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弁護士日記

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農地事務担当者研修会in名古屋を終えて

2022年05月23日

 本日(2022年5月23日)、私は、恒例となっている第1回農地事務担当者研修会に講師として招かれ、90分にわたってお話をした。会場は、名古屋市中区にある愛知県自治センターである。この研修会は、愛知県が毎年春と秋の年2回主催しているものであり、講師陣は、東海農政局の職員(1名)、愛知県の職員(計3名)及び私となっている。
 受講者は、愛知県下の市町村農業委員会の担当職員と愛知県の出先機関の担当職員であり、合計すると約100名となる。講義の内容は、年によって多少の違いはあるが、おおむね、農地法3条許可制度、農地転用許可制度、農業振興地域について、開発許可制度について、そして私の担当である農地法の理解に必要な行政法の知識について、となっている。
 この研修は、東海農政局の職員及び愛知県の担当部局の職員が、市町村農業委員会の担当者に対し、実務能力を向上させるために行っているものと理解できる。いわば、許可事務について、その解釈と運用を事実上決定できる職員による許可基準などの解説であり、処分権限を持つ立場にある当局の考え方を知る上で不可欠のものと言い得る。大変意義のある研修である。
 今回私が取り上げたテーマは、「取消訴訟の訴訟要件と国家賠償法上の違法について」という内容と、「行政指導と不作為の違法確認訴訟について」という内容であった。
 前者の処分の取消訴訟については、そもそも訴訟の対象(訴訟物)が処分であることが大前提となっており、処分以外のものを判決で取り消してもらうことはできない。この点が争われることがある。また、取消訴訟について裁判所で本案審理をしてもらうためには、上記の審理の対象が処分であること以外にもいろいろな要件があり、これらをまとめて「訴訟要件」と呼んでいる。訴訟要件を一つでも欠くと、却下判決となってしまう(原告敗訴)。
 また、国家賠償法であるが、違法な公権力の行使をした公務員について、その公務員を雇っている(任命している)国又は地方公共団体に賠償責任が発生する制度である。国家賠償法1条の「違法」が認められるための判断枠組みとして、判例の多くは職務行為基準説を採用していると思われる。公務員が職務を行う上で職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかった場合に「違法」が認められるという考え方である。
 次に、行政指導については、我が国において非常に多用されている仕組みと言える。しかし、便利な「行政指導」については、行政手続法によって、いろいろな規制がかけられており、自由にその手法を使うことはできない。行政指導は、あくまで相手方の任意の協力に期待する制度である。何でもできるわけでは決してない。行政指導に対する法的規制については、それを知っている公務員と、全く知らない公務員では、大きな落差があると思われる。
 県によっては、研修を行うことに余り関心がなく、何かとお金と手間暇のかかる研修会を開催することに消極的な県もあるように思える。職員研修をしなくても大きな実害がこれまで顕在化していなかったため、何も手を打ってこなかったということではなかろうか。しかしこのままでは、各自治体の職員間で執務能力に自ずと格差が生まれることは必然である。であればそれを是正する方向に進むべきである。県政のトップに立つ人物(県知事)の意識改革が急務となる。

日時:22:06|この記事のページ

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