本日(1月26日)の産経新聞の社説を見ると、ロシアのプーチン大統領は、突然、憲法改定に乗り出したとあった。実は、昨日25日午前に放送された「正義のミカタ」というテレビ番組でそのことを取り上げていたため、私は「プーチンはロシア皇帝になるつもりか」と思った。私は、毎週この番組は欠かさず見ている。正しい政治認識を持つためには、非常に参考になる。
これらの報道を総合すると、現在、ロシアの大統領であるプーチンは、2024年に大統領としての任期が満了するため、その後の自分の権力維持を狙って憲法改訂を目論んだというのが事実に最も近いと考えられる。
どういうことかと言えば、プーチンは、任期が切れた後には、もはや大統領ではなくなる。しかし、国家の最高権力は今までどおり自分が持っていたい。そこで、憲法上の正式な機関として国家評議会を位置付け、自分は、任期の定めのない国家評議会の議長におさまりたいと考えているようである。
憲法改定によって新設される国家評議会は、報道によれば、内政及び外政の基本方針を決定できる権限を持つ。すなわち、国権の最高機関という位置付けになる。
今回の憲法改定には、看過できない重大な事項も盛り込まれる。それは、国際法と憲法の関係である。国際機関の決定がロシア憲法に抵触する場合、ロシアはそれを履行しないという明文を置くという方針である。
このことによって、どのような影響が出るかと言えば、国際機関、例えば、国際司法裁判所が出した判決に、ロシアは拘束されないということである。国際機関の決定ですら紙屑同様に無視しても構わないということであるから、国家間の条約など、実質的には何の効力もないということである。条約に破棄を認める条項がなくても、ロシアは、自国の憲法に照らしてロシアの利益に反するものであって認め難いと判断つまり宣言すれば、いつでも無効を主張できるということである。
ただでさえも強権国家であるロシアは、従来にも増して「力の支配」を信奉する、ダークな国家となってゆくことは間違いない。場合によっては、旧ソ連よりも悪質な国家になってゆく可能性が高い。
ここで、安倍首相の対ロシア姿勢を顧みた場合、これまで極めて危険な方向に向かっているという以外にない。安倍首相は、プーチンとの個人的な信頼関係を深めていけば、北方領土問題を解決できると放言しているが、非常に愚かな主張と言うべきである。
プーチンは、もともと国家の諜報機関の出身であり、人を騙すこと、陥れること、欺くことなど朝飯前の人間である。正真正銘の「悪党」と言っても過言でない。他方、安倍首相は、日本の名門政治家の家系に生まれた「お坊ちゃん」である。
お坊ちゃんは、一般的に言えば、好人物であり、人間の善意を信じている者が多い。したがって、えてして他人に騙されるという結果を招く。要するに、人間に対する警戒心が薄いということである。
プーチンにとって、お坊ちゃんの安倍首相を騙すことは、赤子の手をひねるよりも易しいことなのである。これまでの安倍首相の発言を聞いていると、「北方領土については日ロ双方が受け入れ可能な解決策を見つけ、その後、平和条約を締結する」という文言に尽きる。
しかし、日本の外務官僚と安倍首相の取り巻きの政治家連中を除き、このようなうたい文句を心底信じている日本人が、一体何名いるであろうか。
第一、「日ロ双方が受け入れ可能」とは何を指すのか?普通のまともな感覚では、説明が不可能である。ロシアは、北方領土は第二次大戦の結果、ロシアが獲得した戦利品であり、本来ロシアのものであるという立場を崩していない。
この立場は、全くの暴論であり、法的な正当性はないのであるが、外交は、純粋な学問(歴史学)ではなく、力学であるから、証拠をあげていくら日本の主張が正しいと1000回叫んでも、ロシアがこれを認めることはない。
北方領土は、4島とも日本の固有の領土であるが、終戦後、突然ソ連が日本との不可侵条約を破棄して、日本に侵略行為を行い、その結果、現在までロシアの不法占拠が継続しているのである。ソ連やロシアにとって、他国との条約は、破るために存在する。誠意をもって遵守する対象ではない。その点が、くそ真面目な日本とは根本的に違う。
また、最近になってロシアは、歯舞諸島及び色丹島の引渡しも拒否する姿勢を見せている。そのくせ、平和条約を先に締結すべきであると主張している。全く日本をバカにした姿勢である。
かたや。安倍首相は、従来どおりの説明に終始している。北方4島の一部ですら返ってこないという現状で、どうして平和条約の締結など考えられるのか?安倍首相は、これまでの自分の対プーチン外交の失敗をいさぎよく認め、日本の国益に沿った方針を再構築すべきである。最近、安倍首相の退陣論がささやかれているが、対ロ外交の失敗の事実と、決して無関係ではないであろう。
では、どうすれば良いのか?外交評論家の意見を聞いていると、「ここが悪い、あそこを直すべきである」などという批判ばかりが目につく。わが国の野党と同じように、批判だけに終始し、改善案ないし修正案の提案が全くない。
私の持論は以下のとおりである。
第1に、北方領土4島の主権は日本にあることを改めて宣言する。その上で、現在、ロシアが行っている行為は、明白な不法占拠であることを主張する。
ここで、反対論者から「そんなことをしたら、歯舞諸島や色丹島も返ってこないことになる。」という反論が出るかもしれない。しかし、これには根拠がないことは前記のとおりである。現在、ロシアは、歯舞諸島や色丹島を日本に返還するなどとは全く言っていないのである。
第2に、北方領土での日ロ双方の経済活動の推進の動きを直ちに止める。このような効果のない無駄なことを今後も推進したとしても、その地(北方領土)で、ロシアの憲法や法律が適用される結果となることは100パーセント疑いなく、その状態は、かつての明治初期の、日本でありながら裁判権がない、課税権もない不平等状態の再来と言えよう。このようなことを認めることは絶対にできない。ロシアの憲法及び法律が全面適用される地域(北方領土)で、日本人が活動するような事態は、あってはならないのである。
例えば、今後、北方領土で日ロの経済交流が仮に始まったとして、双方にトラブルが発生した場合、一例として、ロシア人がに日本人を殺害したが、犯人はロシア本土に逃亡してしまったような場合、犯人が裁かれることは期待できず、日本人の被害者は泣き寝入りを強いられることになる。このような無法がまかり通るのである。
運よく北方領土で裁判が開始されたとしても、ロシア人の裁判長が、自国民に対し、公正な判決を下すことは考えられず、執行猶予付きの温情判決でお茶を濁されるのがオチであろう。逆の場合、犯罪を犯した日本人は、重い有罪判決を受け、ロシアのシベリヤの刑務所に送られ、極寒の地で酷い目にあわされることになろう。
以上のように、現在、安倍首相の下で進められている間違った日ロ交渉は完全白紙に戻し、新首相の下で、北方4島の即時返還を主張する以外に方策はない。ロシアという国は、絶対に信用してはいけない。我が国は、ひたすらロシアの弱体化を待ち、その時期を狙って領土問題の解決を進めるべきである。
Copyright (c) 宮﨑直己法律事務所.All Rights Reserved.