中国の恐るべき地球支配の黒い野望を明らかにした本として、今回、クライブ・ハミルトン著「目に見えぬ侵略(Silent invasion)」を取り上げる(飛鳥新社 1900円)。
この本の著者であるクライブ・ハミルトンは、オーストラリアの作家・批評家である。本の帯をみると「コロナ後の世界制覇 その手口がわかる禁断の書」とある。最初にこの表記を見たときは、いかにも大袈裟だと思った。しかし、事実を基に書かれている内容を読むに従って、決して大袈裟ではないと感じた。それほど、中国のオーストラリアに対する侵略の程度が酷いものであることが理解できたからである。
オーストラリアと聞くと、普通の日本人は、コアラに象徴される平和で自由な国を想像するのではなかろうか。私もその一人であり、オーストラリアへは、過去に3回旅行に行っている。
そのオーストラリアが、中国共産党という化け物のような組織によって侵略を受けていることは、実に残念なことである。同時に、化け物の活動をこれ以上放置することは許されないと強く感じた。
さて、この本は、第1章から第13章までで構成されている。細かい字でびっしりと書かれているため、すらすらと読むことは難しい。しかも、中国共産党によるオーストラリア侵略の事実が、新聞記事風に細かく記載されているため、要旨を掴むことが容易ではない。体系書ではなく、一種の資料集という位置付けができよう。
しかし、本を読み進めるに従って、数多くの事実から抽出される重要点が分かってくる。以下、私なりに紹介したい。
第1に、この本のタイトルになっている「目に見えぬ侵略」という言葉からも、中国のオーストラリアに対する侵略行為は、軍事力を用いたものではなく、経済力を使ったものであることが分かる。著者によれば、中国共産党の目的は、米国とオーストラリアとの同盟関係を壊し、オーストラリアを中国の属国とすることにある(16頁・17頁)。
そのための手段として、まず中国とオーストラリアの間の経済的な結びつきを強化するという方策をとる(153頁)。そして、オーストラリアが、中国と経済的な結び付きを強化すればするほど、中国に依存する度合いが高まる。
仮に何か政治的な問題が生じた場合に、中国は、オーストラリアに対し、本来であれば経済の分野に属する貿易を規制することを匂わせるだけで、圧力をかけることが可能となる。つまり、オーストラリアの政策決定を左右することができるということである。
日本でも、かなり以前、民主党政権下において、中国の漁船が日本の海上保安庁の船に対しわざと衝突してきた際に、中国は、拘束された中国人船長の釈放を求め、突如、レアアースの輸出を止めると言ってきた。これも同じ手口である。結果、日本は、中国人船長を釈放する以外になかった。
第2に、ジャーナリストも騙されやすい。2016年に、オーストラリアの著名な記者の多くが5日間の中国ツアーに参加し、結果、多くの記者が、中国を礼賛する記事を書くようになった。そして、中国の南シナ海への違法な領土拡張が問題化した際も、「われわれは戦争を何としても避けなければならない」という意見を述べた(148頁)。
これは、中国の望む妥協策を支持した意見であり、日本の通信社の親中派の論説委員がよく使う言葉に似ていると感じた。彼らは、中国によって完全に洗脳されていると見てよい。
第3に、オーストラリアは、天然資源を中国に投げ売りしていることの重大性に余り気が付いていない(166頁)。オーストラリアは、北部のダーウィン港を中国企業に売却しようとしたことがある。
また、中国の国営企業が、オーストラリアのエネルギーネットワークのかなりの部分を現に保有している。そのため、中国企業は、電力設備と融合したインターネット機能にアクセスすることが可能である。著者は、仮に米国と中国が戦争を開始した場合、中国は、敵国陣営に属するオーストラリア国内の電力網をネット経由で破壊することができると警告する(169頁)。電力が止まった場合に、オーストラリアの国民には甚大な被害が発生することになるが、そんなことは、中国共産党は、歯牙にもかけない。
日本でも、中国企業=中国共産党が提供するスマホがあるが、非常に危険である。料金の安さなど問題にしてはいけない。これを使うことは、自分の情報(通信内容)を全部中国共産党が把握するということであり、プライバシー侵害の程度は、我々日本人が想像する程度を超えるものがあるというべきである。中国国内の監視カメラによって監視されている中国人と同じ状況に置かれる。重要インフラを担う中国企業=中国共産党は、日本国内から文字通り完全に排除する必要がある。
ほかにも、この本には、オーストラリアの政界人、財界人、大学人などに対する中国共産党による洗脳工作の実体が細かく書かれている。これは全部日本にも当てはまる危機と言えよう。中国共産党の目的とは、中国共産党=中国だけが繁栄し、他国は全て中国に奉仕する惨めな役割を与える世界を実現することである。
ここで分かりやすい例をあげると、全世界の人々は、武漢ウイルス(新型コロナウイルス)とどう付き合うべきかという問題に似ている。キーワードは、「病気にかかって死なない=殺されないためには、中国とは密にならない」ということである。つまり、「中国とは距離を置け。極力、関わるな。協力するな」ということに尽きる。
中国が横暴に行動できるのは、お金があるからである。したがって、お金を断ってしまえば、おとなしくならざるを得ない。お金の源泉は、これまで中国に対し世界が投資してきたことである。今後、世界が中国との貿易を断ってしまえば、やがて中国はお金が足りなくなり、やりたい放題もできなくなる。
場合によっては、国内の不満分子が増大し、うまくいけば、中国共産党が倒れるかもしれない(そうなって欲しいが、夢物語で終わるのではなかろうか。ともかく、他力本願ではいけない)。
ところが、未だに経済界おいては、中国に工場を増設し、その地で中国人を使って物作りをし、金儲けをしたいという者が多いと聞く。何と浅はかな物の考え方であろうか。財界とはそのような金の亡者の集合体なのであろうか。
今は、時代が大きく変化する時である。これまでの既成概念を捨て、サプライチェーンから中国を外す、つまり中国をあてにしない経済構造を、地球規模で創設する時であると考える。
地球上において、法の支配、自由の尊重、民主主義などの価値観が今後も継続するためには、世界の民主主義国家が連合して、つまり、一致して一党独裁の全体主義国家である中国共産党と対決し、その闘争に最終勝利する以外にない。
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