の過失が大きく、過失相殺の割合が5割になるなどということはあり得ないことを十分に認識し得たというべきである。そうすると、上記のような本件訴訟における被告の主張は、正当な権利主張を逸脱したものというべきであり、慰謝料の増額事由に当たると解される。」とした。
 普通の交通事故裁判において、訴訟上の権利主張が不当であることを理由として慰謝料の増額が認められる事案はほとんどないというのが実情である。その意味で、本件事件の判決は注目に値する。もちろん、遺族である佐藤さんが、弁護士に訴訟を任せっきりにするのではなく、真剣な態度で、弁護士と一緒に法廷に何回も出られたことも影響しているのではないかと思われる。
 この判決は、その後、原告被告の双方から控訴申立てがなかったため、一審判決が確定した。思えば、被害者の遺族である佐藤さんが、最初に私の事務所に来られて相談されたのが平成19年12月のことであった。それから1年9か月後の本年9月に事件は無事解決したのである。
 提訴前の損保会社の担当者の最終呈示額は2000万円であった。それに対し、佐藤さんは、「どうしても納得がいかない」と裁判を決断されたのであった。そして、このたび判決が確定したことによって、事故日からの年5パーセント遅延損害金や弁護士代200万円の加算もあって、損保会社からの振込予定額は3440万円余りになった(なお、現時点では振込みが現実にあったわけではないが、近いうちにそのようになるはずである。)。したがって、最初の損保会社の呈示額と比較すると、賠償金は、正味1440万円余り増加したことになる。率にすると、72パーセントの増加であった。私としても、ほぼ納得がいく結果であった。

日時:13:54|この記事のページ

ページの先頭へ

Copyright (c) 宮﨑直己法律事務所.All Rights Reserved.