

新聞報道によれば3月25日の自民党大会で自民党の改憲案(ただし、最終確定したものではなく「たたき台」にすぎない。)が示された。焦点となっている9条については、安倍総理の案が採用された。安倍総理の案とは、現在の9条2項をそのまま維持し、新たに9条の2という条文を付加するというものである。
私の立場からすると、徹底しない改正案といわざるを得ない。本来であれば、9条2項は削除するのが筋である。なぜなら、9条2項は、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記しているからである。しかし、普通の国家で、陸海空軍を有しない国など存在しない。一部の例外として、他国からみて侵略する価値のない国とか、大海原に周囲を囲まれて容易に接近できないような国は、軽武装で済むかもしれない。
しかし、一定規模の国土や資源があり、また、国防上の要衝となる地域を有する国は、他国からみた場合、領土を奪う魅力があり、その場合、その国は他国の侵略行為に対し防衛する必要が生じる。その際に必要となるのが陸海空軍である。
ところが、日本国憲法は、国家の防衛に必要不可欠の陸海空軍を保持しないと明記しているのであるから、これは絶対におかしいのである。そうすると、どのような国であっても必要不可欠とされる陸海空軍の保持を認めない憲法は、いわば常識外れの「とんでもない憲法」ということにならざるを得ない。
つまり、国際常識と日本国憲法は、相容れないものということであり、二者択一の関係にあるというほかない。国際常識に従って国の独立を守る途を取るのか、アメリカが日本に押し付けた憲法を墨守する立場を取るのかということである。
そもそも日本国憲法の原案は占領国のアメリカが作成したものであり、アメリカは、太平洋戦争において、日本と3年以上の長きにわたって戦ってきた間柄である。つい先日までは、敵対関係にあった国同士である。その場合、戦勝国のアメリカが最初に考えたこととは、間違いなく次のようなシナリオであったであろう。
「日本が再びアメリカに歯向かうようなことがあれば、戦争でカタを付けて日本を負けさせればよいだけの話であるが、結果を出すまでの苦労や人的被害は甚大であり、できれば、日本との戦争はやりたくない」、「日本が二度とアメリカに戦を挑むようなことはあってはならず、そのためには、憲法の中に陸海空軍その他の戦力を保持しないと明記しておけばよい」、「しかし、日本人も決して馬鹿でないから、憲法9条2項の賞味期限はせいぜい10年間ほどではないか」というものであった可能性が極めて高い。
ところが、現実には、憲法が制定されてから72年も経過して今日に至っているが、憲法は一度も改正されることなく、そのままの状態を保っている。まさに「化石状態」に日々近づいている。「まさか、日本人がここまで憲法を改正しないとは想定外であった」と当時のアメリカ軍関係者も、きっと驚いていることであろう。
我が国の政府見解は、「自衛隊は戦力ではなく、必要最小限度の実力組織である」というものである。しかし、「戦闘機や戦車は戦力ではない」という物の観方は、極めて歪んだものであり、健全な社会常識からは説明が付かない。
なぜ、政府がこのような苦しい解釈をせざるを得ないのかといえば、日本国憲法9条2項がそもそも国際常識からあり得ない条文となっているためである。国際常識に合致しない憲法の条文となっているため、法解釈の専門家である憲法学者の多くも「自衛隊は違憲の可能性が高い」という結論に至っているわけである。
したがって、そのようなおかしな状況を是正するためには、憲法9条2項を削除し、新たに「日本国は、祖国防衛のための陸海空軍を保持する」と明記すればよいのである。そうすれば、憲法学者の全員が、「自衛隊は合憲である」という解釈で一致することになるはずである。
ところが、立憲民主党などの左翼政党は、憲法9条の改正は不要であるという意見を唱えている。枝野代表などは「現在の政府解釈でも自衛隊は合憲とされているのであるから、わざわざ改正する必要はない」との見解をとっている。しかし、上記のとおり、政府見解は、無理に無理を重ねたものであり、現実に即した条文に改める必要があるのである。つまり、日本国民であれば、誰が読んでも容易に共通の理解が得られるような平易かつ明瞭な条文に改める必要があるのである。
現在、左翼野党は、森友問題などの追及に余念がない。浅はかな野党議員は、単なる憶測を事実と妄信し、無駄な時間と労力を消費している。しかし、安倍首相や昭恵夫人が、近畿財務局や財務省に対し、森友学園の便宜を図るよう直接指示したことを示す証拠はないのである。
眼を国外に向ければ、中国では習近平の独裁政権が樹立され、また、ロシアでもプーチン政権による長期独裁が継続している。北朝鮮では、核ミサイルを手にした独裁者のキム・ジョンウンが、次の手を打つべく悪知恵を働かせている。かたや同盟国である米国では、トランプ大統領は、国内の支持基盤だけが喜ぶような政策を乱発している。
習近平やキム・ジョンウンたちは、日本の左翼野党が、国家の行方を左右するとは到底いえない瑣末な問題で騒げば騒ぐほどほくそ笑んでいることであろう。潜在的な敵国同士は、お互いに、敵である相手の国内が乱れれば乱れるほど、自国が利益を得ることができることは、何も三国志を読むまでもなく、古代からの真理だからである。要は、敵国の国力を弱体化させることが、対外交渉に当たっては重要なのである。
このように、目下の世界情勢は、国難ともいうべき状況を呈している。この難局を乗り超え、我が国の国益を守れる人物は、各国の首脳との豊富な交流があり、トランプ大統領も一目置く安倍晋三首相以外にない。私としては「安倍首相、頑張れ」と言いたい。
私は、数年前から産経新聞を読んでいるが、他の新聞と産経新聞の違いを一言で表すと、産経新聞は、国家・国民の利益を考えた記事を多く掲載しているということである。産経新聞の対極にあるのが、朝日新聞である。朝日新聞が、何を究極の目的として新聞を発行しているのかは知らないが、吉田清治の虚偽報告を軽率にも信用して、慰安婦問題を発生させた責任は極めて重い。過去に新聞社の社長がこの件について一回謝ったからそれで終わりということではない。韓国流に表現すれば、「心からの反省と謝罪」がなお必要である。
さて、産経新聞の本年3月3日(土)から5日(月)にかけて、「紅い脅威 AI軍事革命」という連載があった。この記事によれば、中国では、無人の航空機や戦車、あるいは潜水艦の研究を熱心に行っているという。例えば、現在、アメリカや中国が保有している爆撃機は有人であり、有人の爆撃機から、爆弾やミサイルを、目標物を狙って発射する仕組みをとっている。もちろん、ミサイル自体も高度の軍事技術が使われており、それ自体が既にAI兵器に分類されるという考え方もあろう。
しかし、中国が狙っているのはそのような初歩的なものではなく、これまでは人間が搭乗して操作していた爆撃機や戦車を無人化し、人工知能(AI)を使って、敵国を攻撃するというものである。無人化のメリットは、人的被害を少なくすることができるという点である。例えば、中国人民解放軍の無人の爆撃機が、敵国(例 日本)の領土内に侵攻し、九州の上空で撃墜されても、その爆撃機には中国人のパイロットは一人も搭乗していないから、人的被害は生じない。したがって、戦争を継続することがより容易になる。
中国は無人兵器の分野で世界一を目指していることは疑いない。中国共産党の独裁国家であるから、誰も表立って反対できないし、国民の間には反対する動機もない。AI兵器は、火薬を使った兵器、核兵器に次ぐ第3の革命的な兵器であり、民間の技術を軍事転用することが容易という特徴を持つ。例えば、現在話題となっている自動運転の技術も転用の可能性がある。
我が国としては、このような状況を黙視していることは許されない。我が国の国土・国民・財産を守るためには、我が国の科学者も軍事技術の研究・応用に協力してゆく姿勢が求められる。戦争というものは、こちらが望まなくとも、相手が望めば発生してしまうものであり、相手にそのような野心を起こさせないためにも、我が国としては、守りを固くする必要があるのである。
折しも、本日、中国の2018年の軍事予算は、日本円で18兆4000億円であるというニュースを聞いた。中国に対する警戒心を緩めてはいけない。

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