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弁護士日記

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佐藤優著「人に強くなる極意」(青春新書)を読んで

2013年11月11日

 今回取り上げる本は、佐藤優著「人に強くなる極意」である。著者の佐藤優氏は、あらためて紹介するまでもないが、かつて外務省で情報分析官として活躍したが、鈴木宗男事件にからんで検察に逮捕され有罪が確定した人物である。鈴木宗男事件が勃発した当時、マスコミに流れるニュースは、鈴木宗男という人物はとんでもない輩であるという内容のものばかりであった。私も当時は、「こんな悪い奴は重罰に科するべきである」と信じていた。佐藤優氏についても、公務員としてあるまじき所業を行った悪い奴と思い込んでいた。
 ところが、その後いろいろな事実が出てきて、また、佐藤優氏の著作をいろいろと読んだ結果、「この事件は、一体何を狙って捜査がされたのか?」「検察の真の狙いは何だったのか?」という疑問が生じた。私は、この事件は、外務省の省益(またその背後に存在する巨大な権力)に反する行動を取った政治家とその同調者をつぶすことに真の目的があったのではないか、と感じている。つまり、ロシアと我が国の外交関係が好転することによって不利益を受ける者の意向が働いたのではないか?
 この本の著者である佐藤優氏は、かつて外務省において対ロシアの情報分析を長年にわたって担当していただけあって、非常に読みが深い。物事の本質を見抜く力が抜きんでている。例えば、TPPについて、佐藤優氏は、アメリカを中心としたブロック経済の復活であると喝破している。TPPといえば、普通は、自由貿易主義を守るためのものという捉え方が多い。これに反し、佐藤優氏は、中国の台頭を抑えるために日米軍事同盟、米豪軍事同盟及び米ニュージーランド軍事同盟をベースにした経済軍事同盟であると分析している(70頁・200頁参照)。したがって、我が国が、TPPから外れることはあり得ないと結論付ける。
 私個人としては、TPPについては、望むと望まぬにかかわらず、我が国が参加することは不可避であると考えている。我が国の安全保障は、我が国単独での防衛力だけで我が国の安全を守ることは極めて困難であると考えられる以上、他国との軍事同盟によって防衛力を補強する必要性がある。しかし、TPP抜きの軍事同盟では、将来的に瓦解する可能性すらある。
 その場合、同盟を結ぶ相手は、アメリカ以外にはない。太平洋戦争末期に、我が国に原子爆弾を落として、ホロコースト(大量虐殺)を実行した、極めてけしからぬ国ではあるが、アメリカ以外の選択肢はないのである。我が国の周辺国を見渡しても、歴史を歪曲して我が国に対し恨みや言いがかりを連発し続ける韓国、金王朝による凶暴な独裁国家である北朝鮮、共産党の独裁政権が続き民衆の不満が積もりに積もっている中国、又は、我が国の北方領土を長年にわたって不法占拠しているロシアのいずれも同盟国足り得ないことは、いうまでもない事実である。
 話がややそれたが、この本には「外務省は侮り人間の巣窟」という箇所がある。私も外務省に対しては、以前からこれに近い印象を受けていた。外務省は、日本の国益を守ることに熱心な役所ではなく、省益を擁護することと保身の塊ともいえる役所である。外務省が、本当に我が国の国益を最優先する政策を継続していたら、韓国が、我が国固有の領土である竹島を不法占拠するような事態を回避する方法を発見していたはずである。また、日米安全保障条約における地位協定上の不平等性についても、より改善ができていたはずである。さらに、尖閣諸島の問題についても、中国に自分勝手な嘘を言わせないような状況を作ることができていたはずである。
 この本は、平易に書かれているので読みやすい。一読をお勧めする次第である。
                         

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