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弁護士日記

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愛知県の大村知事の責任は重い

2019年09月27日

 新聞報道によれば、愛知県の大村知事は、文化庁が「あいちトリエンナーレ2019」への補助金を交付しないという決定をしたのに対し、「裁判で争う」と公式に表明したという。しかし、文化庁の決定は正当なものであり、大村知事の見解は相当性を欠いたものである。
 この問題は、いくつかの論点がある。第1に、9月27日付け産経新聞の社説が言うように、日本人へのヘイト(憎悪)を表現したとしか解釈できない展示を行ったことについて、主催者である愛知県は、県が設置した検証委員会で「条件が整い次第、速やかに再開すべきである」と発表したことは、とんでもない話である。
 なぜなら、今回の企画展は、地方公共団体である愛知県が主催したものである以上、「公共の福祉に合致するものであること」が必要最低条件と考えられるからである。
 この正論に対し、一部の訳の分からない偏向新聞、うけを狙ったテレビ局、自称「芸術家」などは、「表現の自由に対する侵害だ」と騒ぐ。よくもこのような間違ったことを言えるものである。今回の展示物のうち、最悪の展示物は、いわゆる慰安婦像に酷似した醜悪な少女像である。この像が、誰の利益を図って、また、誰の利益を害してやろうという意図で作成されたものであるかについては、多くのまともな日本人はよく分かっている。
 しかも、この醜悪な像は、歴史的事実を無視し、真っ赤な嘘を世界中に拡散させる目的を持っている。いわば、政治的プロパガンダの発信装置という役割を持っている。このように、悪意をもって政治的宣伝をすること狙った物体を、税金が投入されて運営される公共施設において展示することなど、最初から許されるものではなかったのである。
 これに対し、「芸術であるから、また、表現の自由であるから展示することが許される」という意見が一部にある。しかし、芸術であるか否かの判断基準は、あって無いような曖昧なものである。芸術だと叫んでいる者が、勝手にそう信じているだけであるとも言い得る。
 また、仮に芸術であると判断できたとしても、そもそも、芸術家を気取る作者にはそれを公的な施設で設置・展示できる法的権利などないのである。自称芸術家は、法的に認められない勝手な自己主張を、それこそ勝手に「憲法上、展示を求める正当な権利がある」と勘違いし、その上で勝手な思い込みに基づいた一方的な意見を、新聞社などのインタビューに応じてしゃべっているだけのことなのである。
 作者が、どうしても、作品を展示したいというのであれば、そのような政治運動に賛成する新聞社と展示のための交渉を行い、契約を結んだ上で、新聞社のロビーにでも展示すればよいだけの話である。
 このように問題点はいろいろあるが、今回は、第2に、大村知事の上記発言を取り上げたい。大村知事は、「裁判で争う」と述べたが、どこかの国の大統領に似た一時の感情に任せた発言というほかない。到底、冷静な判断の下に行われたとは考え難い。
 そもそも文化庁の愛知県に対する補助金は、補助金適正化法に基づくものである。
この場合、補助金の交付は、行政処分として構成されている。新聞報道によれば、文化庁は、「申請手続に不適当な行為があった」との理由で補助金の不交付決定をしたという。不交付という行政処分を行ったということである。
 そうすると、大村知事の主張を通すためには、文化庁つまり国の行った処分は違法であるという理由で、処分の取消訴訟及び交付の義務付け訴訟を起こす必要がある。
 ここでの重要ポイントとは、補助金適正化法を具体化する政省令や行政規則(例 〇〇交付要綱)にどのように交付要件が明記されていたか、である。換言すると、今回の申請は、果たして交付申請の形式的要件を満たしていたか、仮に形式的要件を満たしていたとしても補助金の受給要件(基準)を満たしていたと言えるかどうかである。
 また、補助金の交付に当たっては、一定の行政裁量権も認められると解されることから、今回の国の不交付決定が、果たして裁量権の逸脱・濫用に当たるかという点が裁判における主要争点となるであろう。
 現時点では詳細な事実関係を私は把握していないため、ここで述べることは、あくまで予測ということになるが、愛知県は裁判に負ける可能性が高いと考える。
 理由は、大村知事が、「あいちトリエンナーレ2019」の開催に先立って、今回のような展示計画を正確に把握していれば、市民から非難が殺到し、中止に追い込まれる事態を予測することは十分に可能であったこと、また、展示企画の内容自体が補助金適正化法の趣旨にそぐわないものであることも当然分かっていたこと、つまり、そもそも、少なくとも「反日プロパガンダ展示物」に関する限り、国に補助金交付を申請すべきではなかったということである。
 大村知事は、今回の騒ぎの発端を作ったばかりか、今後、国を相手に行政訴訟まで起こして愛知県民に対し無駄な負担をかけようとしている。恥の上塗りをしようとしている。
 ここでいう無駄な負担とは、具体的には、無駄な訴訟に要する弁護士費用、担当職員が関係する訴訟に備えて支出する事務費、人件費、時間等である(なお、弁護士費用についての予算は県議会が否決する可能性もある。そうすると、事実上、訴訟を起こすことはできなくなるが。)。
 しかし、今回の訴訟だけは止めた方がよい。貴重な税金を浪費してまで、最初から負けることが濃厚な訴訟などすべきではない。周囲の良識ある職員は、粘り強く大村知事に対して進言した方がよい。
 しかし、残念ながら、大村知事には、部下の諫言を素直に聞き入れるだけの度量はないであろう。自分の判断だけが正しいと信じ込んで、反対意見に耳を貸さない性格の持ち主ではないかと推測されるからである。
 大村知事は、自分の甘い判断が原因となって発生した今回の不祥事について、政治的な責任をとるべきである。
 

日時:12:19|この記事のページ

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