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弁護士日記

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無駄な病院、診療所等が多すぎる日本

2021年04月24日

 本日土曜日は、家で雑用をこなしながら、たまたまCBCラジオの若狭敬一の番組「スポ音」を聞いていた。通称「おしゃべり眼鏡」こと若狭アナのプロ野球中継はしばしば聞いている。軽妙な話しぶりには、特に注文を付けることはない。本日、若狭アナは、今回の緊急事態発令に関連して、いろいろな統計数値をあげて、なぜ医療が切迫するのかということを解説していた。私の意見と非常に近かった。若狭アナは、あれでもといっては失礼になるが、名大経済学部を卒業している。
 さて、我が国では、今月25日から来月5月11日まで、東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に、特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令される。テレビなどで、毎日、武漢ウイルス(新型コロナウイルス)の新規感染者の数が発表される。最近では全国計でおおよそ数千人のレベルとなっている。
 しかし、ここで疑問が沸く。欧米やインド、ブラジル、ロシアなどと比べ、一定の人口当たりの感染者の人数が非常に少ない我が国で、なぜ、緊急事態宣言を何回も発令しなければならないのか?という疑問である。
 原因を探ると、コロナの入院患者を受け入れてくれる病院が少ないため、重症の患者であっても入院できないということがしばしばあげられている。それを一般には、医療崩壊と呼ぶらしい。
 しかし、人口一人当たりのベッド数は、先進国の中では、日本はトップクラスにある。つまり、患者が入院するためのベッド自体は、日本全国に余りあるほど十分にあるということである。
 ところが、コロナの治療を十分に行える病院や診療所は極端に少ない。ここで、ベッド自体は十分にあるのであるから、そこで受け入れてもらえばよいではないか、おかしいではないか、という疑問がさらに沸く。
 原因は二つある。一つは、日本の病院は、民間病院の割合が欧米と比べて非常に多い。仮に国・公立の病院であれば、行政(国・県・市町村)の方から、「コロナ患者を受け入れてもらえないか」と何回も言われれば、むげに断ることもできない。他方、民間の病院は、建前上営利を目的としている存在ではないが、実体は「金勘定」が優先する。したがって、民間病院は、経済的な理由で、行政からの要請を拒否することが可能となる。
 二つ目の理由として、日本では、人口一人当たりの医師の数が、欧米諸国と比較してかなり少ない。日本だけ医師の数が長期間にわたって増えてこなかった原因は、日本医師会が、大学医学部の定員を増加させないように国に働きかけてきた結果である(開業医の競争激化、収益低下を懸念してのことと聞く。)。医師の絶対数が少ないため、コロナの治療に充てる余剰人員がほとんどいない。
 しかし、上記のとおり、人口一人当たりのベッド数は非常に多い、つまりベッドは日本の津々浦々に配置されているため、地域の住民が入院することが比較的容易であるが、上記のとおり、民間の病院や診療所の数が多い。そのため、医師のマンパワーが分散されてしまい、一病院当たりの医師の数は少なくならざるを得ない。
 コロナの一件が起きる前から、既に一人の医師が、同時に多くの患者を診なければならないという労働加重の状態にあった。そこに、新たにコロナの患者が加算されるのであるから、すぐに「医療逼迫」という状態に陥るのである。
 以前、欧米の諸国では、普通の人は滅多に病院や診療所に行かないという話を聞いたことがある。仮にカゼくらいで受診を申し込んだら、断られると聞く。それに比べ、日本では、病気といえば病気といえないこともない程度の元気な「病人」が、こぞって病院や診療所に行き、注射をしてもらったり、薬を出してもらったりしている。
 そのため、国や自治体の予算が無駄に使われてしまっている。例えば、腰が痛いという程度であれば、重大な病気がある場合は別として、市販の膏薬を貼って、家で静養していれば済むのである。それをわざわざ病院や診療所に通って、無駄な医療を受けて自己満足している。このような場合であっても、患者の自己負担を別とすれば、保険者の方で、医療機関に対し診療報酬を支払っているのであるから、国全体としてみれば、膨大な予算が使われることになる。
 そのような「無駄な金」が国にあるのであれば、赤ん坊、子供、学生、女性などの支援にもっと多額の予算を振り向けてもらいたいものである。
 このようなおかしなことが延々と続いてきた原因は、中小零細の民間病院等が多すぎるということに尽きる。民間病院や診療所の多くは、世襲の医師が、昔から病院や診療所を建てて、そこで医療行為を行ってきた。医師と患者が「持ちつ持たれつ」の関係にあった。この仕組みには、戦後、特段の変化は起きていないと感じる。
 このような無駄を無くすには、民間の病院の数を現在の半減または三分の一程度にまで減らし、その代わりに地域における基幹病院に多くの医師や看護師を集約し、組織化された高度の医療を提供する態勢を整える必要がある。ちょうど、昔は、多くの都市銀行があったのに、今では、少数の都市銀行に集約されているのが参考となる。地方銀行も、同じように、複数の銀行で一つの新しい銀行を作る動きが活発となっている。今後、病院も統廃合を進めるべきである。
 現在、古い体質の病院が多く存在しているのは、現行法において、病院を倒産させないための手厚い保護(補助)があるからである。したがって、今後は、法律を改正し、そのような無駄な保護を無くし、結果、統廃合を促す政策をとるべきである。
 少数精鋭の基幹病院に多くの医師や看護師を多数配置する仕組みを実現できれば、人員のやりくりにも余裕が生まれ、今回のコロナのような緊急事態に容易に対応できるのではなかろうか。日本は、先進国の中で、「労働生産性が非常に低い」といわれる。これを医療に当てはめると、医療の生産性が低いということになるのではなかろうか。換言すると、一定程度の治療効果を出すために、日本では、必要以上のお金を掛けているということである。仮に医療の現状に詳しいジャーナリストがいれば、是非、そのような問題を扱った本を出して欲しいものである。
 ここで、旧態依然の世襲病院経営者から、「それでは地域の医療が不十分となる」という反対意見が出るかもしれない。しかし、地域医療の提供は、特に最初から病院でなくても、ベッドを持たないクリニックが初期対応を行えば十分であると考える。

日時:17:35|この記事のページ

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