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弁護士日記

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賃貸借の更新(農地法ゼミ第2回)

2021年10月06日

1 一般に賃貸借契約を締結する場合、賃貸借の期間を定めることが多いといえる。例えば、農地を農地として使用する内容の賃貸借において、期間を○○年と定めた場合は、末日の終了によって期間が満了する(民141条)。
 ここで、例えば、賃貸人Aと賃借人Bの間で農地の賃貸借契約を適法に締結した場合、つまり双方が農地法3条の許可を受けて農地の賃貸借が行われた場合、期間の末日の終了をもって賃貸借契約は当然に失効するのであろうか。答えは、失効しないということである。
 期間の定めがある農地の賃貸借の場合、期間の満了をもって契約関係を終了させようとする当事者は、期間の満了の日の1年前から6か月前までの間に、相手方に対し、更新拒絶の通知を行う必要がある。
2 更新拒絶の通知とは、賃貸借の期間が満了した場合、その時点で賃貸借関係を解消するという意思表示である。通知の方法は、手紙、FAX、電話、メール、口頭での申入れなど、いずれの方法でも構わない。ただし、通知をしたという事実の有無をめぐって後日争いになるおそれがあるため、できる限り内容証明郵便など、証拠が残る方法が望ましい。
上記期間内に更新拒絶の通知をしておかないと、後記のとおり、賃貸借が更新されてしまう。ただし、更新拒絶の通知をしようとした場合、農地法は、事前に都道府県知事の許可を受けておくことを求めており(法18条1項柱書)、許可を受けずに通知しても無効となる(同条5項)。
この農地法18条の許可であるが、同条2項に許可を受けられるための要件(許可要件)が明記されており、現実には許可を受けることは容易とはいえない。
3 では、農地賃貸借の当事者が更新拒絶の通知をしなかった場合に、どのような効果が発生するか。法定更新という制度が適用されるが(法17条)、その結果、「従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなす」ことになる。
ただし、従前の賃貸借と同一の条件といっても、期間については最初の賃貸借の期間が再び適用されることになるのではなく、期間の定めのないものとして存続する(最判昭35年7月8日)。
例えば、最初の賃貸借が期間10年のものであった場合、法定更新の結果、期間の定めのないものとなる。ここで、期間の定めのない賃貸借の意味が問題となるが、文字どおり賃貸借の期間が定められていないものをいう。永久の賃貸借という意味ではなく、契約当事者は、いつでも解約の申入れ(解約告知)をすることができる(民617条1項)。解約の申入れがあった場合、その日から、土地の賃貸借の場合は1年を経過することによって契約が終了する(同項1号)。
ただし、解約申入れをする場合も、農地の賃貸借の場合は、あらかじめ都道府県知事の許可を受ける必要がある(法18条)。
4 農地の賃貸借の場合、上記のとおり、農地法17条によって都道府県知事の許可を受けておく必要がある。そうすると、農地を賃貸した地主の側からみた場合、いったん農地を賃貸すると、契約解消の前提として農地法の許可を受ける必要があり、また、容易にはその許可が出ないことから、賃貸農地が半永久的に返ってこないという懸念を持つのは当然のことである。
 そこで、農地法の定める法定更新の適用がない賃貸借の制度として、農業経営基盤強化促進法によって、市町村が作成する農用地利用集積計画に定めてもらう方法による利用権設定というものがある。ここでいう「利用権」とは、農地を利用する権利という意味であるが、この利用権には法律上3つのものがある。しかし、現実には、賃借権と使用貸借による権利に絞られる。
5 農地法17条ただし書によれば、農用地利用集積計画に定められた賃借権については法定更新の適用がないとされている。
 例えば、利用権の設定を行う者(賃貸人)Aと利用権の設定を受ける者(賃借人)Bの間で、A所有農地甲について期間5年の賃借権が設定されたとする。Bは5年にわたり耕作を継続した。普通は期間が満了した時点で、Aは、Bに対し農地甲の返還を要求することになる。
 仮にBがAの要求を拒んだ場合、Aは、農地甲の返還を求めて訴訟の手続をとることができる。その結果、Aは勝訴し、Bは農地甲を明け渡す義務を負う。
6 仮に上記事例で、5年の期間が満了した後も、Bが農地甲の耕作を平穏に継続し、また、Aも異議を述べようとしなかった場合、A・B間の法律関係はどうなるであろうか。
 先に結論をいえば、Bには何ら正当な耕作権(賃借権)は生じないということになる。Bによる耕作は、あくまで事実上のものにすぎず、法的な権利ではない。ただし、そのようなA・B間の関係が極めて長期間継続した場合、Bによる賃借権の時効取得が可能となる場合があり、その場合、農地法3条の許可は不要と解される(最判平16年7月13日)。
 なお、期間経過後も、Bが事実上A所有の農地甲を耕作している場合に、民法619条1項の賃貸借更新の推定規定を使って黙示の更新を認め、権原ある賃借人として処遇しようとする見解が一部にある。
しかし、賛成できない。なぜなら、賃貸借の期間経過後、Bは無権利者の地位に戻るからである(ヤミ小作人)。Bが農地甲について有効な賃借権を取得するためには、あらためて農地法3条許可を受けるか、あるいは上記の農用地利用集積計画に定めてもらう必要があると解する。

日時:16:55|この記事のページ

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