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弁護士日記

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危険な場所に生徒を送った学校の責任は重い

2026年03月18日

 新聞報道によれば、今月16日午前10時12分頃、沖縄県名護市辺野古沖の海上で高校生らが乗った船2隻が波にあおられて転覆し、2隻に乗船していた全員が海中に落下したが、うち2名が死亡したとのことである。死亡した2名のうち、1人は船を操縦していた船長(71歳)であり、もうひとりは京都の同志社国際高校の生徒(17歳)であったという。
 その後の報道によれば、死亡した高校生は、同志社国際高校が主催した研修旅行に参加していた。また、転覆した小舟を運航していた主体は、「ヘリ基地反対協議会」という市民団体であり、業務としてお客を乗船させるための事業登録もなかったと聞く(ただし、現時点での情報に基づく)。ここでいう「業務」とは、通常、営利・非営利を問わずお客を乗せる行為を反復継続している状態を指す。したがって、上記の市民団体は、適法とは言い難い業務を継続していたと判断される(わかりやすい例をあげると、「白タク」のようなものである)。
 しかも、当日は波浪注意報が出ていたという。一体、2隻の小型船は、いかなる経緯で、波浪注意報を無視して出航したのか?ここで、転覆した2隻の運航主体は、「ヘリ基地反対協議会」であることは疑いない。ただし、現実に船を操縦していたのは2名の船長である。
 ここはあくまで推測にとどまるが、2名の船長(うち1名は今回の事故で死亡)は、上記の市民団体の責任者(ないし担当者)の指示に従って、当日も船を出すべく事前準備をして当日の朝を迎えた。当日の朝になって、2名の船長は、波浪注意報が出ていることを知っていたのか知らなかったのかは現時点では不明であるが、ともかく自己判断に基づいて船を出すことを決めた。その結果、今回の惨事につながった。
さらに付け加えると、2隻の船には、研修旅行の引率役である教師が乗船していなかった。教師自身は陸(おか)にいて、自身の安全を確保しつつ、生徒だけは危険な船に乗せたということである。これは引率者にあるまじき不適切行為であり、これは、今回の事故が、極めて杜撰な管理体制の下において生じたことを示す証拠である。昨夜あった学校側の記者会見では、船を出すか否かは、船長に判断を委ねていたという。普通の登録を受けた一般の船会社が運営する場合は、原則それで済むかもしれない。
 しかし、今回は、無登録の市民団体が運航する小型船であり、教師も乗船していない状況下にあっては、生徒たちが、適切に海の状況を判断して船長に対し出航を止めるよう要請することは100%不可能である。結果、船長の軽率で間違った判断によって事故が発生したのである。ここでは、間違った判断をした当の船長自身の運航経験・技能・経歴等も問題となろう。ただし、今後、市民団体の方から、今回の事故は予測不能の天災のようなものであり、当方には法的責任はないという主張が出る可能性がある。
 死亡した2名のうち、研修旅行に参加した高校生については、全く自分が関与しない(できない)状況下で、このような惨事に巻き込まれて死亡したのであるから、残されたご遺族の方々の気持ちを考えると、実に暗澹たる気持ちにならざるを得ない。当然、法的責任を負う者(法人または個人)に対し、死亡事故に基づく損害賠償責任を問うことができる。
 私見によれば、法的責任を負うのは、第1に、適法とは言い難い業務を継続していた市民団体である。ただし、ここで問題が生じる。果たして損害賠償責任を果たすだけの財務力があるのかという点である。もちろん、保険という制度もあるから、損害賠償責任保険に加入できていれば問題ない。しかし、上記市民団体がそこまで用意周到に対策をとっていたのかは疑問である。 
 法的責任を負うのは、第2に、高校生が乗船していた船を自ら操縦し、かつ、誤って転覆させた船長である(業務上の過失責任)。しかし、この船長に高額の損害賠償責任が果たせるとは到底思えず、全くあてにならない。
 そうすると、損害賠償責任を果たす財務力がある者としては学校しか残らない。私見を先に述べれば、同志社国際高校の法的責任は免れない。その根拠は以下のとおりである。
 第1に、なぜ学校は、「平和学習」の名の下に、大切な生徒をこのような危険な海に送ったのか?今回の「平和学習」という名目は、実際には偏向教育にほかならないと考える。一体誰がこのような研修旅行を提唱(発案)し、誰が賛成し、その際、どのようなプロセス(議論と決定方法)を経て決定されたのか?ここで、これまでの慣行に従って実施したまでという弁解が出たとしても、そのような屁理屈は全く通用しない。学校行事の是非は、不断の見直しが求められるのである。真の平和教育の目的を果たすのであれば、鹿児島県にある「知覧特攻平和会館」を訪問した方がはるかに良い。
 そもそも、今回、生徒が乗った船は、抗議活動(市民運動)をするための船である。何に抗議しているかといえば、辺野古への米軍基地の移転について反対をしているのである。しかし、辺野古への移設は、日米両政府の合意に基づいて決定されたものであり、もともと適法かつ合法なものである。その合法的行為に対し、上記市民団体は、独自の意見を基に反対運動をしているのである。
 しばしば左翼系団体・政党は、「国際法を守れ」と声高に叫ぶ。一方、日米双方の政府が適法に協定した合法的な行為に対し、意味不明の反対をする。いわゆる左翼のご都合主義である。国際法というのは法的ルールの一種である。日米両政府が、その法的ルールに従って合意をしている以上、少なくとも実力を行使しての反対は、一体、何だ?ということになる。
 同志社国際高校の幹部は、「ヘリ基地反対協議会」という左翼系団体が運航している抗議船に、大切な生徒を乗せることを決めた。その無謀とも言い得る行為をどう考えているのか?法的責任論の前に、道義的責任があることを指摘せざるを得ない。
 以上の点をまとめると、研修旅行を主催した学校当局は、上記団体が無登録で運営する船が安全性を欠いたものであること(逆にいえば、万全の安全性を備えたものではないこと)を事前に調査を行って実体を把握する必要があった。ところが、今回、その注意義務を果たすことを怠った(過失責任)。また、学校当局は、学校が管理・運営する事業に関し、在校生の身体・精神の安全を図る義務を負う(安全配慮義務)。しかし、今回、学校当局は安全配慮義務を尽くすことを怠った(安全配慮義務違反)。
 以上の点から学校は、十分な誠意をもって死亡した生徒の遺族に対し十分な額の補償をするべきであり、間違っても、訴訟で責任の有無を争うというような見苦しい真似はすべきでない(そのような誠意ある対応が、今後、学校の評価を高めることにもつながろう)。もちろん、旅行保険に加入していた場合、保険会社はいろいろと異議を出して、賠償額を低額に抑えようとするであろうが、学校側は、そのような「金勘定」の理屈に屈してはいけない。
 なお、私は昔から「ラジオ党」であるが、今朝、午前7時台の東海ラジオに出ていたゲストが、平和学習に対し誹謗・中傷をすることは許されない旨の話をしていたが、これも理解できない。この人物は、誹謗・中傷と正当な批判をどのような基準によって区別しているのか、一度、直接会って質問したいものである。
 憲法で言論の自由が保障されている以上、社会一般が大きな関心を寄せる刑事事件については、事実に基づいた正当な批判は当然あって然るべきであり、そのようなものには「正当な言論」として法的な保障が与えられている。結論を述べる。同志社国際高校は、今回の間違った「平和学習」を、そもそも実施するべきではなかった。

 
 

日時:11:20|この記事のページ

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