交通事故の被害者が、加害者に対して損害賠償を請求しようとする場合、大きく見て方法は三つある。
一番目は、被害者が弁護士を立てて加害者と交渉するという方法である。いわゆる示談交渉という方法である。この方法の利点は、手間暇がかからないということである。反面、短所として、間に入る第三者が存在しないことから、うまく交渉がまとまるか否かが不透明であるという点があげられる。
二番目の方法は、今回、やや詳しく解説する方法であり、日弁連交通事故相談センターの示談斡旋(じだん あっせん)の申立をするという方法である。被害者が、示談斡旋を申し立てるに当たり、特に費用はいらない。また、被害者自身が申し立てることも可能である。
しかし、示談斡旋を適法に申し立てるための要件がいくつかある。
第1に、加害者側の損保会社から、あらかじめ、「賠償額の提示」又は「賠償金額の計算書」のような書面が出ていることが必要である。
第2に、事故をめぐる過失割合について双方の意見が一致している必要がある。仮に、過失割合について主張が異なる場合は、示談斡旋を申し立てることができない。
第3に、後遺症について、双方の見解が一致している必要がある。例えば、被害者が「自分は14級に該当する後遺障害を負った」と主張し、これを損保会社が認めないような場合(「非該当」であると主張する場合)には、示談斡旋を使うことはできない。
このようにして、示談斡旋の申立が、交通事故相談センターで受理された場合、第1回の期日が指定される。
第1回の期日は、原則として双方が出席する。その場で、示談斡旋担当弁護士2名から、いろいろな質問が出るので、申立人である被害者と、相手方である損保会社の担当者は、それに答えることになる。
比較的簡単な事件の場合、第1回目に、示談斡旋担当弁護士の方から、「賠償額としてはこの金額が適当ではないかと考えます」という斡旋案が提示される。当事者双方は、その斡旋案をいったん持ち帰り、第2回の期日において、諾否を明らかにするということになる。双方が「承諾」した場合、示談斡旋が無事成立することになる。
示談が成立すると、賠償金は、数週間後に、被害者の指定する銀行口座に振り込まれ、一件落着となる。
なお、事件によっては、第1回目の期日において、双方が「承諾」することも多く、その場合は、当然ではあるが、第2回目の期日は開かれないことになる。
このように、示談斡旋の場合は、第三者が間に入ることで、双方の利害がうまく調整されることになるし、また、2人の示談斡旋担当弁護士は、交通事故問題に詳しい弁護士によって構成されることになっているため、斡旋案の内容も信頼できると言える。
上記のとおり、示談斡旋は、被害者自身が申し立てを行うことも可能であるが、申立書の作成等に時間がかかり、また、示談斡旋の時に、質問に対しどのように答えれば一番よいかも分からないことが多いことから、出来る限り、交通事故を専門とする弁護士に委任するのがよいと考えられる。
当事務所では、一件当たりの着手金は、原則的に20万円と設定している(消費税別)。また、報酬金は、損保会社の提示額を上回った場合に限り、増額分の20パーセントを原則的にいただくことにしている(消費税別)。
さて、被害者が加害者に対し損害賠償を請求しようとする場合に、三番目の方法は、訴訟である。訴訟の場合、時間も費用も相当にかかるため、最終的な解決手段ということになる。
ただし、被害者の方が、自動車保険の弁護士特約に加入している場合は、300万円までは弁護士特約でまかなうことが可能であり、実質的に言うと、弁護士費用が300万円以内に収まれば、被害者自身の負担はゼロということになる。
Copyright (c) 宮﨑直己法律事務所.All Rights Reserved.