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弁護士日記

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医療崩壊の真の原因は何か

2021年01月19日

 武漢ウイルス(いわゆる「新型コロナウイルス」)の感染拡大状況は、いっこうに収まらない。テレビなどを見ても、危機感が非常に強いことが分かる。特に、日本医師会の幹部などから、「既に医療崩壊が始まっている」との警鐘が鳴らされている。簡単にいえば、新型コロナの重篤な患者の数が増える一方であり、重症者用のベッドの余裕が日に日に厳しくなっているということである。そのため、本来であれば治療を受けれるはずの重症者が、適切な医療を受けられないという現実が発生している。このようなことはあってはならない。
 しかし、日本医師会長の発言を聞いて、一つの根本的疑問が湧く。日本で、このようなことが言えるのであれば、新型コロナの患者数が日本よりもはるかに多い西欧諸国では、既に深刻な医療崩壊が起こっていないとおかしい。しかし、その点に関する情報は少ない。
 まず、我が国の人口は、1億人を超えており、先進国の中では人口が多い方に属する。国の人口が多いほど、医療に従事する医師の数も多く必要となるはずである。また、ベッドの数もそれなりの数が必要となろう。病院のベッド数は、世界と比較しても非常に多い。日本には、人口1000人当たり13床のベッドがある。ところが、ドイツでは8床、アメリカでは2.9床、英国では2.5床にすぎない。
 ところで、日本では、医師の数は西欧諸国とは比べものにならないくらい少ない。OECD(経済協力開発機構)はいわゆる先進国から構成されている。そのOECDが、2019年11月7日に公表した報告書では、OECDの全35か国の加盟国において、日本は、人口10万人当たりの医学部卒業生の数は僅か、6.8人にすぎず、最低であることが分かっている(ワーストワン)。これは、長期間にわたって医学部の定員が抑制されてきたためである。医師になるためには、必ず医学部を卒業する必要がある。医学部卒業生が少ないということは、医師になれる人も少ないということである。要するに、日本では医師の数が相対的にみて非常に少ないのである。
 ところが、上記のとおりベッドの数は異常に多い。その結果、1病床当たりの医師の数は、最も少ないレベルにある。日本の場合、具体的には1病床当たり医師の数は0.19人にすぎない。他方、ドイツでは0.54人、アメリカでは0.91人、英国では1.2人、スウェーデンでは2.0人と日本よりもはるかに多い。
 このことから、日本では、一人の医師が診なければならない患者の数が非常に多いということが分かる。そのため、今回のような患者が急増する緊急時を迎えると、すぐに医師の手が回らなくなるという現象が起こるわけである。マンパワーが圧倒的に不足しているということである。これを小学校にたとえれば、教師一人が担当する教室の小学生の数が多いため、一人一人に対しきめ細かな教育は難しいという結果になる。
 さらに、日本では民間病院の数が多いという指摘もある。西欧先進国では、大きな国公立病院が中心となっているのに対し、日本では民間の病院が多く、厚生労働省の資料によれば、全病院のうち、民間の病院の割合は66パーセントと過半数を占める。
 しかも、中小規模の民間病院が多いと言われる。現実に、病院とは名ばかりのところもあり、夜間の当直の医師は一人、看護師も数人にとどまるところもある。このような貧弱な体制にある病院に対し、都府県が「コロナ患者を受け入れて欲しい」と要請しても、最初から無理な話である。
 話をまとめる。今回、新型コロナの発生によって、毎日のようにテレビ、新聞、ラジオを通じ、政府や自治体から、国民に対し、新型コロナの感染拡大を防止するために協力が呼びかけられている。
 しかし、このような事態を招いた原因として、医学部の定員を抑制し、医師の数を増やそうとしなかった厚生労働省の失政は厳しく糾弾されるべきである。仮に医師の数が、現在の2倍の数であったとすれば、簡単に医療崩壊など起こらないはずである。
 また、医学部の定員の増加に対し強く反対を継続し、政府に圧力をかけてきた日本医師会の間違った姿勢も、今回のことを契機に是正される必要がある。
 日本医師会が医学部の定員増加に反対してきた主な理由は、正直に言えば、「医師の数が増えると、競争相手が増えて儲からなくなる」という自分たちの利益を最優先する思想にあった。まさに、「医は算術」というほかない。そのような医師会の幹部から、「医療崩壊が始まっている」と言われても、国民としては、心から納得することは難しい。
 今後の課題であるが、中長期的に、医師の数、つまり医学部の定員を増やし、同時に、中小民間病院の統廃合を容認する政策をとる必要があると考える(経営難に陥っている多くの中小民間病院は、一定のベッド数を満たす病院という形態ではなく、より小さな規模のクリニックとして存続できるよるような政策を実行すべきである。)。
 未来の病院は、一つ一つの病院がそれぞれ有能な常勤医師を多く擁する少数精鋭主義で行くことが求められる。半面、医師である親が経営している病院を、親の引退に伴って医師である子供が継承するというような前近代的な時代遅れの病院経営の在り方は無くすべきであると考える。

日時:20:38|この記事のページ

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