本日の新聞報道によれば、安倍総理と自民党の岸田文雄氏が昨日会談し、新型コロナウイルス(武漢ウイルス)の影響で所得が減った世帯などに対し、1世帯当たり現金30万円を支給するということで一致したという。そして、産経新聞の4面には「首相、現金給付で岸田氏に花」との見出しがあった。紙面を読むと「安倍晋三首相は自民党の岸田文雄政調会長に花を持たせる形で決着させた」とある。これには、何ともいいようのないバカバカしさを感じた。実に不合理極まることを決めたものだと思った。
この報道が仮に事実だとすれば、現金給付額をめぐって各党などからいろいろな意見が出ていた混乱を収め、また、金額については、国民の予想を超える額を岸田氏が大胆に提案したという印象を国民に与え、その線で決まったことから、国民的な支持を集めようとしたのであろう。
しかし、私の将来予想は全く違う。後日になって、今回の政策が、国民により大きな混乱を与え、結果、岸田氏の時期総理の目が完全に消失する結果を招くのではなかろうか。
もともと、私は、広島に選挙地盤のある岸田氏を全く評価していない。理由は簡単である。第1に、問題を的確に捉える能力が弱いようにみえる、第2に、優柔不断で決断力がないようにみえる、第3に、国民を元気にするオーラが全く感じられないようにみえる、以上の3点である。
より具体的に言えば、以下のとおりである。
かつて慰安婦合意を日本と韓国は行ったが、当時の外相は岸田氏であった。当時、岸田氏は、韓国が本気で合意を順守する気があると信じていたのであろうか?仮に信じ込んでいたのであれば、「お人よし」という以外にない。外相をまともに務められなかった凡庸な人物に、国家を代表する首相が務まるはずがない。
次に、かつて岸田氏が自民党の総裁選に出馬するか否かを逡巡していた際に、何と、安倍総理に対し、「私はどうすればよいのでしょうか」と聞いたという。仮にこの話が事実だとしたら、全く話にならない。関ケ原の戦いにおける小早川秀秋のような印象を受ける。
さらに、テレビ中継などで岸田氏が話す様子を見ていると、気が滅入る。とにかく、話し方が、ぼそぼそという感じであり、力強さが全く感じられない。何か、言質をとられまいと警戒している東京霞が関の高級官僚のような印象であり、元気がない。暗いのである。
国民に希望を与えることができない人物が、一国の首相など最初から務まるはずがない。その対極にあるのが、アメリカのトランプ大統領であり、イギリスのジョンソン首相である。政策の是非は別として、この二人は元気がある。
ともかく、仮に万が一、岸田氏が将来、日本国の総理大臣になったときには、日本国も終わりである。これまで保ってきた先進国グループの位置から、脱落する危険が生じる。岸田氏だけは総理大臣にしてはいけない、と私は考える。
話が逸れたので現金給付の論点に戻す。この制度の最大の問題点は、①新型コロナの影響と受けて、②収入が一定の程度(割合)減ったことを、③証明書類を添付して、④市町村の窓口に申請し、⑤市町村において交付要件を満たしたと判断した場合に、30万円を給付するという点にある。また、新聞報道によれば、住民税非課税世帯も対象となるという。
少し頭をひねれば分かることであるが、収入が減ったとは、一体、いつの時点といつの時点を比較しているのかという疑問が生じる。
多くの事業者は、2019年1月1日からその年の12月31日までの間の所得を税務署に既に申告している。1年間の確定申告を済ませている。例えば、年間で600万円の確定申告(月平均で50万円の所得)をした事業者がいて、2020年の3月以降において、毎月の売り上げが半分程度まで減ったとする。そして、現実に1月から4月末日までの所得合計額が前年度同時期の半分以下に落ち込んだ場合、「所得は半分以下に減少した」と市町村の担当者は認定してくれるのかどうか。また、そのことを証明する資料を、一体、いつまでに、どのように作成すればよいのか?
証明資料は、税理士の作成したものに限定されるのか、あるいは事業者自身が作成したものでも足りるとするのか。仮に後者で足りるとした場合、虚偽の証明書を作成して30万円に給付を受けようとする者が多く出てくることが予想される。
一番心配されるのは、組織的な詐欺集団である。詐欺集団は、今回のニュースを聞いて、「これは願ってもない儲け話が舞い込んできた」と狂喜しているかもしれない。悪質な事業者と共謀して、どんどん給付申請を行い、市町村から多額の金を騙し取るのである。1件30万円であるから、100件で3000万円の被害額となる。今後、そのような事件が各地で多発するのではないかと心配される。
ここで、一部報道によれば、罰則を付けて取り締まればよいという声があるという。これも、世の中の現実を全く知らない霞が関の高級官僚が発案しそうなことである。罰則を付ければよいというが、日本には刑事訴訟法という法律があって、犯罪人を適法に処罰するためにはその手続きを踏む必要がある。
最初に問題となるのは、捜査の端緒である。ほとんどの場合、市役所の担当課の方から被害届が出て、それが端緒となるのではなかろうか。その後、警察が捜査を開始し、立件するということになる。
しかし、同時多発的に詐欺事犯が発生した場合、市役所の担当者が、いちいち警察に赴いて被害届を出し、また、証拠をそろえて警察に提供する必要がある。しかし、現実を考えた場合、そのような暇はないのではないのか。つまり市役所も警察も「新型事件」に対処する方法に全く慣れていない。したがって、当面のところ、何も有効に対処できないということになるのではなかろうか。つまり、違法事案が野放しになるということである。
さらに、今回の現金給付を、民事法の適用される贈与契約と捉えた場合(贈与者は市町村、受贈者は市民)、市役所としては、後日、詐欺グループに対し、民事訴訟の手続きに則り、詐欺を理由に交付を取消し、違法に給付された金銭を市町村に返還せよと請求することを思いつくであろう。
しかし、民事手続きによって給付金の返還を求めることは現実には困難であろう。なぜなら、お金と時間がかかるためである。また、仮に勝訴判決を得ても、悪賢い詐欺グループは、お金を全部使って行方をくらましているだろうから、給付金を回収することはほとんど期待できない。
この可能性は低いと推測するが、仮に今回の現金給付の申請手続について、条文上、市民に申請権があることが明記されており、市町村への不服申立ての制度が明文で認められている場合、給付決定行為について処分性が肯定される可能性がある。そして、30万円の給付を拒否された住民から、行政不服審査法に基づく不服申立てが急増し、市町村としては、この案件の処理に追われ、手が回らなくなるおそれがある。「医療崩壊」ならぬ「行政崩壊」に至る可能性を否定できない。
岸田氏が主導する愚策については、ほかにも指摘したいことは山ほどあるが、今回はここで止めておきたい。
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