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弁護士日記

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「判例からみた労働能力喪失率の認定」(新日本法規出版)が来年出ます

2016年12月09日

 当事務所では、長年にわたって交通事故訴訟を中心に業務を行っている。
 交通事故訴訟の本質は、一言で表すと、不法行為による損害賠償請求という性格を持つ。もちろん、人身事故においては、自賠法という法律が適用されるため、民法の適用が議論となることは比較的少ない。
 人身事故においては、いろいろな点が争点となるが、特に被害者に後遺障害が残ったような事故の場合は、労働能力の喪失率がどの程度のものかを巡って大きな争いとなることが多い。
 この場合、裁判に先立って、被害者請求又は事前認定という方法を経て、自賠責保険又は損保料率機構によって後遺障害の有無と等級が認定されていることが一般の姿である。仮に、障害等級の認定が示されている場合は、自賠法施行令に記載のある労働能力喪失率が、原則的に適用されると考えてよい。
 例えば、ある被害者Aさんに、8級の後遺障害等級が認定された場合は、45%の労働能力喪失率となる。ところが、いざ、被害者が訴訟を提起して、「自分は8級の障害等級認定を受けたのであるから、労働能力を45%失ったのである」と主張しても、加害者側がこれを素直に認めることは皆無に近い。
 被告となった加害者は、いろいろな理屈をつけて、例えば、「45%も労働能力を失っていない。せいぜい27%程度にすぎない」などと言って争ってくるわけである。ここで「争ってくる」という表現をとったが、加害者自身がそのように考えているのではない。そのような理屈を考え出すのは、加害者が契約している損害保険会社の下請け弁護士である。
下請け弁護士は、形式上は、加害者から委任状をもらい、加害者の代理人として行動する。しかし、当の加害者は、自分で弁護士費用を出すわけではなく、弁護士代を負担しているのは全部損害保険会社である。
 下請け弁護士は、損害保険会社からお金をもらう立場にあるため(経済的な従属関係の存在)、実質的には、損害保険会社の意向に従って行動することが通常である。損害保険会社としては、被害者に支払う賠償金が少なければ少ないほど利益があがることになるため、下請け弁護士としても損害保険会社のために、いろいろと頑張って理屈を考え出すわけである。
 問題は、損害保険会社の弁護士がいろいろと理屈を述べた場合、その理屈が裁判所によって認められる確率がどの程度なのか、という点である。これについては、従来から、自賠責保険又は損保料率機構の障害等級認定と裁判所の障害等級認定は、同じであることが多いと言われてきた。しかし、その点に関する確たる資料があるわけでもない。
 そこで、私は、今回、最近出された100判例を分析したのである。
 その結果、全体としては、自賠責保険又は損保料率機構の等級判断と、裁判所の判断が一致しているものは5割強であり、5割弱のものは、不一致という結果が出た。今回の調査結果は、「判例からみた労働能力喪失率の認定」という本となって、来年の春に新日本法規出版から発売される予定である。
 ただし、ここで言う「不一致」とは、必ずしも、自賠責保険又は損保料率機構が判断した等級よりも裁判所が判断した等級の方が軽かったということではない。自賠責保険又は損保料率機構によって比較的軽い等級認定を受けたもの(12級~14級)については、逆に重い等級認定が裁判所によって行われているものが散見された。
 もっとも、今回の分析は、たかだか100判例の分析にすぎないため、より正確なデータを得るためには、少なくとも500程度の判例を対象とする必要があるのではなかろうか。
現実の交通事故裁判を見た場合、仮に主張しても時間の無駄であって、結果として裁判官の負担増になるだけの、不合理な主張が加害者側の弁護士から出されることが多い。この場合、担当裁判官としては、無理筋の主張と分かっていても、主張自体は一種の権利行使であるから、原則的に止めてもらいたいと言うことはできない。後は、事実認定を間違いなく行って判決を書く苦労が残るだけとなる。私としては「ご苦労様」と言うほかない。
 私としては、双方の弁護士とも、無理・無駄な主張を行うことに時間と労力を費やすことは、いい加減止めにすべきと考える。まともな争点に絞って短期間のうちに主張立証を済まし、その後は、裁判官の示す適切な和解案を双方が受諾することによって、事件を早期に解決する方が生産的であると思うが、いかがであろうか。

日時:16:29|この記事のページ

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