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弁護士日記

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弁護士の適正人数とは

2019年10月01日

 今日、たまたまある所からFAXが来た。全く知らない弁護士の名前で、司法試験の合格者数を年間1000人以下とすべきであるという内容だった。私は、かなり以前から、正確には20年以上も前から、司法試験の合格者を増やすことには反対する立場であった。
 昔のことであるため、細かい記憶は不正確であるが、おおよそ20年以上前のことであったが、「司法改革」の名前の下で、法曹人口を増加させることが、より良い社会の実現にとって不可欠であるという意見が強まっていた。弁護士の中には、「法化社会の実現」というアイデアを掲げる有力弁護士もいたように記憶する。
 しかし、当時から、私は、法曹人口の増加策には大反対であった。ここでは理由を細かく述べることはしないが、主たる理由とは、「法曹人口」の増加といっても、要は、弁護士の数を増加させることを意味したからである。
 日本のことを何も知らない外国人の大学教授なども、法曹人口を増加させることが一番であるという間違った意見を、もっともらしく新聞紙上で表明していたことを思い出す。新聞記事というものは、信用できないと感じ始めたのもその辺りからである。
 私が司法試験に合格した当時の合格率は3パーセントである。100人の受験者のうち、最後の栄冠をつかむことができるのは、たったの3人であることから、合格することが非常に難しい試験であった。最終合格者の人数は、年間で500人程度にすぎなかった。
 しかし、難関であることが弁護士のプライドにもなっていたように感じる。弁護士と並ぶ人気自由業である医師と違って、自分の出来の悪い子供を病院の後継者とすることなど、弁護士の場合は不可能である、という誇りであった。
 司法試験の合格者を増やすことに反対した理由は、いろいろあるが、主な理由は、仮に合格者を極端に増加させた場合、弁護士の質が低下するということが挙げられる。次に、弁護士間の競争が激化して、「食えない弁護士」が増えるという懸念もあった。
 この懸念は、今や現実化している。上記のFAXによれば、司法試験の合格率は、2003年が2.3パーセントであったのが、2019年には33.6パーセントに上昇している。普通の有名大学の受験並みの難易度にすぎない。
 換言すれば、今では、一定の能力さえあれば、誰でも頑張って勉強することによって十分合格できる普通の平凡な資格試験になってしまった。したがって、司法試験に合格しても弁護士になりたがらない者が、かなりの割合で出ている。30年前には、およそ考えられない現象である。
 テレビのワイドショーなどを見ていても、昔は、弁護士のゲストと言えば、それなりの実績のある人物が出演していた。ところが、最近では「何、これ?」というような軽い弁護士が、ピカピカの弁護士バッジを付けて出演している。私など「大丈夫かな?」と思ってしまう。
 また、弁護士の所得の中央値は、2006年が1200万円であったのが、2018年では650万円に激減している。
 本音で話をする場合、優秀な学生は、自分が、将来、ある職業に就いた場合、年収がいくらになるのかという点に大きな関心がある。そのことは、医師でも、プロ野球選手でも、官僚でも、ベンチャー企業の社員でも同じである。弁護士の中央値である650万円の所得など、全く魅力を感じない低レベルである。
 世の中には、所得は低いが、やり甲斐さえあれば良いという高潔な人物もいると思うが、これはあくまで例外である。大半の普通の人間であれば、年収の多寡は大きな関心事である。
 弁護士の場合、仕事がハードであるため、昔は、それなりの多額の年収を得ることができた。ところが、現在は、上記のような統計数字が出ている。
 年収だけを見れば、弁護士業は、余り魅力がない職業となってしまった。今後、少子高齢社会になればなるほど、事件の解決を弁護士に依頼しようとする人も少なくなってしまうであろう。ところが、現在、年間1500人の合格者が出ている以上、弁護士の数は、どんどん増えてゆくことにならざるを得ない。
 上記のFAXは、「年間合格者を1000人以下にすべきである」と主張するが、私は1000人も要らないような気がする。年間合格者700人~800人で足りるのではなかろうか。
 いずれにしても、弁護士の魅力度が低下した原因は、構造的な問題であり、日本政府も、根本的な見直しに着手すべきであろう。

日時:16:40|この記事のページ

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