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弁護士日記

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共有者不明農地の賃貸借(農地法ゼミ第6回)

2022年05月03日

1 最近、民法の物権法の分野で重要な改正があった。令和3年4月28日法律24号「民法等の一部を改正する法律」である。施行日は令和5年4月1日のようである。したがって、法律の施行日まで後1年を切った。そこで、今回は、改正法に則り重要問題について以下解説する(一般に法律というものは、年々改正が行われているのが通常であるから、最新の情報による解釈を心掛ける必要があろう。)。
2 まず、事例を掲げる。農地の所有者であった太郎が死亡し、相続人として妻竹子、長男一郎、次男二郎、三男三郎の四人が権利を承継した。4人で協議した上、遺産分割手続が終わり、亡太郎の所有していた農地甲は、4人が法定相続分どおり権利を承継することになった。農地甲に共有関係が生じたということである。共有者である4人の持分権は、竹子が2分の1、一郎、二郎及び三郎は、各自6分の1を取得した。現在、農地甲を耕作しているのは竹子一人であり、長男一郎は本業が公務員であるため、竹子と同居し、竹子の農業の手伝いをしている。他方、二郎と三郎は、遺産分割の協議が終わってから行方をくらまし、今生きていることは疑いないが、どこで生活しているかは不明である。
 農地甲の隣には、農業法人Aが他人から借りている農地があるが、同法人は、竹子が耕作している農地甲について賃借権を設定して欲しいと希望している。これに対し、竹子は自分が高齢であるためそろそろ農業を辞めたいと考えており、法人Aからの話に賛成である。他方、一郎はその話には乗り気ではない。なお、二郎と三郎とは全く連絡がつかないため、どのように考えているか不明である。果たして、法人Aは、農地甲について賃借権を設定してもらえるか?
3 答えを先に言えば、設定してもらえる可能性は高いということである。
 しかし、問題点が多くある。農地甲は、4人の共有物であるため、4人のうち何人が賃借権設定に賛成する必要があるのか、という問題である。本件では、二郎と三郎は行方不明であり、その意思を確認することができないという特別の事情がある。
 さらに、大きな問題点として、農地甲について仮に賃借権が適法に設定された場合、以後、当該賃貸借には農地法の適用があるため、農地法の定める特殊の制度が賃貸借にも適用されるという点がある。具体的には、後記するところの法定更新の制度(農17条)と、農地の賃貸借の解除、解約等の場合に農地法18条の許可をあらかじめ受ける必要があるという点である。
4 ところで、改正民法251条1項は、共有物の変更を行うには、共有者全員の同意が必要であると規定する。そこで、一体「変更」とは何を意味するのかという点が問題となる。改正民法は、同項かっこ書で「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」と規定する。そのようなものは、いわゆる軽微な変更という類型になる。
 これに関連して、最高裁の平成10年3月24日判決は、農地を宅地に転用する行為について、変更に該当するとの判断を示している。農地が非農地化するのであるから、改正法でいうところの「形状又は効用の著しい変更」を伴うものに当たる。他方、農地を農地のまま他人に賃貸する行為については、最高裁は、今のところ明確な判断を示していない。
 従来の条文では、「変更」の意味が今一つ明確ではなかったが、今般の改正によって、「形状又は効用の著しい変更」をもたらさないものは変更には当たらず、「管理」に当たるという条文が新設されたことから、農地を農地として賃貸する行為は、管理行為に当たると解することが可能となった。私見も同様の解釈をとる。
5 そして、共有物の管理について、改正民法252条1項は、共有持分権者の過半数で決定することができると定めた。ただし、本件のように共有者の一部の者(二郎と三郎)が所在不明者に該当する場合は、同人ら以外の竹子と一郎の方で、裁判所に対し申し出て、過半数で共有物の管理に関する事項を決定できる旨の裁判を行うことができる(同条2項)。仮に竹子又は一郎の申立が認められ裁判が行われた場合は、竹子と一郎のみで、共有物である農地甲の管理に関する事項(農地甲を法人Aに賃貸するという内容)を決定することができる。そして、竹子と一郎の持分権を比較した場合、竹子の方が圧倒的に大きいことから、竹子が賛成すれば、仮に一郎が反対しても過半数の同意を得たことになる。
6 だたし、賃貸借の期間については制限がある(同条4項)。山林以外の土地(農地を含む。)については5年を超えることができない。仮に5年を超えて賃貸借契約を結んだ場合、5年以内の期間においては有効と解する。5年を超えた期間についてはその部分のみが無効となると解する(平野裕之「債権各論Ⅰ」260頁参照)。
7 では、このような契約についても法定更新の適用があるか?今のところ、明確に判断を示した判例は見当たらないので、原則どおり適用があると解するほかない。したがって、仮に5年間の期間が満了した場合、満了以前に適法に更新拒絶の通知を賃貸人の方から賃借人に対して行っておかないと、以後、期間の定めのない賃貸借関係が存続すると解される。結局、農地の賃貸借については、(今後農地法の一部改正がない限り)5年の期間制限は有名無実のものとなる危険がある。

日時:18:59|この記事のページ

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