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弁護士日記

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損保と闘う(9)

2011年01月11日

 新しい年を迎え、今年の抱負を述べさせていただく。
 私の事務所では、交通事故事件については、被害者側の事件しか受任しないことにしている。その理由はいくつかある。
 第1に、加害者側の事件とは、要するに、損保会社からの依頼に基づく事件である。仕事の内容は、言うまでもなく、加害者の代理人として、被害者の求める損害賠償金をいかに少なくするかということである。しかし、私はこのような仕事には全くといっていいほど興味がない。損保会社という巨大資本の利益を少しでも擁護するための仕事には、ほとんどやり甲斐を感じないということである。
 第2に、仮に損保会社からの事件処理依頼を受けるということになれば、その関係は一時的なものではなく、継続的なものとなる可能性が高い。そして、継続的関係が長く続けば続くほど、弁護士は、その損保会社からの事件依頼を通じて収入を得ることになる。つまり、「持ちつ持たれつの関係」となるために、経済的に依存し、やがて支配されてしまう危険がある。そうなると、たとえおかしな事件依頼であっても、不本意ながらも引き受けざるを得なくなる可能性が生じる。私としてはそのような立場には陥りたくないという理由もある。
 第3に、現実に交通事故訴訟を闘っていると、加害者の代理人である弁護士が、いかに社会正義実現とかけ離れた存在であるかが実感できる。彼らの主たる関心は、いかにして賠償金を値切るかという点にあるようである。私としては、そのような哀れな弁護士にはなりたくない。ただし、加害者側つまり損保会社側の弁護士が、全てそのような哀れな弁護士であるとまでは言うつもりはない(中には尊敬すべき識見をお持ちの方もおられる。)。究極的には、その人物如何ということであろう。
 また、最近感じることは、新司法試験による大量の弁護士が生まれたことによる弊害である。しばしば法廷には、経験の浅い弁護士が、加害者つまり損保会社側の代理人として出てくる。ところが、これらの弁護士の作成した書面の中には、実にひどいものがある。中には、証拠も何もないのに、勝手に個人的空想を根拠として自分に有利な事実関係を主張する者が存在する。まさに素人以下である。さらには、基本的な法律の解釈も理解しないまま、間違った主張に走る者もいる。これらの者は、未熟で、法律家としての健全な責任感が欠如しているという共通項がある。昔は、このような弁護士に向いていない不適格者は、余りいなかったように記憶する。
 以上のような現状認識の下、私は、今年も、事故被害者の方々の正当な利益を守る立場で活動する立場を堅持したいと思う。なお、この点について若干の説明を加えたい。
守るべき利益は、依頼者の正当な利益である。したがって、いくら被害者側からの事件依頼であっても、私の目からは無理と思われる要望に対しては残念ながらお応えできないことを、よくご説明し、納得していただくようにしている。
 また、依頼者の正当な利益を守るということは、上記の点とも関連するが、損保会社側の弁護士が、不当な内容の主張あるいは根拠を欠くおかしな主張を行った場合は、敢然と反論するということである。換言すれば、損保側弁護士の言っていることの不当性を徹底して追及するということである。仮に損保会社側の弁護士による不当な主張をそのまま見過ごして放置していたら、最終的に、間違った判決を下される危険が生じる。そうなったのでは、被害者の正当な利益は守れない。
 もちろんこのような基本的姿勢を維持するためには、実力を養っておく必要がある。そのため、交通事故に関する最新の判例や実務の動向には常に注意を払って、日頃から勉強しておく必要がある。その成果として、今月、大成出版社から「交通事故損害賠償の実務と判例」が刊行される(定価3,600円)。興味のある方には一読をお勧めする。
 以上が今年の抱負である。            

日時:11:53|この記事のページ

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