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弁護士日記

弁護士日記

法科大学院での教員経験を終えて

2007年12月10日

 私が愛知大学法科大学院で「行政法実務」の講師を担当するようになったのは、平成17年春のことであった。毎年春学期だけ週1回の授業を受け持った(時間は1回90分)。当時、私の授業に出ていた学生の大半は、翌年実施された新司法試験に首尾よく合格し、既に法曹としての途を着実に歩み始めている。
 私の授業は、まず、教員である私が問題を毎週出題し、学生はその問題に対する回答をレポートとして毎週私に提出する。そのレポートを私が採点し、毎回の従業に臨むという形式をとっていた。正直、毎週、学生から出されたレポートを採点することは、なかなか骨の折れる作業であった。しかし、単に学生が、教員の話を聞くだけの形式よりは格段に実力が付くと思い、このような方法をあえて採用したのであった。
 平成17年から3年間、同じ形式で授業を担当してみたが、率直な感想として、私の受け持った学生の実力が、全体としてやや下降気味であることが気にかかる。また、毎年感じることであるが、学生の授業に臨む姿勢に積極性が余り感じられない点が残念である。せっかく高い授業料を払っているのであるから、もっと教員に質問をして教員を困らせるくらいの覇気があってもよいと思うのであるが・・・。
 さて、私としては、法科大学院における講師の役目は、本年で終了するつもりである。
その理由はいろいろあるが、私が以前から警鐘を鳴らしている弁護士人口の激増問題と無縁ではない。
 弁護士人口を激増させようとする国の政策は、完全に間違ったものであるが、国がその間違いを率直に認めようとしない限り、弁護士人口は急激に増加することにならざるを得ない。そうすると、需要と供給のバランスが崩れ、需要は一向に増えぬまま弁護士供給過多の状態に陥る。その場合、弁護士としては、誰でも自分自身が廃業(引退)してもいいとは考えていないので、何とか業務の存続を図る行動に出る。
 具体的には、社会的にいくら重要であっても、採算の合わない事件は取り扱わないことになる。採算が合うか否か、相当の収入が確保できるか否かだけが事件受任の基準となる。これでは、社会正義を実現することを一つの重要な任務とする弁護士の理念を否定する結果を招く。まさに、全部の弁護士が、六法全書を手にした「サムライ業」から、そろばんを手にした「商人」への転換を迫られることになるのである。このような間違った政策を大至急転換する必要があることを、危機管理能力が発達した弁護士達は知っている。半面、「俺は大丈夫だ。自分には影響ない。」などと高をくくっている弁護士も依然多いように思う。どちらの考え方がまともか、答えは近い将来出る。

日時:11:17|この記事のページ

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